第190話 付録1 劇中内電話会話内容 ~主人公と会長~

文字数 2,231文字

 お疲れ様です
 いつもの通り、電話会話。三人称でないと表現できない会話文がありましたので、
 別ページとして表記しておきます。
 先の幕間講義を意識しながら読んで頂けると、いかにジョハリの窓が、お互いの認識がかみ合ってないのかはっきりと分かるかと思います。

 それでは劇中と合わせてお楽しみくださいませ。

 ―――――――――――――以下電話会話――――――――――――――

 『……もしもし。休みの日にどうしたの?』
 鳴り止まない電話機を手にしてた愛さんが意を決したように電話機を耳に当てる。
 (『やっと繋がった! 今日は電話に出てくれたんだな。ありがとう』)
 『電話取ってくれたって……何か用事があったんだよね。お礼を言うのはその後だって』
 けど、名前を口にしてくれないから何となく嫌な予感はするけど、電話の相手が誰かを確定できないんだよ。
 (『用事って……岡本さん。俺にそんな冷たくしないで欲しい。それにいつの間にかどうして名前で呼んでくれなくなったんだ?』)
 電話口の相手が何を言ってるのか判然としないけど、ため息をついたり電話に出るのをためらったりしてる姿を見ると、どう考えても親友の蒼さんや空木くんじゃないのは確かなんだよ。
 『……どうしてって……特に用事が無いなら今、出先で人と会っているから切っても良い?』
 (『出先で人と会ってるって、まさか今日も空木とデートなのか?!』)
 それだけにとどまらず、こんなに冷たくする愛さんを見るのは初めてなんだよ。これだけ冷たくしても割とはっきりと露骨に態度に出してるにもかかわらず、わたしの予想通りならそれでも愛さんを諦める気のなさそうな会長さん。本当に好きだからこそなのかも知れないけど、こんなの世間一般だとストーカーと同じ扱いなんだよ。
 それにも関わらず、しっかりと空木くんと話し合って。時には蒼さんや友達も交えて対処してるんだから、やっぱり今この場だけを切り取ったら冷たいかも知れないけど、そこに至るまでのいきさつを思えば、蒼さんやお友達も含めてこんなにも優しい恋人同士、カップルなんていないんだよ。
 だから愛さんのこの態度を見て、電話口の相手が誰なのかはある程度絞れたんだよ。
 『優希君優希君って、私が誰と会おうが会長には何の関係もないじゃないっ! 相手、びっくりさせているからもう切る――』
 その中で今、一番タイミングの悪い人。会長さん。
 (『――待ってくれ! 今週の25日、金曜日統括会の後に、俺に時間がどうしても欲しいんだ。その時は空木を抜きにした二人だけで話がしたい』)
 しかも

電話口で愛さん相手に言葉悪く大声を出してるのか、愛さんの電話を握る手に力が入ってるのがわたしから見ても分かる。
「……」
 だから愛さんに少しでも安心して欲しかったわたしはランチボックスを横に失礼して、愛さんのもう片方の手を繋ぐ。
 『……今はすぐ隣に私を心配してくれる人がいるから、すぐの返事なんて出来ない。だから少し考えさせて欲しいの』
 その甲斐あったからか、愛さんの肩から力が抜ける。
 (『人と会うのまで空木に相談、了承を得ないといけないのか? 何で自分は色んな女と遊びまくってるのに岡本さんだけは束縛しようと――』)
 『わざわざ私に優希君の悪口を言うために電話して来たのなら、金曜日の話なんて断るからもうナシで良い?』
 (『違う! そんなつもりじゃなかった。だから25日の金曜日、統括会の後俺と二人だけで会って欲しい! 頼むっ!』)
 一時期、男の人の好意に対して全く対処も出来ていなくて、勝手に男の人の好感度まで上げていた愛さん。なのに今、この電話に限って言えばかなりしっかりと対応出来るようになっていると思うんだよ。
 本当に成長してるんだなって、これなら空木くんも安心だろうなって思う反面、どうしてもわたしの勝手な心が寂しく郷愁の風が吹くんだよ。
 『……ごめんだけれど、優希君と相談して決めるから、待って欲しいってさっきも言ったよ』
 (『分かった。今日の所は空木とのデート中だって事で引くけど、25日の金曜日には俺ともデートをしてもらうからな』)
 『悪いけれど、会長とデートなんて優希君に対して浮気になりそうな事なんて出来ないからね』
 しかもどう言う会話の流れなのか、これだけ愛さんがハッキリと空木くんの名前を出した上で、ほとんどお断りをしてるのにまだ愛さんをデートに誘ってるっぽい会長さん。
 これじゃあ教頭先生の仰る通り、愛さんに対しては余裕が無いのは分かるけど、会長としても一人の男の子としても周りが見えてないと言うか視野が無さすぎるんだよ。【154話‐B】
 ……ひょっとしたらストーカーの人の心理状態ってこんな感じなのかな。もちろんだからって許容されるなんて事は無いけど、犯罪心理学としてのとっかかりにはなる気はするんだよ。
 (『浮気って……それで浮気なら、空木の野郎はいくら浮気しても――』)
 『そんな話聞きたくないからもう切るね』
 (『あ?! ち、違うんだ岡本さ――』)
 結局会長さんが再び愛さんの気に障る事を言ったのか、そのまま電話を切ってしまった愛さん。せっかくの愛さんとのデートの上、この後は愛さんも気にしてくれてた児童との課外実習なのに、なんだか会長さんのせいで愛さんが疲れてしまった気がするんだよ。

 ―――――――――――――――以上電話会話――――――――――――――――
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