文字数 553文字

僕達は参道を歩いた。
両端の樹木のせいで道は暗い。所々に石灯篭が置かれていた。

小さな石橋を渡る。
僕は立ち止まった。

石橋を渡り直す。
その上で考える。
小さな堀には水はない。
きょろきょろと辺りを見回す。

周囲の木は・・・?
いや。違う。

柏木はそんな僕を黙って見ている。
僕は柏木に言った。
「ここ、すごくない?」
「そうなんですよ。ここ一番ですよね。神社の本殿よりも・・・何なんですかね」
「何もないですよね。・・祠も石仏も無い」
「・・・この水路のせいかな?」
柏木は小さな堀に沿って歩いてみる。

僕達は首を傾げながら、そのまま鳥居を抜けてみる。
目の前には川が流れていた。

茶色に濁った川の向こうはありきたりな街並みが広がる。僕達は橋の上から川を覗き込んだ。
「何でこんなに水が汚いんだ?」
「多分、底に泥が溜まっているんですよ。水自体は汚くない」
「・・・ああ。確かに。・・・・そこに鯉がいる。でかいな」
「本当だ。・・・すごくでかい」
「あんなにでかいと獲って食べようと言う気にもならないな。気持ち悪くて」
「きっと泥臭いと思いますよ」
僕は大皿に盛りつけられた泥臭い鯉の煮姿を想像した。

幅広の土手には緑の葦原が広がる。
所々に菜の花が咲いていた。
川に沿って桜並木が続いていた。
それは花曇りの空の下で薄桃色の布を流した様にどこまでも続いていた。
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