第7話

文字数 460文字

 現在、相沢は六階建ての年期の入った雑居ビルの前にいる。ティンカーベルズの所属する芸能事務所があるのは四階のはず。
 エレベーターには調整中の札が貼られていたので、仕方なく狭い階段を駆け上がると、廊下の突き当りに『片桐芸能プロダクション』のプレートを掲げた扉があった。一旦、乱れた息を整える。
 軽く咳払いをしてノックをすると、女性の「どうぞ」と言う高い声が返ってきた。
「失礼します」と返事をしてドアを引くと、こじんまりとした、いかにもオフィス然とした空間が広がり、壁のあちこちにティンカーベルズのポスターが貼ってあるのが目に留まった。
 一番手前のデスクでノートパソコンを操作している女性が顔を上げる。見たところ他に人の姿が見当たらないので、さっきの返事は彼女であったのは間違いない。
 ベリーショートの髪にグレーのスーツ。ノンフレームの細い眼鏡をかけており、齢は三十代後半といったところ。雰囲気からしてタレントでないのは間違いないだろうが、以前、モデルか女優をやっていたのかもしれないと思わせるほど、整った顔立ちをしている。
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