第10話
文字数 806文字
2
だめだ、顔がにやける。
彼女ができた。
とてもきれいでかわいい彼女が。
一目惚れして、勇気を出して告白して、この手に掴んだ女の子だ。
にやける顔を抑えられない。
青井さんと職員室へ同好会の届け出をしに行ったとき、自転車を押しながら二人並んで帰っているとき、思わずにやけそうになる口許を必死で手で覆い隠していた。
途中でわかれるとき、手を振ってくれた青井さんの笑顔が目に焼き付いて離れない。
帰宅してからもずっと、ふと気がつくとにやけてしまう。
もうひとりでは抱えきれそうになかった。
時刻は夜、八時を回っていたが、俺は親友の悠弥の所へ行くことにした。
悠弥とは幼稚園の頃からの仲だ。
悠弥の所に行くと言えばうちの親は何も言わない。
LINEをすると、間もなくオケと返信があった。
俺は愛用のロードバイクを走らせ、住宅団地を駆け抜けた。目的の家を目指してペダルを踏み込む。
十分ほどで馴染みの家が目に入る。
ロードバイクを止め、インターホンを鳴らすとおばさんが出てきて、いらっしゃいと出迎えてくれた。いつも思うが、お姉さんにしか見えない人だ。
悠弥の家とは家族ぐるみの付き合いで、こんな時間に訪ねても非難されたりしないのはありがたい。
俺はおじゃましますと言って玄関を上がり、階段を上って悠弥の部屋に入った。
「おう」
デスクチェアーに座った悠弥が待っていた。
榀木悠弥。
俺とはある共通点があってつるんでいる親友だ。
ふわりとしたダークブラウンの髪に、同じ色の切れ長の目。整った鼻梁。年齢よりも大人びた雰囲気を持つ、はっと目を見張るような美少年だが、どこか斜にかまえたところがある。背は高いが、なで肩で細身の体格だ。
「おう」
俺もそう応えて、部屋のすみにある折り畳み式のパイプ椅子を持ってきて広げ、座った。
置いてある場所もわかっている、ほぼ俺専用と化している椅子だ。
「んで、今日はどうした?」
だめだ、顔がにやける。
彼女ができた。
とてもきれいでかわいい彼女が。
一目惚れして、勇気を出して告白して、この手に掴んだ女の子だ。
にやける顔を抑えられない。
青井さんと職員室へ同好会の届け出をしに行ったとき、自転車を押しながら二人並んで帰っているとき、思わずにやけそうになる口許を必死で手で覆い隠していた。
途中でわかれるとき、手を振ってくれた青井さんの笑顔が目に焼き付いて離れない。
帰宅してからもずっと、ふと気がつくとにやけてしまう。
もうひとりでは抱えきれそうになかった。
時刻は夜、八時を回っていたが、俺は親友の悠弥の所へ行くことにした。
悠弥とは幼稚園の頃からの仲だ。
悠弥の所に行くと言えばうちの親は何も言わない。
LINEをすると、間もなくオケと返信があった。
俺は愛用のロードバイクを走らせ、住宅団地を駆け抜けた。目的の家を目指してペダルを踏み込む。
十分ほどで馴染みの家が目に入る。
ロードバイクを止め、インターホンを鳴らすとおばさんが出てきて、いらっしゃいと出迎えてくれた。いつも思うが、お姉さんにしか見えない人だ。
悠弥の家とは家族ぐるみの付き合いで、こんな時間に訪ねても非難されたりしないのはありがたい。
俺はおじゃましますと言って玄関を上がり、階段を上って悠弥の部屋に入った。
「おう」
デスクチェアーに座った悠弥が待っていた。
榀木悠弥。
俺とはある共通点があってつるんでいる親友だ。
ふわりとしたダークブラウンの髪に、同じ色の切れ長の目。整った鼻梁。年齢よりも大人びた雰囲気を持つ、はっと目を見張るような美少年だが、どこか斜にかまえたところがある。背は高いが、なで肩で細身の体格だ。
「おう」
俺もそう応えて、部屋のすみにある折り畳み式のパイプ椅子を持ってきて広げ、座った。
置いてある場所もわかっている、ほぼ俺専用と化している椅子だ。
「んで、今日はどうした?」