セイヨコに出没する地雷系女子
文字数 1,234文字
行き場をなくした俺らが、スーツケースお供にたむろするセイヨコ。
世間は俺らのことを“セイヨコキッズ”とかいって、おちゃらけたあだ名をつけて呼ぶ。
俺らのことをニュースで取り上げる大人たちは、真剣な顔で俺らの惨状を日本全国に伝えようとする。
ニュースとは打って変わって俺らにガン無視して近づこうともしない大人からすれば、俺らは非行少年そのものだ。
堕落し荒廃していて、生きることに消極的で、皆、希望を何かに塗りつぶされていて、パキったり、売りやったり、他ヤクザかなんかから“お仕事”を任せられたりして、カスみたいな人生を、どす黒く先の見えない青春を、タバコみたいに消費してる。
セイヨコにやってくる男子の服装は人それぞれだが、女子は大体わかる。
ピンクと黒。フリルにたくさんのリボン。派手な髪色。
“地雷系”というやつである。
見た目はかわいらしいが、中身はストーカー気質で病んでしまっている。
そのため、リスカやODなど、自傷行為をしたり、アイドルグループに貢いだり、攻撃的で誰かを傷つけるヤツもいるとか……。
俺は、運が悪い。
悪くなけりゃ、家を飛び出して今頃こんな寒空の下、他のカスどもと傷の舐め合いなどしていない。
ただ運の悪さを引き寄せたのは俺だ。
俺らが例に漏れずたむろって酒を呑んだり、トんだりしていると。
アイドルのような見た目の地雷系女子が、こちらへ向かって歩いてくる。
ただ目線はまっすぐ前を向いていて、俺らにはちゃんちゃら興味がないようだ。
だからこそ、声をかけてみたくなった。
生ぬるい不幸に、引きずりこんでやりたかった。
俺の倫理観は中学生の頃から崩壊していた。
「やぁやぁ、キミ、かわいいね」
無視。
当然だった。
コツコツと、女の子が履いているブーツの音が寂しく遠ざかっていく。
ところで、脇腹が痛い。
チクチクとか、ツン、とかじゃない。
滅茶苦茶痛い。
痛いところを無意識的に押さえていた俺は、軽く叫んだ。
「どしたぁ?」
焼酎一升瓶でトぼうとしてるのか、顔面赤ら顔のエルシーが呑気に訊いてくる。
「刺されたッーー」
「はぁ? 誰に?」
おかしい。
俺が声かけした地雷少女がいない。
曲がり角なんてないのに。
まっすぐ進むしか、ないのに。
猛ダッシュしても後ろ姿は目視できるはず。
俺はたまらず、その場にゆっくりとしゃがみ込んだ。
よかったな、シーワイ。
路上に横たわり微動だにしないシーワイは、短いスカートから見える下着を晒しながら、無事トべたようだ。
俺もトびたい。
ジャケットとTシャツを恐る恐るまくると、脇腹から赤黒い鮮血がどろりと溢れ出す。
「おいおい大丈夫かよ。救急車呼ぶからよ、ちょっと待ってろ」
身体から血を流して悶える俺を助けてくれるのは、俺と同じくたむろしてる仲間のうちの一人だ。
そいつは応急手当てまでしてくれる。
やはり、ここが俺の居場所なのだ。
路上の冷たさが、頬に伝わる。
俺を受け入れてくれるところなど、どこにもない。
世間は俺らのことを“セイヨコキッズ”とかいって、おちゃらけたあだ名をつけて呼ぶ。
俺らのことをニュースで取り上げる大人たちは、真剣な顔で俺らの惨状を日本全国に伝えようとする。
ニュースとは打って変わって俺らにガン無視して近づこうともしない大人からすれば、俺らは非行少年そのものだ。
堕落し荒廃していて、生きることに消極的で、皆、希望を何かに塗りつぶされていて、パキったり、売りやったり、他ヤクザかなんかから“お仕事”を任せられたりして、カスみたいな人生を、どす黒く先の見えない青春を、タバコみたいに消費してる。
セイヨコにやってくる男子の服装は人それぞれだが、女子は大体わかる。
ピンクと黒。フリルにたくさんのリボン。派手な髪色。
“地雷系”というやつである。
見た目はかわいらしいが、中身はストーカー気質で病んでしまっている。
そのため、リスカやODなど、自傷行為をしたり、アイドルグループに貢いだり、攻撃的で誰かを傷つけるヤツもいるとか……。
俺は、運が悪い。
悪くなけりゃ、家を飛び出して今頃こんな寒空の下、他のカスどもと傷の舐め合いなどしていない。
ただ運の悪さを引き寄せたのは俺だ。
俺らが例に漏れずたむろって酒を呑んだり、トんだりしていると。
アイドルのような見た目の地雷系女子が、こちらへ向かって歩いてくる。
ただ目線はまっすぐ前を向いていて、俺らにはちゃんちゃら興味がないようだ。
だからこそ、声をかけてみたくなった。
生ぬるい不幸に、引きずりこんでやりたかった。
俺の倫理観は中学生の頃から崩壊していた。
「やぁやぁ、キミ、かわいいね」
無視。
当然だった。
コツコツと、女の子が履いているブーツの音が寂しく遠ざかっていく。
ところで、脇腹が痛い。
チクチクとか、ツン、とかじゃない。
滅茶苦茶痛い。
痛いところを無意識的に押さえていた俺は、軽く叫んだ。
「どしたぁ?」
焼酎一升瓶でトぼうとしてるのか、顔面赤ら顔のエルシーが呑気に訊いてくる。
「刺されたッーー」
「はぁ? 誰に?」
おかしい。
俺が声かけした地雷少女がいない。
曲がり角なんてないのに。
まっすぐ進むしか、ないのに。
猛ダッシュしても後ろ姿は目視できるはず。
俺はたまらず、その場にゆっくりとしゃがみ込んだ。
よかったな、シーワイ。
路上に横たわり微動だにしないシーワイは、短いスカートから見える下着を晒しながら、無事トべたようだ。
俺もトびたい。
ジャケットとTシャツを恐る恐るまくると、脇腹から赤黒い鮮血がどろりと溢れ出す。
「おいおい大丈夫かよ。救急車呼ぶからよ、ちょっと待ってろ」
身体から血を流して悶える俺を助けてくれるのは、俺と同じくたむろしてる仲間のうちの一人だ。
そいつは応急手当てまでしてくれる。
やはり、ここが俺の居場所なのだ。
路上の冷たさが、頬に伝わる。
俺を受け入れてくれるところなど、どこにもない。