第10話

文字数 806文字

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 だめだ、顔がにやける。
 彼女ができた。
 とてもきれいでかわいい彼女が。
 一目惚れして、勇気を出して告白して、この手に掴んだ女の子だ。
 にやける顔を抑えられない。
 青井さんと職員室へ同好会の届け出をしに行ったとき、自転車を押しながら二人並んで帰っているとき、思わずにやけそうになる口許を必死で手で覆い隠していた。
 途中でわかれるとき、手を振ってくれた青井さんの笑顔が目に焼き付いて離れない。
 帰宅してからもずっと、ふと気がつくとにやけてしまう。
 もうひとりでは抱えきれそうになかった。
 時刻は夜、八時を回っていたが、俺は親友の悠弥の所へ行くことにした。
 悠弥とは幼稚園の頃からの仲だ。
 悠弥の所に行くと言えばうちの親は何も言わない。
 LINEをすると、間もなくオケと返信があった。
 俺は愛用のロードバイクを走らせ、住宅団地を駆け抜けた。目的の家を目指してペダルを踏み込む。
 十分ほどで馴染みの家が目に入る。
 ロードバイクを止め、インターホンを鳴らすとおばさんが出てきて、いらっしゃいと出迎えてくれた。いつも思うが、お姉さんにしか見えない人だ。
 悠弥の家とは家族ぐるみの付き合いで、こんな時間に訪ねても非難されたりしないのはありがたい。
 俺はおじゃましますと言って玄関を上がり、階段を上って悠弥の部屋に入った。
「おう」
 デスクチェアーに座った悠弥が待っていた。
 榀木悠弥。
 俺とはある共通点があってつるんでいる親友だ。
 ふわりとしたダークブラウンの髪に、同じ色の切れ長の目。整った鼻梁。年齢よりも大人びた雰囲気を持つ、はっと目を見張るような美少年だが、どこか斜にかまえたところがある。背は高いが、なで肩で細身の体格だ。
「おう」
 俺もそう応えて、部屋のすみにある折り畳み式のパイプ椅子を持ってきて広げ、座った。
 置いてある場所もわかっている、ほぼ俺専用と化している椅子だ。
「んで、今日はどうした?」
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