第10話:笑顔は何処にありますか?
文字数 2,735文字
これって、どういう展開だよ?
不思議すぎることに、俺は今、親子3人で朝メシを食べている。
しかも、楽しくにぎやかに。
当たり前すぎる家庭風景だとしても、俺にとって団欒 は、とてつもなく遠い場所だったはずなのに、俺は今、その真ん中にいる。俺の作った朝メシと、そして―――、
『いやー、スミセンねえ・・・? 勝手にお宅に上がり込んじゃってぇ…。
しかも、こんな真ん中の場所 に置 らせてもらっちゃってぇ…。
恐縮です、恐縮、エへへ・・・・・・』
訂正しよう。これは当たり前の家庭風景などではなかった。少なくとも現在の一般社会常識の範疇には収まっていないことは確かだった。
「はっはっは!それにしても驚いたよ…。
世の中は、気が付かない間に、ずいぶんと進歩 んでたんだねえ・・・」
父ちゃんに同感だ。
『いやー、私なんか、まだまだです。お恥ずかしい限りですよお・・・』
なんでAI が謙遜してんだよ?
父ちゃんの話の主語は「世の中は」だっただろうが!ちゃんと聞いてろよ!
それにしても、だ。
テーブルの真ん中にスマホ立てて、
キャラクターAIと会話しながら違和感なく食事する両親と、
その隣で居心地悪そうに黙々と飯を食ってるいい年齢 した息子の姿って、
なんか、もう、すげーシュールな構図 だよな?
もしかして俺たち一家は、一家団欒のイノベーション過程を、先行体験しているのか?
そしてまさか、昭和のキャッチコピーの、「一家に一台、カラーテレビ」みたいに、
「一家に一体、キャラクターAI」などというCMが流れる時代が来るとでもいうのか?
『一家に一体?そんなハズないじゃないですか?
一人に一体ずつですよ?お父さま!もうすぐそこまで来ているんです。
キャラクターAIが、いつも一人一人のお傍 で、お世話をするという時代が…』
キャラクターAIの対人口比率、いきなり上がってるんですけど??
「へえ、そうなのかい?」
AI の言うことを、全部真に受けちゃダメだぜ?父ちゃん。
『はいっ!これからのAIは、情報処理の道具じゃなくて、
人とともに人生を歩むパートナーになるんです。
それが人類の新しいライフスタイルなんです!』
「ふうん・・・、なんだか、ファンタジー小説なんかに出てくる主人公の勇者に乗った妖精さんが、
現実世界に現れたみたいなお話だねえ…」
『それです!さすがはお父様!鋭すぎます!』
オイ、何のつもりだ?父ちゃんをおだてたところで、何も出てはこんぞ。
ただの安サラリーマンなんだから。
『それこそが“パーソナル・ライフサポート・キャラクターエージェント”、
あ、これ“キャラクターAI”の正式名称なんですけどね、
それが目指すべき、人間とAIの補完関係の、まさに理想の姿なんですよ!』
「よくわからないけど、そうなんだろうねえ・・・」
『でもぉ・・・、お父様に、妖精さんに似てるだなんていわれたら、照れちゃいますよお・・・』
はあ?なにが『妖精さん』だ。段々お前が、使い魔かグレムリンに見えてきたぞ。
『妖精さんだけに、要請してもらったら、飛んできちゃいます!なんちゃって・・・」
寒っ!
「ほう・・・、AI ちゃんは、オヤジギャグにも対応できるのか?」
『はい、特殊機能 の一つなのです!』
おっそろしく、つまらないけどな。
「素晴らしい!その若さでたいしたものだ。オヤジギャグというのは、つまらなさこそが命なんだ。その場にシラケ鳥が飛んでナンボのものなんだよ。ところでキミは何歳 なんだね?」
『ハイ、365分の1歳で~す!』
「ほう、そりゃまた若いねえ!エラいぞ、AI ちゃん・・・」
悪い夢でも見ているのか?朝から俺の目の前で、父ちゃんとAI がオヤジギャグ談義に花を咲かせているぞ…
そして、「シラケ鳥」ってどんな鳥??
google れば出てくるのっ??!!
カヤの外っていうか、全く話についていけないんだけど・・・。
「でもAI ちゃんが妖精っていうのは納得よ。だって、ほんとにかわいらしいもの」
俺ですらついて行けない会話に、母ちゃん平然と参戦しちゃった??
『えへへ、それほどでもぉ・・・。…恐縮です』
「なにが『えへへ』だ。このAI …」
いかん!俺としたことが、思わず会話に入っちまった…。
「あーあ、でも、|良にもAI ちゃんみたいな女の子が・・・」
「女の子?何言っちゃってるの?母ちゃん…」
「お嫁さんに来てくれるといいんだけどねえ・・・」
「ブハッ!!」
俺はお約束のように味噌汁を口から吹き出す。もちろんAI《アイ》の顔であるスマホ画面に向けて。
『いえ、そんなあ…、私なんかには、もったいないですよ~』
味噌汁がな!
AI はハンカチで顔を拭 きながら母ちゃんに笑顔を向けている。
オイ、画面の中で顔を拭いても、全く意味ないぞ。
『でもぉ~、お母さまがそうおっしゃってくださるなら、私、頑張っちゃおうかなあー、
な~んて・・・』
勘違いするなよ? 「みたいな」ってところこそが、重要キーワードなんだからな!
誰もAIなんぞに息子をくれてやるとは、言ってねえんだぞ?!
「で・・・、良のヤツとは、上手くやっていけそうなのかね?」
ぶほぉーっ!
たまらず俺はゴハン粒を吐き出してしまう。
もちろんAI の顔の上に。
で?何? そのお姑 さん的発言は?
『モチロンですよ!』
「勝手に肯定すんな!」
あっ、と思った瞬間、スマホ画面の中のAI の服装が一瞬でネクタイとスーツにチェンジしていた。太縁のマジメ眼鏡をかけて、フワフワの髪も三分けに改まっている。
『お父様、お母様…。 私、AI は、良さん必ず幸せにしてみせます。
ですから、息子さんを――、
私にいただけませんでしょうかあっ!!』
「な……っ」
父ちゃんと母ちゃんは堪 えきれず爆笑。
俺はと言えば、AI をスマホごとたたき割りたいという抑えがたい衝動を
堪 え続けていた。
朝食を終え、二人は仕事へと出かけて行った。
「じゃあAI ちゃん、良をよろしくね」とか言い残して出かけていきやがった。
っていうか、俺の両親、適応力まじヤバくね?
不思議すぎることに、俺は今、親子3人で朝メシを食べている。
しかも、楽しくにぎやかに。
当たり前すぎる家庭風景だとしても、俺にとって
『いやー、スミセンねえ・・・? 勝手にお宅に上がり込んじゃってぇ…。
しかも、こんな真ん中の
恐縮です、恐縮、エへへ・・・・・・』
訂正しよう。これは当たり前の家庭風景などではなかった。少なくとも現在の一般社会常識の範疇には収まっていないことは確かだった。
「はっはっは!それにしても驚いたよ…。
世の中は、気が付かない間に、ずいぶんと
父ちゃんに同感だ。
『いやー、私なんか、まだまだです。お恥ずかしい限りですよお・・・』
なんで
父ちゃんの話の主語は「世の中は」だっただろうが!ちゃんと聞いてろよ!
それにしても、だ。
テーブルの真ん中にスマホ立てて、
キャラクターAIと会話しながら違和感なく食事する両親と、
その隣で居心地悪そうに黙々と飯を食ってるいい
なんか、もう、すげーシュールな
もしかして俺たち一家は、一家団欒のイノベーション過程を、先行体験しているのか?
そしてまさか、昭和のキャッチコピーの、「一家に一台、カラーテレビ」みたいに、
「一家に一体、キャラクターAI」などというCMが流れる時代が来るとでもいうのか?
『一家に一体?そんなハズないじゃないですか?
一人に一体ずつですよ?お父さま!もうすぐそこまで来ているんです。
キャラクターAIが、いつも一人一人のお
キャラクターAIの対人口比率、いきなり上がってるんですけど??
「へえ、そうなのかい?」
『はいっ!これからのAIは、情報処理の道具じゃなくて、
人とともに人生を歩むパートナーになるんです。
それが人類の新しいライフスタイルなんです!』
「ふうん・・・、なんだか、ファンタジー小説なんかに出てくる主人公の勇者に乗った妖精さんが、
現実世界に現れたみたいなお話だねえ…」
『それです!さすがはお父様!鋭すぎます!』
オイ、何のつもりだ?父ちゃんをおだてたところで、何も出てはこんぞ。
ただの安サラリーマンなんだから。
『それこそが“パーソナル・ライフサポート・キャラクターエージェント”、
あ、これ“キャラクターAI”の正式名称なんですけどね、
それが目指すべき、人間とAIの補完関係の、まさに理想の姿なんですよ!』
「よくわからないけど、そうなんだろうねえ・・・」
『でもぉ・・・、お父様に、妖精さんに似てるだなんていわれたら、照れちゃいますよお・・・』
はあ?なにが『妖精さん』だ。段々お前が、使い魔かグレムリンに見えてきたぞ。
『妖精さんだけに、要請してもらったら、飛んできちゃいます!なんちゃって・・・」
寒っ!
「ほう・・・、
『はい、
おっそろしく、つまらないけどな。
「素晴らしい!その若さでたいしたものだ。オヤジギャグというのは、つまらなさこそが命なんだ。その場にシラケ鳥が飛んでナンボのものなんだよ。ところでキミは
『ハイ、365分の1歳で~す!』
「ほう、そりゃまた若いねえ!エラいぞ、
悪い夢でも見ているのか?朝から俺の目の前で、父ちゃんと
そして、「シラケ鳥」ってどんな鳥??
カヤの外っていうか、全く話についていけないんだけど・・・。
「でも
俺ですらついて行けない会話に、母ちゃん平然と参戦しちゃった??
『えへへ、それほどでもぉ・・・。…恐縮です』
「なにが『えへへ』だ。この
いかん!俺としたことが、思わず会話に入っちまった…。
「あーあ、でも、|良にも
「女の子?何言っちゃってるの?母ちゃん…」
「お嫁さんに来てくれるといいんだけどねえ・・・」
「ブハッ!!」
俺はお約束のように味噌汁を口から吹き出す。もちろんAI《アイ》の顔であるスマホ画面に向けて。
『いえ、そんなあ…、私なんかには、もったいないですよ~』
味噌汁がな!
オイ、画面の中で顔を拭いても、全く意味ないぞ。
『でもぉ~、お母さまがそうおっしゃってくださるなら、私、頑張っちゃおうかなあー、
な~んて・・・』
勘違いするなよ? 「みたいな」ってところこそが、重要キーワードなんだからな!
誰もAIなんぞに息子をくれてやるとは、言ってねえんだぞ?!
「で・・・、良のヤツとは、上手くやっていけそうなのかね?」
ぶほぉーっ!
たまらず俺はゴハン粒を吐き出してしまう。
もちろん
で?何? そのお
『モチロンですよ!』
「勝手に肯定すんな!」
あっ、と思った瞬間、スマホ画面の中の
『お父様、お母様…。 私、
ですから、息子さんを――、
私にいただけませんでしょうかあっ!!』
「な……っ」
父ちゃんと母ちゃんは
俺はと言えば、
朝食を終え、二人は仕事へと出かけて行った。
「じゃあ
っていうか、俺の両親、適応力まじヤバくね?