文字数 531文字

「その黒い鯉を連れ戻すために勇者を募集したのだが、誰も志願しなかった。・・・・もう世の中に勇者は存在せぬのだろうか・・? 勇者は時代遅れの過去の遺物となり果てているのだろうか・・? ・・今の時代、誰も勇者になどなりたくは無いのだろうか・・・?」
 老婆はそう言った。
 僕は馬鹿みたいに口を開けたまま話を聞いた。
 片手に食べかけの饅頭、片手に湯飲みを持ったまま茫然と老婆の顔を見ていた。

「いい加減にその口を閉じなさい。その間抜け面を見ていると、自分の選択が間違っていたのではないかと不安になって来る」
 老婆はそう言って僕の顎を指差した。
 僕は口を閉じた。
「それで、よぼよぼの婆さんの振りをして親切な者を探しておった所、お前が網にひっかかったという、そう言う訳じゃよ。お前の魂を計った結果もまあまあであった。誠実さだけはトリプルAであるが、勇気と根性はA-であった。知恵と機転に関しては、まあ、B+という辺りじゃのう。
協調性A-、体力B と言った具合じゃ。
なのでお前は強制的に勇者になるという、そして悪魔をここへ連れ戻すと言う、そんな役割を担ったのじゃ。喜ぶが良い。勇者コメオよ」
 ばあさんはそう言うとわはははと笑って僕を見た。
「はあ?」
 僕は思わず大きな声で言った。
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