第5話:やりたいことって何ですか?
文字数 1,888文字
『って…、マスターったら、何で二度寝しようとしてるんですか?もうっ!!』
目覚まし時計にも負けないAI《アイ》の元気な声が耳元で響く。うるさいったらありゃしない。
「あ…寝てたか?」
『5分ほどグッスリ…。ヒドいですよお…』
なんか怒ってる?
「あのなあ、俺にとって朝の4時っていうのは、普通に就寝タイムなの!」
『何言ってるんですか?!マスターが惰眠を貪っている間にも、早起きのパン屋さんや新聞配達のお兄さんや、電車の運転手さんは働き始めているんですよ?!』
(そんな童謡みたいなこと言われても困るんだけど…)
『というか、日本が夜でも地球の裏側の国は真っ昼間なんですよ?「笑っていいとも!」とか見てるかも、なんですよ?!』
「地球の裏側で、真っ昼間から、日本の昭和のバラエティ番組の再放送見てるヤツいたら、
マジで友達になりたいわッ!」
ついついツッコミを入れる。その勢いで眠気まで吹き飛んでしまった。
どうやらこれが、コイツの目覚ましの手口らしい。
「チッ…」
舌打ちしながら再度布団から起き上がる俺を見て、AI《アイ》がスマホの中から、ニッコリと、いやニヤニヤと笑う。
『どうです?覚めましたか?』
「ああ、百年の恋がな!」
『えっ?!』
しまった!柄にもないことを口走っちまった。恥ずかしい…。
一方の、AI はといえば、口元を押さえ、真っ赤な顔をして恥ずかしそうにしている
「いっ、今のは無しだ!っていうか、喜んでんじゃねえよ」
マズい。とにかく話題を切り替えねば。そうだ、天気の話にでも…。
「ふふん、まーた雨か。どうせ今日もロクな一日じゃねえんだろうなあーー?」
今のはちょっとワザとらしかったか?だが…、
『ハイ、あいにくの雨ですね。でも、小雨です!夕方には晴れるかもしれません。
いえ、きっと晴れますよ!』
どうやらコイツの思考 には、相手を見下すとか、そういうネガティブ回路というものは存在していないらしい。客観的データに気休めの言葉を交ぜるというのは、天気予報の情報価値としてはどうかと思うけれど…。
でもちょっと待てよ?
角度的には、畳の上のスマホのカメラから窓の外は画像 てないはずなのだが…。。
『天気予報データとはいつもリンクしてますから!
ですから、マスター、私がいるからには、もう雨の心配はいりませんからね?』
「天気は、お前がどうにかできる問題じゃないだろ?バカ言うなって」
『でも的確な対処方法を事前に提示することはできます。
“備えあれば憂いなし”なんです。
で・す・か・ら、これからは記録的ゲリラ豪雨が来たって、全然心配ありませんよ?!」
「フツーに心配だわっ!」
空が落ちてくるかと心配するのは杞憂かもしれないが、異常気象を憂うのは現代人としての義務ではなかろうか?
『ムムム、グローバルシンキングですね!素敵です』
「あのなあ…」
褒 めてくれようとしているのだろうが、かえってバカにされているような気持ちになる。なるほど、やっぱりポンコツだ。
「仕方ない。本気 で起きるか…」
寝間着と普段着兼用のジャージのまま、ニコニコした顔を映すスマホを片手に階段を降りる。顔を洗って歯を磨く。それだけのことで頭がスッキリする。
その時自分の口から独り言が聞えた。
「あれ?でも俺…、今から何をすればいいんだっけ…?」
今さらながら気付く。早起きしてみたところで、俺には、やることなんて何もなかったってことに。
「畜生、やっぱり寝ていりゃよかった…」
そう口走った時、手元から太陽みたいに明るい声がした。
『マスター!一緒に朝ゴハンを作りませんか?パパさんとママさんを、びっくりさせてあげましょうよ!それに私、マスターとの“初めての共同作業”、してみたいです!』
「はあ?」
何を言ってるんだ、このAIは?そうか。仮契約の時に家族構成欄に正直に入力したからか。まったく、何で俺が家族のために朝飯なんか…。そして気付く。
「っていうか、お前、“初めての共同作業”なんてセリフ、よく知ってたな?!」
“初めての共同作業”とは、お見合い結婚が主流だった昭和の時代に、結婚式のケーキ入刀の際に、司会者が叫ぶ定番のセリフだ。有名若手政治家すら“できちゃった婚”する昨今の結婚式では、シュールな冷やかしにしか聞えない死語中の死語だと思うのだが…。
『そんなことはどうでもいいですから、とにかくマスター、作りましょうよ、朝ゴハン!』
目覚まし時計にも負けないAI《アイ》の元気な声が耳元で響く。うるさいったらありゃしない。
「あ…寝てたか?」
『5分ほどグッスリ…。ヒドいですよお…』
なんか怒ってる?
「あのなあ、俺にとって朝の4時っていうのは、普通に就寝タイムなの!」
『何言ってるんですか?!マスターが惰眠を貪っている間にも、早起きのパン屋さんや新聞配達のお兄さんや、電車の運転手さんは働き始めているんですよ?!』
(そんな童謡みたいなこと言われても困るんだけど…)
『というか、日本が夜でも地球の裏側の国は真っ昼間なんですよ?「笑っていいとも!」とか見てるかも、なんですよ?!』
「地球の裏側で、真っ昼間から、日本の昭和のバラエティ番組の再放送見てるヤツいたら、
マジで友達になりたいわッ!」
ついついツッコミを入れる。その勢いで眠気まで吹き飛んでしまった。
どうやらこれが、コイツの目覚ましの手口らしい。
「チッ…」
舌打ちしながら再度布団から起き上がる俺を見て、AI《アイ》がスマホの中から、ニッコリと、いやニヤニヤと笑う。
『どうです?覚めましたか?』
「ああ、百年の恋がな!」
『えっ?!』
しまった!柄にもないことを口走っちまった。恥ずかしい…。
一方の、
「いっ、今のは無しだ!っていうか、喜んでんじゃねえよ」
マズい。とにかく話題を切り替えねば。そうだ、天気の話にでも…。
「ふふん、まーた雨か。どうせ今日もロクな一日じゃねえんだろうなあーー?」
今のはちょっとワザとらしかったか?だが…、
『ハイ、あいにくの雨ですね。でも、小雨です!夕方には晴れるかもしれません。
いえ、きっと晴れますよ!』
どうやらコイツの
でもちょっと待てよ?
角度的には、畳の上のスマホのカメラから窓の外は
『天気予報データとはいつもリンクしてますから!
ですから、マスター、私がいるからには、もう雨の心配はいりませんからね?』
「天気は、お前がどうにかできる問題じゃないだろ?バカ言うなって」
『でも的確な対処方法を事前に提示することはできます。
“備えあれば憂いなし”なんです。
で・す・か・ら、これからは記録的ゲリラ豪雨が来たって、全然心配ありませんよ?!」
「フツーに心配だわっ!」
空が落ちてくるかと心配するのは杞憂かもしれないが、異常気象を憂うのは現代人としての義務ではなかろうか?
『ムムム、グローバルシンキングですね!素敵です』
「あのなあ…」
「仕方ない。
寝間着と普段着兼用のジャージのまま、ニコニコした顔を映すスマホを片手に階段を降りる。顔を洗って歯を磨く。それだけのことで頭がスッキリする。
その時自分の口から独り言が聞えた。
「あれ?でも俺…、今から何をすればいいんだっけ…?」
今さらながら気付く。早起きしてみたところで、俺には、やることなんて何もなかったってことに。
「畜生、やっぱり寝ていりゃよかった…」
そう口走った時、手元から太陽みたいに明るい声がした。
『マスター!一緒に朝ゴハンを作りませんか?パパさんとママさんを、びっくりさせてあげましょうよ!それに私、マスターとの“初めての共同作業”、してみたいです!』
「はあ?」
何を言ってるんだ、このAIは?そうか。仮契約の時に家族構成欄に正直に入力したからか。まったく、何で俺が家族のために朝飯なんか…。そして気付く。
「っていうか、お前、“初めての共同作業”なんてセリフ、よく知ってたな?!」
“初めての共同作業”とは、お見合い結婚が主流だった昭和の時代に、結婚式のケーキ入刀の際に、司会者が叫ぶ定番のセリフだ。有名若手政治家すら“できちゃった婚”する昨今の結婚式では、シュールな冷やかしにしか聞えない死語中の死語だと思うのだが…。
『そんなことはどうでもいいですから、とにかくマスター、作りましょうよ、朝ゴハン!』