第四十四話 朝倉宗滴(2)
文字数 4,441文字
【朝倉宗滴(1)の続き】
◆
【幕府からのお手紙】(超意訳)
「ごっめーん、美濃の守護は土岐頼純 にするって言ったけどー、あれ、やっぱ無しで。土岐頼芸 のままでいくから許してちょんまげ。てへぺろ。土岐頼芸も斎藤道三も反省してるからぁ、和睦とかしてみない? 幕府は両家の間をいかようにも取り計らう所存」
【六角家からのお手紙】(超意訳)
「親戚の土岐っち(頼芸は娘婿)が困ってるのー、もういい加減美濃に出兵するの飽きたしー、さっさと土岐家と和睦してくんなーい? 空気読めって感じー。はやく和睦してくんないとー、また江北に侵略しちゃうよー? 和睦してくれたら俺の婿の細川っち(晴元)が娘をあげたいって言ってるよー。六角・細川両家と朝倉家との縁 、大事にしたく候 」
【土岐家からのお手紙】(超意訳)
「大垣を貢いだら幕府が許してくれたのー。ボク(頼芸)もボクのマムシ(道三)も反省して二人でハゲ坊主(剃髪 )になって謝るから許してちょんまげ。あ、頭丸めたからちょんまげなかったわー。過去のことは水に流して和睦を結びたく候」
【織田弾正忠家 からのお手紙】(超意訳)
「ごめんねー美濃へのデート(戦)に行けなくなったのー。だってー斎藤家がどうしてもボクのうつけ(信長)と結婚したいってゆーしー。それに大垣を幕府に貢いだら、官位も役職もくれたのー。もう土岐家とかどうでもよくなーい? 織田弾正忠家は土岐家と朝倉家との和睦を切に望むものなり」
「どう思うかね?」
「ど、どうと申されましても……」
「一体なんなんじゃこの豹変振りはぁぁぁ!」
いきなりキレないでくれ宗滴 爺さん、もしかしてそのお手紙も俺のせいとか思ってます?(半分くらいは俺のせいだが)
「幕府も六角家も土岐家も斎藤家も織田弾正忠家も、朝倉家と土岐家との和睦を望んでおるようでありますが」
「先代の朝倉孝景 公は頼武殿とその子頼純殿を助けるため、美濃へ5度も出兵しておるのだ。5度もだぞ! それにかつては幕府も、六角家も、織田家も我ら朝倉家と同心し、頼純殿を旗印にともに土岐頼芸と敵対していたはずなのじゃ。それがどいつもこいつも手のひら返しやがって筋が通る話ではなかろう!」
宗滴爺さんが激オコプンプン丸状態である。
「朝倉家として土岐頼芸殿の美濃守護就任に斎藤道三殿がそれを補佐する体制は受け入れられぬということでありますか?」
「美濃と接しておる大野郡司 は汚名返上もあり美濃攻めを主張しておる」
「大野郡司の汚名返上とは?」
「うむ。あやつ、今の大野郡司である景鏡 の父の景高 は朝倉家を出奔 しておるのでな」
(前大野郡司であった朝倉景高は兄で当主の朝倉孝景 と対立し大野郡司を罷免 され、上洛し室町幕府を巻き込んで謀反 を起こそうとしていた。むろん失敗するのだが、それに絡み政所執事 の伊勢貞孝 や内談衆 の本郷光泰 などが一時失脚している)
「朝倉家中としては、美濃への侵攻継続に傾いていると?」
「そこまで愚か者ぞろいではない。先代の孝景公の喪が明けたばかりで新当主の体制固めがまずは大事であるからな。反対しているのは大野郡司と新当主ぐらいなものだ」
「新当主の延景 殿も外征を主張しておられるのですか?」
「いやあのボンクラはそうではない」
ボンクラって……
「朝倉延景(義景)殿は何をお望みでありますのか?」
「孫次郎(義景)は、気に入らないのだよ」
「気に入らない?」
「年下で織田の分家の子倅 が公方様に謁見し、官位までも与えられたことに納得がいっておらぬのじゃ」宗滴がため息混じりに吐き捨てる。
朝倉義景お前もかーい。
義龍もだけど、どんだけ信長は嫉妬されてるねん。
「信長殿の上洛と、弾正大忠 への任官がおきに召さぬと?」
「そうじゃ、はっきり言えばへそを曲げておるのだ……それと、斎藤道三殿の越前守の官位もな……なんと器量の小さきことか」
宗滴爺さんため息ばっかりよ。
「……では、孫次郎殿も上洛し、公方様に謁見のうえ、しかるべき官位をお求めになるべきではありますまいか?」
「弾正大忠殿の二番煎じで、いや斎藤家の嫡男も謁見したとなれば三番煎じであるのか? それでは矜持 が許さず、孫次郎にはできんことよ」
プライドだけは高いということね……メンドクセ。
「私は朝倉家への外交の取りまとめを任されております。朝倉家の長年の室町殿への忠勤を評して、新当主となった朝倉孫次郎殿には公方様より『義』の一字拝領と、越前守護の補任に、しかるべき官位の奏上を認める旨の内諾を得ております」
「さすがに手回しの早きことよ、いや感謝するべきことだがな」
「ですが、この三日。延景殿への面会を申し込んだものの、返事はなしのつぶて……いささか困惑しておりました」
「孫次郎はな、織田家の使いっ走りには会いたくないとのたまっておったわ」
「私は幕府の御供衆であり、公方様からの正式な使いとして参っております。それを織田弾正忠家の小間使い呼ばわりとはさすがに……」
「分かっておる。ワシは分かっておるのだ! ワシが館を留守にしている間にそんなことになっておったのじゃ。取り急ぎ貴公と話をしたかったのではあるが、当方の不手際があまりに酷くてな、少々バツが悪すぎたので将棋のお相手などをさせて貰ったわけじゃが……」
「将棋で幕府の使者たるそれがしの器量も分かると――」
「そう悪くとるな。貴公にはかつてから興味があったまでのこと。それにあそこまでわしに圧勝しておるのだ。溜飲は下げたであろうが」
「それで、私は宗滴殿のお眼鏡に適い、孫次郎殿との面会を差配してくれるものと思ってよろしいのですかな?」(メガネないけど雰囲気で)
「無論じゃ。明日には我が朝倉家の当主である孫次郎延景との正式なる面会の場を設けさせて貰おう」
「ありがたき幸せにございます」
「……じゃが条件がある!」
「その条件とは?」
「わしともう一局指してくれぬか?」
「は? はぁ……」
「家中の者どもは貴公の差し方は急戦が多かったと聞いていたのじゃが、先ほどの貴公の差し回しは持久戦そのものであった。もう一度差して今度こそその守りを打ち破ってみたいのよ」マジ負けず嫌いじゃね?
「では、もう一局差しまするか」
「どうにかしてあの堅き守りを崩したいものよ」
「アレは穴熊と申しまして――」
「貴公の軍略は持久勝ちが信条か?」
「将棋では初めから互角の兵力で戦えますので、急戦も可能ですが、実際に幕府軍が戦う場合には兵力が足らず、守りを固めるほかありますまい」
「守りには自信があると?」
「3倍の敵が相手であれば、3ヶ月は持ちこたえて見せましょう」
へのつっぱりはなんとやらである。
「頼もしき言葉よのう、あっ、ちょっとマテ。その一手は痛過ぎるぞ」
「将棋にも戦にもマッタはありませぬぞ」
「貴公、少しは老人を労わる気持ちはないのか?」
「はて? 百戦錬磨な老人を労わっていてはこちらの命がいくつあっても足りぬものと――」
こうして宗滴爺さんと将棋を指しながら、朝倉館の夜は更けていくのであった。(このあとメチャクチャ将棋した)
◆
「我が朝倉家は不当に貶められておるのじゃ!」
朝倉延景(義景)と会談し適当に挨拶を済ませたら、いきなりのコレである。
「……は? 貶められているとは一体?」
「我が朝倉家は越前の守護である。我が父は御供衆でもあった。だが弾正忠家如きまでもが何ゆえ御供衆に任ぜられるのだ。我が朝倉家と織田弾正忠家が如きの室町殿への献身が同じと見なすと申すのであるか?」
やっぱ、メンドクセーなこいつ……
「こたび弾正忠家と美濃斎藤家は公方様のため、大垣を御料所として寄進しましてございます。その功をお認めになってのことと存じまするが」
「それに官位じゃ! 我が朝倉家にも越前守護にふさわしき官位が必要じゃとはその方は思わぬのか?」
話聞けや!
「越前守護たる朝倉家に相応しき官位とはどのようなものでありましょうや?」
「従四位 じゃ! 従四位が欲しいぞ。わしは従四位が欲しいのじゃ」
もういや、コイツ……
「それは無理なお話にございます。朝倉家にはそのような高位の先例はありませぬ」
いやまあ史実で朝倉義景が将来的に授爵 する従四位下と任官する左衛門督 の官位の内諾は得てるんだがね。
「爺、佐々木や京兆家 の官位はなんじゃったかのう?」
「佐々木六角定頼 殿は従四位下 弾正少弼 になり、京兆家細川晴元殿は従四位下右京大夫 にございます」
「ほれ、六角も細川も従四位じゃ、わしも従四位が欲しいのじゃ」
いつから、朝倉が細川京兆家と佐々木六角家と同格になったんだよ。
まあ家格なんて最早意味をなしてないし俺は何でもいいと思うけどな。
「分かりましてございます。朝倉殿のたっての願いです。この細川兵部大輔 、何としても朝倉殿の願いをかなえるため力を尽くしましょうぞ」
ものはいいようだろ、恩を着せといて損はないからな。
「ほう、その方よい奴じゃの」
三日間放置プレイされたけど、別に恨んでないぞ。
「私の責任にて、朝倉孫次郎殿への従四位への授爵に、公方様からの一字拝領に、越前守護の任命を取りまとめて参りますゆえ、なにとぞ幕府への代替わりの挨拶の使者に、美濃土岐家・斎藤家との和睦をお願いいたしまする」
「よかろう。その条件なら美濃との和睦は考えよう。あとのややこしい事は爺と決めてくれ」
「はっ。孫次郎様のご英断に感謝いたしまする」
ようするに土岐家とか斎藤家とか、美濃なんてどうでもいいのね。
「そうじゃ、公方様は鷹狩はお好きか?」
「は、はあ好まれておりまする」(一回やったよな)
「そうかそうか、ではワシが自ら育てておる鷹を公方様にお送りしようかの、公方様にはくれぐれもよしなにな」
とりあえず、なんだか良く分からん朝倉孫次郎延景(義景)との会談は終わった。
あとは京に早馬を送ったフリをして、朝倉宗滴殿と条件の交渉を無難にこなした。
こうして史実より数年早く、公方様である足利義藤公の「義」の一字を拝領し、従四位への授爵、左衛門督への任官がなされ、朝倉孫次郎延景は越前守護「朝倉左衛門督義景」の名乗りとなったのである。
ちなみに朝倉宗滴爺さんとは、交渉の間ずっと将棋を指していた。
むろん『居飛車穴熊 』や『ミレニアム囲い』でボコボコにした。
なぜか宗滴爺さんはボコボコにされる方が喜んでいたので、ボコボコにしたのだが、マゾか何か?
「しかしお主の守りは堅いな。だが守りだけでは戦には勝てぬものよ」
「城を堅く守るは後詰を待つためのもの。玉を堅く守り手駒の飛車角で敵を討てばよいのです」
「実戦はそう上手くいくものではないがな」
分かれの一局を指し、朝倉宗滴殿とはまたの再会を約した。
朝倉義景とは友達にはなりたくないと思ったが、宗滴爺さんとは将棋を通じて知己 になれたとは大きかった。
この時代の最強の一人であろう名将と出会えたこの越前の旅は決して無駄にはならなかったのである――
ちなみに最後の一局は『角換わり腰掛け銀』で圧勝した。(谷川名人の得意技です)
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【幕府からのお手紙】(超意訳)
「ごっめーん、美濃の守護は
【六角家からのお手紙】(超意訳)
「親戚の土岐っち(頼芸は娘婿)が困ってるのー、もういい加減美濃に出兵するの飽きたしー、さっさと土岐家と和睦してくんなーい? 空気読めって感じー。はやく和睦してくんないとー、また江北に侵略しちゃうよー? 和睦してくれたら俺の婿の細川っち(晴元)が娘をあげたいって言ってるよー。六角・細川両家と朝倉家との
【土岐家からのお手紙】(超意訳)
「大垣を貢いだら幕府が許してくれたのー。ボク(頼芸)もボクのマムシ(道三)も反省して二人でハゲ坊主(
【織田
「ごめんねー美濃へのデート(戦)に行けなくなったのー。だってー斎藤家がどうしてもボクのうつけ(信長)と結婚したいってゆーしー。それに大垣を幕府に貢いだら、官位も役職もくれたのー。もう土岐家とかどうでもよくなーい? 織田弾正忠家は土岐家と朝倉家との和睦を切に望むものなり」
「どう思うかね?」
「ど、どうと申されましても……」
「一体なんなんじゃこの豹変振りはぁぁぁ!」
いきなりキレないでくれ
「幕府も六角家も土岐家も斎藤家も織田弾正忠家も、朝倉家と土岐家との和睦を望んでおるようでありますが」
「先代の朝倉
宗滴爺さんが激オコプンプン丸状態である。
「朝倉家として土岐頼芸殿の美濃守護就任に斎藤道三殿がそれを補佐する体制は受け入れられぬということでありますか?」
「美濃と接しておる
「大野郡司の汚名返上とは?」
「うむ。あやつ、今の大野郡司である
(前大野郡司であった朝倉景高は兄で当主の
「朝倉家中としては、美濃への侵攻継続に傾いていると?」
「そこまで愚か者ぞろいではない。先代の孝景公の喪が明けたばかりで新当主の体制固めがまずは大事であるからな。反対しているのは大野郡司と新当主ぐらいなものだ」
「新当主の
「いやあのボンクラはそうではない」
ボンクラって……
「朝倉延景(義景)殿は何をお望みでありますのか?」
「孫次郎(義景)は、気に入らないのだよ」
「気に入らない?」
「年下で織田の分家の
朝倉義景お前もかーい。
義龍もだけど、どんだけ信長は嫉妬されてるねん。
「信長殿の上洛と、
「そうじゃ、はっきり言えばへそを曲げておるのだ……それと、斎藤道三殿の越前守の官位もな……なんと器量の小さきことか」
宗滴爺さんため息ばっかりよ。
「……では、孫次郎殿も上洛し、公方様に謁見のうえ、しかるべき官位をお求めになるべきではありますまいか?」
「弾正大忠殿の二番煎じで、いや斎藤家の嫡男も謁見したとなれば三番煎じであるのか? それでは
プライドだけは高いということね……メンドクセ。
「私は朝倉家への外交の取りまとめを任されております。朝倉家の長年の室町殿への忠勤を評して、新当主となった朝倉孫次郎殿には公方様より『義』の一字拝領と、越前守護の補任に、しかるべき官位の奏上を認める旨の内諾を得ております」
「さすがに手回しの早きことよ、いや感謝するべきことだがな」
「ですが、この三日。延景殿への面会を申し込んだものの、返事はなしのつぶて……いささか困惑しておりました」
「孫次郎はな、織田家の使いっ走りには会いたくないとのたまっておったわ」
「私は幕府の御供衆であり、公方様からの正式な使いとして参っております。それを織田弾正忠家の小間使い呼ばわりとはさすがに……」
「分かっておる。ワシは分かっておるのだ! ワシが館を留守にしている間にそんなことになっておったのじゃ。取り急ぎ貴公と話をしたかったのではあるが、当方の不手際があまりに酷くてな、少々バツが悪すぎたので将棋のお相手などをさせて貰ったわけじゃが……」
「将棋で幕府の使者たるそれがしの器量も分かると――」
「そう悪くとるな。貴公にはかつてから興味があったまでのこと。それにあそこまでわしに圧勝しておるのだ。溜飲は下げたであろうが」
「それで、私は宗滴殿のお眼鏡に適い、孫次郎殿との面会を差配してくれるものと思ってよろしいのですかな?」(メガネないけど雰囲気で)
「無論じゃ。明日には我が朝倉家の当主である孫次郎延景との正式なる面会の場を設けさせて貰おう」
「ありがたき幸せにございます」
「……じゃが条件がある!」
「その条件とは?」
「わしともう一局指してくれぬか?」
「は? はぁ……」
「家中の者どもは貴公の差し方は急戦が多かったと聞いていたのじゃが、先ほどの貴公の差し回しは持久戦そのものであった。もう一度差して今度こそその守りを打ち破ってみたいのよ」マジ負けず嫌いじゃね?
「では、もう一局差しまするか」
「どうにかしてあの堅き守りを崩したいものよ」
「アレは穴熊と申しまして――」
「貴公の軍略は持久勝ちが信条か?」
「将棋では初めから互角の兵力で戦えますので、急戦も可能ですが、実際に幕府軍が戦う場合には兵力が足らず、守りを固めるほかありますまい」
「守りには自信があると?」
「3倍の敵が相手であれば、3ヶ月は持ちこたえて見せましょう」
へのつっぱりはなんとやらである。
「頼もしき言葉よのう、あっ、ちょっとマテ。その一手は痛過ぎるぞ」
「将棋にも戦にもマッタはありませぬぞ」
「貴公、少しは老人を労わる気持ちはないのか?」
「はて? 百戦錬磨な老人を労わっていてはこちらの命がいくつあっても足りぬものと――」
こうして宗滴爺さんと将棋を指しながら、朝倉館の夜は更けていくのであった。(このあとメチャクチャ将棋した)
◆
「我が朝倉家は不当に貶められておるのじゃ!」
朝倉延景(義景)と会談し適当に挨拶を済ませたら、いきなりのコレである。
「……は? 貶められているとは一体?」
「我が朝倉家は越前の守護である。我が父は御供衆でもあった。だが弾正忠家如きまでもが何ゆえ御供衆に任ぜられるのだ。我が朝倉家と織田弾正忠家が如きの室町殿への献身が同じと見なすと申すのであるか?」
やっぱ、メンドクセーなこいつ……
「こたび弾正忠家と美濃斎藤家は公方様のため、大垣を御料所として寄進しましてございます。その功をお認めになってのことと存じまするが」
「それに官位じゃ! 我が朝倉家にも越前守護にふさわしき官位が必要じゃとはその方は思わぬのか?」
話聞けや!
「越前守護たる朝倉家に相応しき官位とはどのようなものでありましょうや?」
「
もういや、コイツ……
「それは無理なお話にございます。朝倉家にはそのような高位の先例はありませぬ」
いやまあ史実で朝倉義景が将来的に
「爺、佐々木や
「佐々木
「ほれ、六角も細川も従四位じゃ、わしも従四位が欲しいのじゃ」
いつから、朝倉が細川京兆家と佐々木六角家と同格になったんだよ。
まあ家格なんて最早意味をなしてないし俺は何でもいいと思うけどな。
「分かりましてございます。朝倉殿のたっての願いです。この細川
ものはいいようだろ、恩を着せといて損はないからな。
「ほう、その方よい奴じゃの」
三日間放置プレイされたけど、別に恨んでないぞ。
「私の責任にて、朝倉孫次郎殿への従四位への授爵に、公方様からの一字拝領に、越前守護の任命を取りまとめて参りますゆえ、なにとぞ幕府への代替わりの挨拶の使者に、美濃土岐家・斎藤家との和睦をお願いいたしまする」
「よかろう。その条件なら美濃との和睦は考えよう。あとのややこしい事は爺と決めてくれ」
「はっ。孫次郎様のご英断に感謝いたしまする」
ようするに土岐家とか斎藤家とか、美濃なんてどうでもいいのね。
「そうじゃ、公方様は鷹狩はお好きか?」
「は、はあ好まれておりまする」(一回やったよな)
「そうかそうか、ではワシが自ら育てておる鷹を公方様にお送りしようかの、公方様にはくれぐれもよしなにな」
とりあえず、なんだか良く分からん朝倉孫次郎延景(義景)との会談は終わった。
あとは京に早馬を送ったフリをして、朝倉宗滴殿と条件の交渉を無難にこなした。
こうして史実より数年早く、公方様である足利義藤公の「義」の一字を拝領し、従四位への授爵、左衛門督への任官がなされ、朝倉孫次郎延景は越前守護「朝倉左衛門督義景」の名乗りとなったのである。
ちなみに朝倉宗滴爺さんとは、交渉の間ずっと将棋を指していた。
むろん『
なぜか宗滴爺さんはボコボコにされる方が喜んでいたので、ボコボコにしたのだが、マゾか何か?
「しかしお主の守りは堅いな。だが守りだけでは戦には勝てぬものよ」
「城を堅く守るは後詰を待つためのもの。玉を堅く守り手駒の飛車角で敵を討てばよいのです」
「実戦はそう上手くいくものではないがな」
分かれの一局を指し、朝倉宗滴殿とはまたの再会を約した。
朝倉義景とは友達にはなりたくないと思ったが、宗滴爺さんとは将棋を通じて
この時代の最強の一人であろう名将と出会えたこの越前の旅は決して無駄にはならなかったのである――
ちなみに最後の一局は『角換わり腰掛け銀』で圧勝した。(谷川名人の得意技です)