Flashbacked

文字数 1,263文字

 兄が、ベッドの上でありのままの姿をさらけ出している。
 私は、ありのままの姿の兄に服を脱がされて――無理やり押し倒された。そして、私の子宮に兄の「何か」が入る感覚を覚えた。「何か」が入ることによって、私は痛みを覚えた。それは――快楽の代償とも言える痛みなのか。
「何か」は、どくどくと脈を打っている。人間の一部分だから当然だろうか。
 やがて、私の心臓の鼓動に合わせて――「何か」が動き出した。「何か」が子宮の奥へと突き出される度に、私は悲鳴を上げた。
「――痛い」
「ああ、悪かった。――もっと優しくするから」
 私がそう言うと、兄は腰をゆっくりと動かし始めた。多分、「何か」が子宮の中で蠢いているのだろう。「何か」が膣の中で擦れる度に、痛みは――快楽へと変わりつつあった。その証拠に、私の心臓の鼓動が――段々と早くなる。
「――あっ……あっ……あっ……」
 私は、快楽を感じるあまり――声にならないぐらいの小さな声を上げた。
「気持ちいいのか。――なら、もっと気持ちよくしてやる」
 兄は、腰を動かすスピードを早くする。快楽に溺れるあまり、私は悲鳴のような嬌声を上げた。そして――快楽の向こう側へと至った。
「――あああああああああああっ!」
 兄は、私の中に液体を残した。後に気付いたことだけど、それは――子供を残すための生命の儀式だった。つまり、あの儀式の中で――兄は子宮の中に「自分の子種」を残したことになる。
 それから、私は別の男と「生命の儀式」を行った。当たり前の話だけど、別の男の「何か」には――ゴムのようなモノが付けられていた。多分、自分の子種を子宮の中に残さないようにしていたのだろう。
 夜な夜な「生命の儀式」を行う中で、私は――とうとう妊娠してしまった。それも、実の兄との「生命の儀式」を行う中で発覚した――望まぬ妊娠である。
 当然、私は父親に対して「堕胎」を要求したが――反対されてしまった。
 私の家は、厳格なゾロアスター教徒である。だからこそ――「近い血縁と肉体関係を持つこと」が(まか)り通っていたのだ。けれども、どうせ妊娠するなら――実の兄ではなく、愛する男性の子種(こだね)で妊娠したかった。
 ある時、私は――兄に「開発中の錠剤」を飲ませた。確か、錠剤の成分は――硫黄と塩、そして水銀だったか。そういう材料の元で出来上がる物体を、私は知っていた。――確か、「賢者の石」と呼ばれるモノだっただろうか。
 でも、兄は――錠剤を飲んだ瞬間に胸を抑えて苦しみだした。そして、泡を吹いてそのまま絶命した。
 ゾロアスター教は日本で「拝火教」と呼ばれるだけあって、死体を燃やす火葬はタブーとなっている。だから、私は屋上に「兄だったモノ」を放置した。「兄だったモノ」に、鳥が停まる。鳥は私の方を向いてから――「兄だったモノ」をその嘴で突っついた。
 それから1週間ぐらい経った。無数の鳥の(くちばし)で突っつかれた「兄だったモノ」は――内臓がむき出しになっていて、ゾンビのように醜い姿をしていた。
私は、その様子を見て――独りで嘲笑(わら)った。そして、煙草に火を付けた。
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