第20話

文字数 1,034文字

結婚してあっという間に1年目が過ぎて、そのまま2年目が過ぎて、3年目も過ぎようとしていた。
結婚して変わったことと言えば、君の苗字が変わったくらい。
あとは、中でいけるようになった君がより僕を求めるようになったくらいか。
喧嘩をすることもなく、君の気持ちが冷めることもなく、毎日が変わらずにずっと幸せ。
恋愛と結婚は別物だというけど、僕と君の関係は恋愛の延長線上にあったし、むしろ結婚してからのほうがより君からの愛情を感じられた。
僕に変な女が寄ってこないかと君が心配するものだから、仕事でもプライベートでも僕はとにかく君に心配をかけないように、君を安心させるように心がけた。
もちろん、僕が浮気や不倫をするわけもない。
君以外は女に見えないと言っても過言ではないのだから。

僕は僕で君のことが心配だったから、カメラやGPSをこっそりと仕掛けていた。
万が一、君が僕との結婚生活に飽きて外に刺激を求めるようになったら、それはそれとして受け入れなければいけないけど、相手の男は絶対に許せない。
君に相手ができたらその男に手を回して、消すなり何なりする必要があった。
でも、その必要はなかった。
君は僕との結婚生活に心底満たされているようで外に刺激を求めるようなことはなかったから。

僕の部屋に仕掛けておいたカメラには君のいやらしい姿もしっかりと残っていた。
僕が少し出かけるからと2時間ほど君を部屋にひとりにしたとき、君は僕のベッドの上でひとりで激しくしていた。
君がひとりでしているところをずっと見たいと思っていたから、その録画で僕は何度も何度も抜いた。
僕がいないところで君がどういう風に過ごしているのか、全部知りたい。
君のことはだいぶわかったつもりだけど、まだ知らないところがたくさんあるから。

結婚して5年が経ったころ、君のお母さんが死んだ。
君はひどく落ち込んでいたし、僕はそんな君を支えた。
ただ、正直なところ、君のお母さんが死んでよかったと思っていた。
君とお母さんは確かに仲がよかったけど、少し歪な関係だったから。
これでいよいよ君には僕しかいなくなる。
もともと別居婚というのも君がお母さんに気を遣っていたからだった。
葬儀などをすべて終えてから、君はお母さんと一緒に暮らしていた部屋を引き払って僕の部屋で暮らすようになった。
一緒に暮らすようになったからといって、不和が生じるようなことはなかった。
むしろ、一緒に暮らすようになってから僕はより君に尽くしたし、もう僕しかいない君も僕にべったりだった。
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