2 過去の恋と陽菜
文字数 1,651文字
「じゃあ、落ち込んでいないで頑張んなさいよ。そこのコンビニ店員さんも協力してくれると言ってたんでしょう?」
確かにこの先も一人というわけではなかった。
陽菜 が離脱してしまうのは非常に痛いが。
「彼女がメインとなって推理していたなら詰みかも知れないけれど、そうではなかったのよね」
確かに推理好きの自分が先導していたと思う。陽菜に褒められたくてしていたことではないし、彼女の兄を見つけたいという気持ちは本物だ。
「あなたにならできるわよ、戀 。あなたは自慢の甥っ子なんだから」
顔をあげると叔母が微笑んでいる。本心から思って励ましてくれていることがわかった。
いつの間にか陽菜が傍に居ることが自分にとって当たり前になったいたことに気づく。ちゃんと誤解を解くことが出来るのか不安はあるが、自分が陽菜に気があることは嘘でも誤解でもない。
仮にこれがおつき合いしている恋人同士で探しているというのであれば、それなりに安心させることはできるだろう。だが現時点では戀の片思いに過ぎない。
だったら他の方法で彼女の家族を安心させる他ないだろう。
でも、どうやって?
自分にできる説明は、出会った経緯と捜索に加わった理由を話すことくらい。しかしそれで納得して貰えるのだろうか。戀には不安しかなかった。
やはり陽菜の家族のことは彼女に任せるべきか。
最近あまり考えなくなった元恋人のことを思い出す。
彼女は好きだと言いながら戀を否定してばかりだった。だから自分はダメなのだろうと思ったし、そんなダメなヤツのどこが好きなのだろうと思ったものだ。
何も言わないにせよ、日に日に暗くなっていく自分を励ましてくれたのは叔母だった。彼女にとって自分は可愛い甥でしかないのだろう。
叔母は自分にとって初恋の人。けれども叔母と甥は法律上婚姻できないということを知り、自分の恋が間違っていると気づいた。そして彼女が戀に甘いのも優しいのも親族だから。そう思うと自分の恋は自分に都合がいいだけなのだと感じたのだ。
それから何度かおつき合いをしてみて、他人とつき合うことの難しさを知る。
叔母との空気が心地よいのは、自分を知ってくれているから。
今回叔母が乗り気なのは、陽菜がとても素敵な女性だからだ。元恋人の時には反対していたというわけではないが、『合わないんじゃないの?』と言われたことを思い出す。
『我慢しなきゃいけない相手なんて疲れるだけよ?』
叔母は戀にそう言った。
確かに我慢はしていたと思う。本音を言って欲しいという割には受け止める強さを持っていない人だった。
どうして欲しいのか知ればそのように動くこともできたが、自分でもどうしたいのか分からないと言われ……あれは詰んだのだと思う。
『戀は我慢も配慮も遠慮もするわ。それは社会人ならある程度そうしてしまうと思う。けれど、常にそんな風にしないといけない関係なんて続かないわよ』
だが彼女はそれを望まなかった。
遠慮も我慢も配慮も。そうやって何も言えない、思ったことを言えずにいた戀にそれを捨てろと言ったのである。
人の性格は育った環境などで決まるものだ。その過程の中で価値観なども固まってくるだろう。戀が元恋人に配慮や遠慮をしなくてはならなかったのは、そういう相手だったから。そうするのが一番良いバランスでもあったからだ。
おつき合いを続けたいという願いからそうしていたのに、それをやめろと言われたらバランスはおかしくなる。
配慮が必要な相手だと判断したからそうしていたのに、本人はそれが分かっていなかった。本音で向き合えるのは、ある程度強い精神力を持つ者だろう。
本音とは決して暴言ではないが、彼女にはそれを受け止めるだけの強さはなかった。そうして離れて行ったのだ。
一人になった戀は『だから言ったのに』としか思わなかった。
合わない相手を好きにることは、それなりの努力が必要なのだ。今はそれを嫌というほど理解している。
陽菜に会いたいと思った。柔らかく笑う、天使のようなあの子に。
確かにこの先も一人というわけではなかった。
「彼女がメインとなって推理していたなら詰みかも知れないけれど、そうではなかったのよね」
確かに推理好きの自分が先導していたと思う。陽菜に褒められたくてしていたことではないし、彼女の兄を見つけたいという気持ちは本物だ。
「あなたにならできるわよ、
顔をあげると叔母が微笑んでいる。本心から思って励ましてくれていることがわかった。
いつの間にか陽菜が傍に居ることが自分にとって当たり前になったいたことに気づく。ちゃんと誤解を解くことが出来るのか不安はあるが、自分が陽菜に気があることは嘘でも誤解でもない。
仮にこれがおつき合いしている恋人同士で探しているというのであれば、それなりに安心させることはできるだろう。だが現時点では戀の片思いに過ぎない。
だったら他の方法で彼女の家族を安心させる他ないだろう。
でも、どうやって?
自分にできる説明は、出会った経緯と捜索に加わった理由を話すことくらい。しかしそれで納得して貰えるのだろうか。戀には不安しかなかった。
やはり陽菜の家族のことは彼女に任せるべきか。
最近あまり考えなくなった元恋人のことを思い出す。
彼女は好きだと言いながら戀を否定してばかりだった。だから自分はダメなのだろうと思ったし、そんなダメなヤツのどこが好きなのだろうと思ったものだ。
何も言わないにせよ、日に日に暗くなっていく自分を励ましてくれたのは叔母だった。彼女にとって自分は可愛い甥でしかないのだろう。
叔母は自分にとって初恋の人。けれども叔母と甥は法律上婚姻できないということを知り、自分の恋が間違っていると気づいた。そして彼女が戀に甘いのも優しいのも親族だから。そう思うと自分の恋は自分に都合がいいだけなのだと感じたのだ。
それから何度かおつき合いをしてみて、他人とつき合うことの難しさを知る。
叔母との空気が心地よいのは、自分を知ってくれているから。
今回叔母が乗り気なのは、陽菜がとても素敵な女性だからだ。元恋人の時には反対していたというわけではないが、『合わないんじゃないの?』と言われたことを思い出す。
『我慢しなきゃいけない相手なんて疲れるだけよ?』
叔母は戀にそう言った。
確かに我慢はしていたと思う。本音を言って欲しいという割には受け止める強さを持っていない人だった。
どうして欲しいのか知ればそのように動くこともできたが、自分でもどうしたいのか分からないと言われ……あれは詰んだのだと思う。
『戀は我慢も配慮も遠慮もするわ。それは社会人ならある程度そうしてしまうと思う。けれど、常にそんな風にしないといけない関係なんて続かないわよ』
だが彼女はそれを望まなかった。
遠慮も我慢も配慮も。そうやって何も言えない、思ったことを言えずにいた戀にそれを捨てろと言ったのである。
人の性格は育った環境などで決まるものだ。その過程の中で価値観なども固まってくるだろう。戀が元恋人に配慮や遠慮をしなくてはならなかったのは、そういう相手だったから。そうするのが一番良いバランスでもあったからだ。
おつき合いを続けたいという願いからそうしていたのに、それをやめろと言われたらバランスはおかしくなる。
配慮が必要な相手だと判断したからそうしていたのに、本人はそれが分かっていなかった。本音で向き合えるのは、ある程度強い精神力を持つ者だろう。
本音とは決して暴言ではないが、彼女にはそれを受け止めるだけの強さはなかった。そうして離れて行ったのだ。
一人になった戀は『だから言ったのに』としか思わなかった。
合わない相手を好きにることは、それなりの努力が必要なのだ。今はそれを嫌というほど理解している。
陽菜に会いたいと思った。柔らかく笑う、天使のようなあの子に。
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