ハロウィンナイトカフェ
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文字数 6,184文字
Rachel_3rd
こんなところにカフェなんてあったかしら?
ハロウィンだからかな、仮装した人たちの溜まり場になってるね。
ミルカ、打ち上げはここにする?
いらっしゃいませ!
ハロウィンナイトカフェ、「エブリシング」へようこそ!
お客様は何名様ですか?
そして、とてもテーブル数が多く広い店だった。
――繁盛しているのだろう。
テーブルはほぼ満席かのように思えたが、よく見ると空席が幾つかあった。
ただの偶然なのか、それとも店員さんが絶妙に客をバラして入れているのか。
何にせよ、窓際の席が確保できたのは素直に嬉しい。
おっぱいも大きかったなぁ……。
バカなこと言ってないで注文決めるわよ。
なるほど、どうりで今夜これほど繁盛しているわけだ。
どれどれ……。
『ハロウィン限定鍋焼きほうとう』
『カボチャのフレンチトースト』
『オバケ風味のクリームシチュー』
『不夜城パフェ』
『シェフの気まぐれサラダ たべないこだれだ』
『激辛!魔女狩りカレーライス』
『お子様プレート 恐怖のハロウィンVer.』
『パティシエ特製限定チョコレート680円』
『サービスキャンディ(お1人様1つまで無料)!』
俺はそうだなぁ……激辛カレーライスでも食べようかな。
……食べられるの?
もうお腹がカレーの気分だからそれ以外受け付けないぜー!
グランドメニューに甘口もあるわよ。
それから食前にダージリンティーと、食後に不夜城パフェを1つ。
申し訳ございません、本日はハロウィン営業ということで
アルコールの販売を一切中止しております。
ご理解いただければと思います……。
ご飯にしましょう、ご飯に。
じゃあ、激辛カレーライスとシェフの気まぐれサラダを1つずつ。
ソフトドリンクのジンジャエールを炭酸強めでお願いできるかな?
ドリンクは食前でよろしいでしょうか?
(あの魔女さん、自ら魔女狩りカレーを注文したわ!
なかなか分かってるじゃない!!)
クリームシチューいただきましたー。
それと食前にジンジャエール炭酸強めとダージリンティーを。
食後に不夜城パフェです。伝票送信しました。
分かりましたよ。ドリンクは私が作って持っていきますねー。
超!! スパークリング!!
先にジンジャエールとダージリンティーでございます。
えぇ、ダージリンティーをこちらに。
うんうん。ありがとうね店員さん♪
順番にお作りしておりますのでしばらくお待ちください。
それにしても、良い店を見つけたね。
ここから見える夜景も綺麗だし、隠れた名店じゃないかな。
こんなに大きい店なのに目立たないのが不思議なぐらいだよ。
ひょっとしたら『能力』が絡んでるかもしれないわね。
さっきからスマホでこの店を調べてるけど、全く引っかかってないよ。
エブリシング――山梨県に同名の店があるけど、もしかしてこれ?
……なるほど、「ほうとう鍋」に違和感を感じていたけど、
元々山梨の店だと考えれば納得ですわね。
これは山梨県を中心に作られる郷土料理の1つだ。
店長が山梨出身の人だっただけの可能性もあるのだが、
蓮華の情報と照らし合わせれば辻褄が合う。
だからどうしたっていうの、今夜はこの店のお世話になるだけよ。
素晴らしい一期一会の精神だ。
それに――俺たちにぴったりじゃないか。
……いや、違う。そうだけど、そうじゃない。
ハロウィンだけあって、能力者たちも遠慮なく出歩いているようだ。
俺たちのこの派手な衣装も仮装扱いだし、
魔人にとって今日は生きやすい日だよ全く。
……もしかして、仕事の話がしたいの?
……ただ、良いムードだなって思ってさ。
……そ、そうね。たまにはこういうのも良いんじゃないかしら。
いつも蓮華には助けてもらってばかりね。ありがとう。
最初は地味な能力とかバカにしてたけど、
俺の能力に比べたらずっと有能じゃないか。
本当に困ったときに頼りになるのはミルカの方さ。
身体は女だが、これでもミルカの伴侶になるつもりだ。
俺にできることは何だってする。遠慮なく言ってくれ。
どうやらアルコールが回ってきたようだ。
それは大変ですわ。
店員さんったら、間違えてお酒を持ってきたのかしら。
うふふ。
お菓子くれないとイタズラしちゃうぞー!
でも残念。私はスコーンの持ち合わせが無いのだけど……。
蓮華は?
無いねー。サービスキャンディも貰って無いし。
不要だと思ってスルーしちゃったよ。
待て待て泣き止め。すぐにお菓子持ってくるから!
うわああああああん!!
つまり俺じゃない!
ほら、お菓子をくれない人は――?
彼の姿が見えなくなりましたわね。
(全てを察する)
12時間もすれば元に戻るから、ハロウィンの間中悶えるがいい!!
一体何が起きている――?
とても可愛らしいわよ♪
おいこら、アホガキ! 元に戻せぇえええ!!
しばらく子供の気持ちになって反省するぴょん!
――そういえばあの子、どこかで見たことがあるような。
こんな姿じゃ外も歩けないよぉおおお!
私以外に知り合いが居るわけでも無いのだし。
それに……すごく可愛いわ、その姿。
この獣耳のおかげで小声だってよく聞こえるぞ。
まぁいいじゃないの。12時間ぐらいで元に戻るって言ってたのだし。
……くそっ、自力じゃ歩くのも困難かよ。
思ったより深刻なのね、それ。
大丈夫? お姉さんがおんぶしてあげようか?
……しかしこれ、どうすっかな。
そういえば料理、いい加減遅いですわねぇ。
一生このままなのかな……。
さっきのガキ――!!
あっ――私もたった今思い出しましたわ。
彼女は――!!
怪盗アルセーヌ・ラヴィただいま参上!
この店のお菓子を根こそぎいただきましたウサ♪
その犯行宣言は店内の喧騒に掻き消えた。
誰も、彼女の言うことに耳を貸すことは無かった。
ただ2人、私達を除いて――。
彼女こそ――世間を騒がせている怪盗アルセーヌ・ラヴィよ!!
これは誰よりもよく通る声――どうか、届いて!!
この店に居る全ての主人公たちよ!!
私の姿が脳内にぃ……!?
みてみて、まにゃちゃん!
かわいいウサギさんがいる!!
でもでも、たしかにかわいいね。
どうしよう、まだ心の準備が……ってあれ?
勇者アプリが反応してないよ?
なんて日だ。早くバイト上がりてぇ……。
おいココナ、これはリアル事件(クエスト)だ。気合入れていくぞ。
(変な事件に巻き込まれる)
――なんて日だ!
う~さ~ぎ~お~いし~、ま~ろ~や~か~!
ああいう輩に限って必ず首を刈ってくる。
あなたも大概古いですね。
お店のピンチです!
天然のようで計算されたあざとさ、一寸の狂いない服の縫い目!
お腹周りはファンタジーらしさを抜いて露出度を増やしてみてもいいでしょう。いやしかし、これは実にいい! 模写だ! 模写するぞー!
デッサンよりも目の前のことを考えるんだ!
もうこの店に逃げ場はありません!
ミルカという女性の一声で、店の空気はガラリと変わった。
おそらく広範囲に作用する能力だろう――迂闊だった。
この店の全ての客が私をマークしている。
確かに、逃げる術は無いだろう。
たった1つ、殲滅戦を除いて。
ここまで私が追い詰められたのは初めてぴょん。
しかしね、皆さん。魔人の身体能力をナメてはいけませんね。
もう逃げも隠れもしませんから、
ここは一つ、正々堂々勝負――ウサ♪
それはよく見るとクマだったり、吸血鬼だったり、
ゴリラだったり、天狗だったり、悪魔だったり、オニだったり、
人間に扮した連中も――あぁ、なんてことだ。
ここはバケモノしか居ないのか――。
私の魔法でまとめて相手してやるぴょん!
朝まで付き合えってやんよおおおおおお!!
ここは危険です。
パレードよりもずっと楽しげだ……あぁ、長生きはするものだな。
一人一人が輝いて見えるよ。全員が主役の物語と言ったところか。
これが、ハロウィンの魔法なのだろう……。
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ウエイトレス喫茶店「エブリシング」の店員。