第11話

文字数 890文字

 悠弥が聞いてきたのは、俺がLINEに、話があるとしか書かなかったからだ。
「あのな……」
 俺は今日の出来事を話した。
 友人たちとの帰り間際、部活動の勧誘エリアに走っていったところから。
 思い切って告白したというくだりで、悠弥が口笛を鳴らす。
「やるじゃんか。お前、見直した」
 俺もそれは誇っていいんじゃないかと思っていたので、そう言われると何となく嬉しかった。
「で、どうなった?」
「やったよ悠弥! 俺、彼女ができた!」
 俺のテンションは一気に上がった。誰かに言いたくて言いたくてしかたなかったことをようやく言えた。
「お前みたいなやつに彼女ができたなんてな」
 悠弥がしみじみと感慨深く嘆息する。
「お前みたいだけ余計だ。同類のくせに」
 俺と悠弥の共通点――それは二人とも女顔だということだ。
 Kポップ男性アイドルのような、いわゆる美少年顔ではなく、もっと女性寄りの顔立ちで、それこそ幼稚園のころから俺たちは、気持ち悪いとか不気味とか言われてきた。
 そのせいだろう。悠弥は同級生や年下には一切関心を示さず、大学生や社会人といった年上の美人たちと付き合っている。
 中学の時には、俺と悠弥にはBL疑惑が持ち上がったこともある。俺は必死に否定したが、なぜか悠弥は意味ありげに笑うだけで否定も肯定もしなかった。おかげでさんざんからかわれた。
 また、一部の男子たちからは、寒気のするあだ名までつけられた。あまり言いたくはないが、悠弥は『人妻』、俺は『姫』なんて呼ばれていた。俺にとっては、はなはだ不名誉な黒歴史だ。
 俺が一人称を『僕』から『俺』に変えたのもその頃で、少しでも男らしくありたいと思ったからだ。
「それにしても、ずいぶんと高嶺の花を落としたもんだな」
 悠弥がにやりと笑った。笑みを浮かべながら続ける。
「一年C組の青井遊っていったら新入生一の美人だ。お前知らなかったのか?」
 知らなかった。ぜんぜん。
「彼女、いいよな。かわいくてきれいだし、背高いし、胸でかいし。俺も同級生の彼女ほしくなってきたよ」
「わ、渡さないからな」
 俺の顔には思い切り警戒感が出ていたのだろう、悠弥が声を出して笑った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み