第三話 その女が見えるだろうか?
文字数 3,861文字
結局その夜は一睡も出来ないまま、朝を迎えた。
憔悴したまま大学へ行き、いつも通り大遅刻で教室に忍び込んできた江波を、“一言言ってやらねば”という気持ちで捕まえる。しかし
「葵先生、いい人だろ?」
と、江波はまるで悪びれる様子がなかった。
「まあ、いい人そうではあったけど……なんで女性だなんて嘘ついたんだよ」
「ウソ?」しらばっくれるつもりなのか、江波はきょとんとした表情を作り、「女だなんて一言も言ってないだろ」と続けた。
「すごい美人だって言ったじゃないか」
「それはただの事実だろ。お前、美人という言葉の意味を辞書でひいてみろよ」
ふっと鼻で笑いながら言われた上、慰めるようにぽんと肩を叩かれる。
「女の子紹介してほしいなら素直にそう言えよ。合コンくらいいつでもセッティングしてやるからさ」
【美人】1,容姿の美しい女性。美女。2,容姿の美しい男子―――。
僕はスマートフォンで調べたその答えを見つめて唇を噛みしめながら、肩に置かれた江波の手を思い切りはたき落とした。
「お前の言い方も、あの人の名前も、紛らわしいんだよっ」
「名前は俺のせいじゃねえだろ……」
と、そんな他愛のない遣り取りを経て、数日は特に何事もなく過ぎていった。
新たな異変が僕を襲ったのは、如月のもとを訪ねてから四日後の夜のことだった。
✳︎✳︎✳︎✳︎
夜。窓際に立った僕は、雨が降る様子がないのを確認してほっと息を吐きながら、カーテンを閉めようとした。
その際たまたま視界に入ったのが、アパートから道路を一本挟んだ向かいに建つ電柱と、その傍らに佇む女の姿だった。
電柱には防犯灯がとりつけられているため、女は丁度スポットライトに照らされたように、闇夜の中に浮かび上がって見えた。
金茶のおかっぱ頭に、黒のワンピース姿。一見普通の若い女性なのだが、俯き加減で立ち尽くしたまま微動だにしていないのが、不自然で不気味だった。
ちょっと幽霊じみているな、と、失礼なことを考えていたその時、女性がふいに顔を上げた。
まっすぐにこちらを見ている。
僕は驚いて、咄嗟に窓から身を退き、勢いよくカーテンを閉めた。
なんだ今の……。
心臓がバクバクと鳴った。
落ち着いて考えてみれば、女性はあそこで迎えでも待っていて、何気なくアパートを見上げてみたらたまたまそこに僕が立っていた、というだけのことだろう。
恐怖を感じたのは寧ろ、窓から不審な男に覗かれていた彼女の方かもしれない。と、そんな風に言い聞かせて、その日の僕は床に就いた。
しかし。翌日以降、女はことある毎に僕の前に姿を現すようになった。
夜道を歩いていてふと振り返るとそこに居たり、駅のホームで電車を待っている時、視線を感じて顔を上げると、向かいのホームからこちらを見ていたり、部屋から窓の外を見ると、やっぱり電柱の傍に立ち尽くしていたりするのである。
偶然で片付けられる状況ではないと思う。のだが、僕のようなドブ色のつまらない男をストーキングなどして、何の得があるというのか、謎だった。
もしかして、実在する人間じゃないんじゃ?
そんな疑念が、僕の中に湧き出していた。
そのくらい女には生気というものがなかったのだ。
整った顔はいつも完全な無表情で、人形のよう……そう、ビスクドールという奴を思わせる造形と雰囲気だった。
事実あれが人間でないとしたら、僕の精神状態もいよいよ危ない。着実に“症状が進行している”とみて間違いないだろう。
ふうと細く長い息を吐き、首を曲げて半分だけ後ろを振り返ってから、素早く前に向き直る。
――今日も今日とて、尾けられている。
本当は休日をいいことに家から一歩も出ない心積もりでいたのだが、昼過ぎに空腹を感じ冷蔵庫を開けてみると空っぽで、仕方なく買い出しに出た結果がこれである。
最寄りのコンビニに向かうつもりで歩いていた僕は、しかし途中で考え直し、行き先を変更することにした。
それから徒歩十分かけて、行きつけの定食屋へとたどり着く。ここで昼をすませるついでに、女を観察しようと思いついたのだ。
あの女は果たして、店の中までついてくるのか。ついてきた場合、店の人は女をどう扱うのか。
完全に無視をするようであれば、
そう決意して店に足を踏み入れたものの、女は中まで追ってくることはしなかった。代わりに、店から少し離れた歩道の端に立って、窓際の席に座る僕をじっと見詰めている。
どうにか女を視界に入れないように注意して、広げたメニューを睨みつける僕の姿は、傍からは「如何に安い金額で効率よく腹を満たせるかに腐心する貧乏学生」のようにでも見えたかもしれないが、実際の所、食欲なんてものは女のせいですっかり減退していた。
―――がらり。
店の引き戸が開かれる音がした。
一瞬、ついにあの女が入ってきたのではないかと思い、素早く入り口へ目を向ける。
しかしそこに立っていたのは、想定外の人物だった。
如月葵である。
この店へ来るのは初めてなのだろうか、きょろと物珍しそうに店内を見渡しつつ、奥へ進んでこようとしていた。
「如月さん」
素知らぬふりをするのも憚 られて(というか狭い店内なので無理がある)、僕は声をかけた。途端眉を上げて驚きの表情を浮かべた如月は、
「シグマ君じゃないか」
偶然だね、などと言いながら近付いてきて、当たり前のように、僕の向かいにするりと腰を下ろしてしまった。
一見何でもないような行動だが、自分には到底真似出来ないな、と思う。僕なら店で知り合いを見つけても、同席するべきなのか、でも話すことないし相手も鬱陶しく思うかもしれないし、かといって挨拶だけして離れた場所に座るのも避けているみたいで感じが悪いのでは云々かんぬん……と、考えすぎてどこにも行けず右往左往してしまうことだろう。
これがコミュ力の差というやつだろうか。
「うん、これは美味しい。卵がとろとろだ」
暫くして運ばれてきた親子丼を頬張りながら、如月は幸福そうな顔を見せた。或いはこの人には食道楽の気があるのかもしれない。
「こんな穴場スポットがあったなんて、知らなかったな」
閑散とした店内を見回して如月は呟く。やはり彼は、この店は初めてらしい。
聞いてみると、たまたまこの辺りに用があって、「帰りに通りかかった定食屋にぶらりと足を踏み入れてみたら君が居た」とのことだった。
こんなスーパーとコンビニと花屋とパン屋しかないような住宅街に何の用があったのかと少し不思議には思ったが、わざわざ詮索する程の事でも無い。
僕らの他に客は、少し離れた席でうどんを啜っている作業着姿のおじさん一人だけだった。おじさんが如月を見てぴたりと二秒箸を止めたのは、和服姿が珍しかったからなのか、顔面偏差値の高さに驚いたからなのか、全く別の理由からなのか。
「シグマ君、食べないのかい?」
と。ピーマンを前にした子供のように箸が進んでいない僕を見て、如月が首を傾げる。
「ああ、いえ……」オススメを聞かれて「親子丼」と答えた成り行き上自分も同じものを注文していたが、やはり中々喉を通らなかった。
なんせ、あの女はまだ同じ場所に棒立ちでこちらを見つめているのである。
「如月さん、あの、外に立ってる女性のことなんですけど、」
暫くして僕は、女からのプレッシャーに耐えかね、切り出した。
果たして如月にあの女の姿が見えるのかどうか、確かめてみたい気持ちもあった。
「どれ?」如月は窓の外に向けた視線を彷徨わせながら、問い返してくる。
「あれですよ、あの、おかっぱ頭の若い女性」
「……犬の散歩をしてるおじいさんしか居ないけど?」
長閑な町だね、などと暢気なことを言っている如月に、僕は小さく息を吐いた。
「如月さんって、視力いくつですか?」
「四・〇だけど」
「わあすごい、どこかの民族のようですね」
四・〇の如月に見えなくて、〇・六の僕に見えるというのは、つまりそういうことだ。
「一体なんなんだい?」如月は窓から僕へ視線を戻すと、
「幽霊――は、存在しないんだっけ?」
何処か含みのある口調で言って、テーブルの上で手を組み、こちらへ身を乗り出してくる。
「それじゃあ、幻覚でも見えているのかな?」
その問いかけに、僕はぶんぶんと首を横に振った。
「い、いや、ちょっと疲れてて……気のせいですよ。気のせい」
この人に女のことを話してしまったのは、早計だった。
窓外の存在を必死で頭から振り払いながら、誤魔化すように口に放り込んだ鶏肉を無理矢理に飲み込む。味はよく分からなかった。
「へえ、そうなんだ」
如月が妙に平坦なトーンの相槌を打つ。
一瞬どきりとさせられたが、杞憂だったようで、それ以上女について追求されることはなかった。
黙って親子丼の残りを食べ始めた如月は、直接口をつけて米の最後の一粒まで掻き込むという意外に豪快な所作で丼をしっかり空にすると、
「じゃあシグマ君、移動しようか」
「え、どこへですか?」
夕飯の買い物だけしてさっさと帰る気満々だったのだが。と、戸惑う僕に向かって、如月は広げたメニュー表をずいと突きつけてくる。
「この店には、デザートがない。」
例えば殺人事件のおきた現場が“密室”であることに気付いてしまった刑事みたいな真面目くさった顔をして、如月はそう言ったのだった。
憔悴したまま大学へ行き、いつも通り大遅刻で教室に忍び込んできた江波を、“一言言ってやらねば”という気持ちで捕まえる。しかし
「葵先生、いい人だろ?」
と、江波はまるで悪びれる様子がなかった。
「まあ、いい人そうではあったけど……なんで女性だなんて嘘ついたんだよ」
「ウソ?」しらばっくれるつもりなのか、江波はきょとんとした表情を作り、「女だなんて一言も言ってないだろ」と続けた。
「すごい美人だって言ったじゃないか」
「それはただの事実だろ。お前、美人という言葉の意味を辞書でひいてみろよ」
ふっと鼻で笑いながら言われた上、慰めるようにぽんと肩を叩かれる。
「女の子紹介してほしいなら素直にそう言えよ。合コンくらいいつでもセッティングしてやるからさ」
【美人】1,容姿の美しい女性。美女。2,容姿の美しい男子―――。
僕はスマートフォンで調べたその答えを見つめて唇を噛みしめながら、肩に置かれた江波の手を思い切りはたき落とした。
「お前の言い方も、あの人の名前も、紛らわしいんだよっ」
「名前は俺のせいじゃねえだろ……」
と、そんな他愛のない遣り取りを経て、数日は特に何事もなく過ぎていった。
新たな異変が僕を襲ったのは、如月のもとを訪ねてから四日後の夜のことだった。
✳︎✳︎✳︎✳︎
夜。窓際に立った僕は、雨が降る様子がないのを確認してほっと息を吐きながら、カーテンを閉めようとした。
その際たまたま視界に入ったのが、アパートから道路を一本挟んだ向かいに建つ電柱と、その傍らに佇む女の姿だった。
電柱には防犯灯がとりつけられているため、女は丁度スポットライトに照らされたように、闇夜の中に浮かび上がって見えた。
金茶のおかっぱ頭に、黒のワンピース姿。一見普通の若い女性なのだが、俯き加減で立ち尽くしたまま微動だにしていないのが、不自然で不気味だった。
ちょっと幽霊じみているな、と、失礼なことを考えていたその時、女性がふいに顔を上げた。
まっすぐにこちらを見ている。
僕は驚いて、咄嗟に窓から身を退き、勢いよくカーテンを閉めた。
なんだ今の……。
心臓がバクバクと鳴った。
落ち着いて考えてみれば、女性はあそこで迎えでも待っていて、何気なくアパートを見上げてみたらたまたまそこに僕が立っていた、というだけのことだろう。
恐怖を感じたのは寧ろ、窓から不審な男に覗かれていた彼女の方かもしれない。と、そんな風に言い聞かせて、その日の僕は床に就いた。
しかし。翌日以降、女はことある毎に僕の前に姿を現すようになった。
夜道を歩いていてふと振り返るとそこに居たり、駅のホームで電車を待っている時、視線を感じて顔を上げると、向かいのホームからこちらを見ていたり、部屋から窓の外を見ると、やっぱり電柱の傍に立ち尽くしていたりするのである。
偶然で片付けられる状況ではないと思う。のだが、僕のようなドブ色のつまらない男をストーキングなどして、何の得があるというのか、謎だった。
もしかして、実在する人間じゃないんじゃ?
そんな疑念が、僕の中に湧き出していた。
そのくらい女には生気というものがなかったのだ。
整った顔はいつも完全な無表情で、人形のよう……そう、ビスクドールという奴を思わせる造形と雰囲気だった。
事実あれが人間でないとしたら、僕の精神状態もいよいよ危ない。着実に“症状が進行している”とみて間違いないだろう。
ふうと細く長い息を吐き、首を曲げて半分だけ後ろを振り返ってから、素早く前に向き直る。
――今日も今日とて、尾けられている。
本当は休日をいいことに家から一歩も出ない心積もりでいたのだが、昼過ぎに空腹を感じ冷蔵庫を開けてみると空っぽで、仕方なく買い出しに出た結果がこれである。
最寄りのコンビニに向かうつもりで歩いていた僕は、しかし途中で考え直し、行き先を変更することにした。
それから徒歩十分かけて、行きつけの定食屋へとたどり着く。ここで昼をすませるついでに、女を観察しようと思いついたのだ。
あの女は果たして、店の中までついてくるのか。ついてきた場合、店の人は女をどう扱うのか。
完全に無視をするようであれば、
女が僕以外に見えていない
という推論が、いよいよ現実味を帯びてくる。逆にもしも店員が普通に女に接するようならば、警察への相談を検討しよう。そう決意して店に足を踏み入れたものの、女は中まで追ってくることはしなかった。代わりに、店から少し離れた歩道の端に立って、窓際の席に座る僕をじっと見詰めている。
どうにか女を視界に入れないように注意して、広げたメニューを睨みつける僕の姿は、傍からは「如何に安い金額で効率よく腹を満たせるかに腐心する貧乏学生」のようにでも見えたかもしれないが、実際の所、食欲なんてものは女のせいですっかり減退していた。
―――がらり。
店の引き戸が開かれる音がした。
一瞬、ついにあの女が入ってきたのではないかと思い、素早く入り口へ目を向ける。
しかしそこに立っていたのは、想定外の人物だった。
如月葵である。
この店へ来るのは初めてなのだろうか、きょろと物珍しそうに店内を見渡しつつ、奥へ進んでこようとしていた。
「如月さん」
素知らぬふりをするのも
「シグマ君じゃないか」
偶然だね、などと言いながら近付いてきて、当たり前のように、僕の向かいにするりと腰を下ろしてしまった。
一見何でもないような行動だが、自分には到底真似出来ないな、と思う。僕なら店で知り合いを見つけても、同席するべきなのか、でも話すことないし相手も鬱陶しく思うかもしれないし、かといって挨拶だけして離れた場所に座るのも避けているみたいで感じが悪いのでは云々かんぬん……と、考えすぎてどこにも行けず右往左往してしまうことだろう。
これがコミュ力の差というやつだろうか。
「うん、これは美味しい。卵がとろとろだ」
暫くして運ばれてきた親子丼を頬張りながら、如月は幸福そうな顔を見せた。或いはこの人には食道楽の気があるのかもしれない。
「こんな穴場スポットがあったなんて、知らなかったな」
閑散とした店内を見回して如月は呟く。やはり彼は、この店は初めてらしい。
聞いてみると、たまたまこの辺りに用があって、「帰りに通りかかった定食屋にぶらりと足を踏み入れてみたら君が居た」とのことだった。
こんなスーパーとコンビニと花屋とパン屋しかないような住宅街に何の用があったのかと少し不思議には思ったが、わざわざ詮索する程の事でも無い。
僕らの他に客は、少し離れた席でうどんを啜っている作業着姿のおじさん一人だけだった。おじさんが如月を見てぴたりと二秒箸を止めたのは、和服姿が珍しかったからなのか、顔面偏差値の高さに驚いたからなのか、全く別の理由からなのか。
「シグマ君、食べないのかい?」
と。ピーマンを前にした子供のように箸が進んでいない僕を見て、如月が首を傾げる。
「ああ、いえ……」オススメを聞かれて「親子丼」と答えた成り行き上自分も同じものを注文していたが、やはり中々喉を通らなかった。
なんせ、あの女はまだ同じ場所に棒立ちでこちらを見つめているのである。
「如月さん、あの、外に立ってる女性のことなんですけど、」
暫くして僕は、女からのプレッシャーに耐えかね、切り出した。
果たして如月にあの女の姿が見えるのかどうか、確かめてみたい気持ちもあった。
「どれ?」如月は窓の外に向けた視線を彷徨わせながら、問い返してくる。
「あれですよ、あの、おかっぱ頭の若い女性」
「……犬の散歩をしてるおじいさんしか居ないけど?」
長閑な町だね、などと暢気なことを言っている如月に、僕は小さく息を吐いた。
「如月さんって、視力いくつですか?」
「四・〇だけど」
「わあすごい、どこかの民族のようですね」
四・〇の如月に見えなくて、〇・六の僕に見えるというのは、つまりそういうことだ。
「一体なんなんだい?」如月は窓から僕へ視線を戻すと、
「幽霊――は、存在しないんだっけ?」
何処か含みのある口調で言って、テーブルの上で手を組み、こちらへ身を乗り出してくる。
「それじゃあ、幻覚でも見えているのかな?」
その問いかけに、僕はぶんぶんと首を横に振った。
「い、いや、ちょっと疲れてて……気のせいですよ。気のせい」
この人に女のことを話してしまったのは、早計だった。
窓外の存在を必死で頭から振り払いながら、誤魔化すように口に放り込んだ鶏肉を無理矢理に飲み込む。味はよく分からなかった。
「へえ、そうなんだ」
如月が妙に平坦なトーンの相槌を打つ。
一瞬どきりとさせられたが、杞憂だったようで、それ以上女について追求されることはなかった。
黙って親子丼の残りを食べ始めた如月は、直接口をつけて米の最後の一粒まで掻き込むという意外に豪快な所作で丼をしっかり空にすると、
「じゃあシグマ君、移動しようか」
「え、どこへですか?」
夕飯の買い物だけしてさっさと帰る気満々だったのだが。と、戸惑う僕に向かって、如月は広げたメニュー表をずいと突きつけてくる。
「この店には、デザートがない。」
例えば殺人事件のおきた現場が“密室”であることに気付いてしまった刑事みたいな真面目くさった顔をして、如月はそう言ったのだった。