■盲目の願い

文字数 494文字

 傍らに居るだろう君に、ねぇ、と声を掛ける。

 僕が見る景色は黒一色だけれど、君が景色を伝えてくれれば、僕はそれで十分だ。丁寧に色まで伝えてくれて、その景色は十分想像できる。

 盲目、そんなちっぽけな事は気にもならない。けれど、君の姿は凄く気になる。

 僕が好きになった君は、どんな顔で笑うのか。どんな顔で怒るのか。どんな顔で喜ぶのか。どんな顔で悲しむのか。

 それが見れないというのは、酷くもどかしい。君の姿が見たい。
――けれど、それは叶わぬ夢。

 ほら、最後くらい泣かないで。
 (僕の為に泣いてくれるのは嬉しいけれど)

 僕はね、君の全てが好きでした。
 (ううん、今もずっと)

――けど、もう、さよならだ。
 (だめだなぁ、最後くらい格好つけさせてよ)

 支えてくれて、ありがとう。願わくば、君の姿を――

 言い切る前に力が抜けて、意識も遠くなる。
 ああ、神様は何処までも残酷だ。
 そして、僕の灯は消えた。

 (願わくば、君の姿を、見たかった)



✁┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
■Twitter→@SRmafufu
■制作→2018/02/03
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み