ハロウィンナイトカフェ
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文字数 1,215文字
shariotto
カウンターでコーヒーを飲んでいると、うしろから声をかけられた。
その消え入りそうなほどの小さな声に、俺は振り返る。
10歳くらいの女の子がそこにいた。
俺の手元には、コーヒーのおまけでついてきた小さなお菓子があった。
子供が好きそうなお菓子ではないけど……
俺はそのお菓子を女の子にわたす。
女の子は、恐る恐るそのお菓子を口に運んだ。
お菓子を口に含んだ途端、女の子の目が見開かれる。
ふいに、その目から涙があふれ始めた。
子供の口には合わないと思ったけど、まさか泣くほどだったとは……
俺は慌てて、店員さんに代わりのお菓子を注文した。
も、もう大丈夫だからな?
次はちゃんと甘いお菓子が来るからさ!
そういうと女の子は、またお菓子を食べ始めた。
口に入れるたびに、満面の笑みを浮かべて……
味を確かめるように、ゆっくりと噛みしめて……
飲み込むときには、少しだけ悲しそうな笑顔になって……
やがて、お菓子が空になる。
少女は、今にもまた泣きだしそうな表情でこちらを見上げる。
ちょうどそのタイミングで、店員さんがさっき注文したチョコレートを持ってきてくれた。
食べたいのを必死に我慢するように、手を伸ばしては引っ込める。
どうせ俺は甘いものダメだからさ?
そう言って無理やり渡す。
そう言って少女は、チョコレートを1つ口に含む。
直後、花がほころぶように幸せいっぱいの笑顔を浮かべた。
その笑顔は、彼女の口の中のチョコが溶け切ってもなお続いていた。
生まれて初めて…………か
そう言って少女は、髪に結わえていたリボンを差し出す。
その言葉と同時に、少女は俺にキスをした。
突然の感触に驚いて瞬きをすると……次の瞬間にはもう彼女はどこにもいなかった。
夢かとも思ったが、手には彼女からもらったリボンがあったし、口にはさっきのキスの感触とチョコの味が残っていた。
それに…………
手元には、しっかりとチョコ代金の伝票が残っていた。
fin
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ウエイトレス喫茶店「エブリシング」の店員。