#5 自分語り(高校生編)

文字数 936文字

 高校は電車通学でした。別にそこへ通いたかったわけではなく、なんなら一度、徒歩圏内の高校でもいいとさえ考えました。そこはレベルの高い高校ではなかったのですが、私の代で廃校になる田舎の分校ということで、少し面白そうだなと思ったのです。しかし、父親に却下されました。

 家庭教師をつけられ勉強させられてましたが、もちろん苦痛だし、その先生にもたぶん嫌われてました。全然宿題やらないし、授業中死ぬほど眠いし。週二回、一回三時間の勉強ってマジで眠い。

 高校では中学の反省を活かし、環境に慣れることを優先しました。結果、三年間教室に通ってはいましたが、友達が一人もできませんでした。ちなみに中学もほぼゼロです。すれ違いに声をかけてくれる人はいたくらい。

 ただ場所が別室から教室に変わっただけで、状況は同じです。学校が苦痛、休めば父親に怒られる、緘黙で誰とも喋れない。
 むしろ、下手に教室に通ってる分、集団に合わせなければいけない負担が増えました。いえ、合わせようと思っても合わせられない負担です。

 中学も高校も、入学当初は頑張って合わせようとするんです。私のことを知らない人が大半だし、環境が変われば緘黙も改善するかも、人生好転するかも、という期待もあり、頑張ってついていくんです。
 でも、だんだん(ひず)みが出てくる。声を掛けられても応えられない。宿題も終わらないし、やり方が合ってるか分からない。校外活動の現地集合では、土地勘がないから場所が分からないし人にも訊けない。絡んでくる輩もいる。頑張っても頑張っても苦しいだけで成功体験が何もないんです。
 なので、そのうち頑張ることをやめます。宿題は一切やらないし、授業も机に突っ伏してるし、対応しきれそうにないものは極力参加しない。
 結局、中学と同じで、今日一日をどう耐えるかで精一杯でした。

 なので、進路なんて全く考えてませんでした。考えてもしょうがないんです。やりたいこともない、行きたい学校もない、緘黙だから何もできる気がしないのです。
 だから、高校を卒業したら自分はどうなるのか不安でした。ずっと家にいるなんて許されないだろうし、そんな自分を想像できない。でも就職はもっと考えられないし、進学も嫌だ。卒業より先が怖くて涙が出ました。
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