第11話 発展した…のか?

文字数 689文字

あれから、私は翔を待つことなく帰った。
そして今3日経った。はあ、翔に会いたい。私どうなってしまったんだろう。でもこの気持ちは変えられないから、意を決して連絡しようかな。
『今日の夜少し会えませんか?22:00に〇〇公園で待ってます。』
送ってしまった…でも、任務は果たさないと、どうしよう、
すぐに連絡がかえってきた。
『会いたい。絶対行く!!』
今、21:00。約束の時間までまだある。でも、この空白の時間が、怖い。だから私はもう家を出る。いつもの包丁は鞄に入れたままで。

「あ、おまたせ。」
翔は22:00になる5分前に来た。
「待ってないので、大丈夫です。」
頑張れ、私。言うんだ。
「お話があって……。」
「もしかして返事?」
「は、はい。」
翔は私の方を向くが私は緊張で目を合わせられない。
「す、好きなんて言われたの初めてで戸惑いましたが、嬉しかったです。ありがとうございます。」
「うん。」
「……。」
声を出せない。
私が初めて愛した人。さようなら。翔を刺したら私も死のう。
椅子から立ち上がる。いつもの小刀を持って。
でも体が動かない。手足は震え、目には涙が浮かぶ。でも、でも、それでも私は…
「ごめんなさいっ…」
「おい!」
刺そうと思った瞬間小刀は翔の手によって止められた。
「何のつもり……。」
私の目からためていた涙が流れ落た。沈黙の中、私の手の小刀が地面に落ちる音だけが聞こえる。
私の口からこぼれたものは
「好きなのに…。」
そんな一言だった。
それから私は、自分の正体を明かした。なにも考えずに私は話した。
「それでも私を好きでいてくれる?」
「それでも、俺はさえが好きだ。」
夜の公園で、二人の唇は重なった。
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登場人物紹介

菊川さえ

トールトのスパイ。竹下翔を殺すように命令される。完璧主義で何でもできる。恋愛に興味がない。

詐欺師。菊川さえを騙そうとする。明るい性格で、誰とでも仲良くできる。

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