半額祭りで食べ物ぱーてぃ

文字数 2,322文字

「こちら、しまっちゃわないキャット。食糧の確保、完了しました」
 スナドリネコの毛衣を着た者は、大量の食糧を抱えながら言った。すると、その報告をサクの耳が捉え、黒い猫耳の房毛はふわりと揺れた。

 サクは、猫耳を僅かに伏せると目を瞑り、そのまま深い呼吸を繰り返した。すると、調理場のテーブルには、しまっちゃわないキャットが集めた食糧が出現し、それらを集めた者はテーブルの横に現れる。

「しまっちゃわないキャット、帰還完了!」
 サクは、目を開いて立ち上がり、声の主の前まで移動した。

「お帰りなさい、リョウちゃん。今日も大漁だったみたいで良かったよ」
 サクは笑顔を浮かべ、リョウは自慢げに片目を瞑った。

「この位、朝飯前さね。あ、朝飯は、秋刀魚の炊き込み御飯が良い。あと、蜆の味噌汁に鮪のステーキ。烏賊のマリネ」
 リョウは食材を調理台に出し、サクの目を見て微笑する。一方、サクは調理台へ向かい、リョウが並べた食材をざっと眺めた。

「じゃ、仕込んでおくね。蜆は砂抜きしなきゃだし、秋刀魚は焼いて解して骨を取らなきゃだし」
 サクは、そう言うなり蜆の入ったパックを手に取った。一方、リョウは持ち帰った食糧を、保管すべき場所に手際良く仕舞い始める。冷蔵保存が必要な食糧は冷蔵庫へ、冷凍保存が必要な食糧は冷凍庫へ、根菜類は床下収納へ、お菓子の類は棚の中へ仕舞われた。そうして、仕舞わなかった食糧だけがテーブルの上に残り、その残った食糧全てに半額シールが貼られていた。

 半額シールは、ソースカツ丼や天丼等の弁当、チキンカツや烏賊天等の総菜、ケーキやシュークリーム等のデザート……どれもこれも、期限間近の食糧に貼られていた。その量は一人で食べるにはあまりに多く、サクと二人で食べるにも多かった。特にデザートは、ホールケーキを含め様々な種類の洋菓子が並び、ちょっとしたパーティーを行える勢いだった。

「こちら、しまっちゃわないキャット。今から半額の宴を開始します」
 リョウは、半額弁当に手を伸ばした。半額弁当にはプラスチックのスプーンが付属しており、リョウはそれを使って海鮮炒飯を口に運んだ。リョウが炒飯を半分程食べた頃、ユキが目を輝かせながら調理場にやってきた。ユキは、リョウに礼を言ってから着席し、さり気なくサクが用意した箸でカツ丼を食べ始めた。

 ユキは揚げ物を中心に食事を進め、彼女がカツ丼を平らげたところでサクが椅子に座った。サクは、天丼に手を伸ばすとそれを味わって食べ、食べ終えたところで秋刀魚の焼き加減を確認しに向かった。

 そうこうしている内に白衣を着た少女が調理場に現れ、テーブルに並ぶ食べ物を見た。彼女は、その中から焼きカレーに目を付けるとスプーンを取りに行き、コップに水を注いでから着席した。

「御相伴にあずかるよ」
 白衣の少女はリョウに向かって言い、焼きカレーを手に取った。リョウと言えば咀嚼しながら親指を上げ、プラスチックのスプーンでデザートを食べ始めた。

 調理場に居る者達はそれぞれのペースで食事を進め、開いた容器はサクが手早く片付けた。そうしてテーブルの上からは弁当が無くなり、デザートばかりが甘い香りを漂わせながら鎮座していた。そんな中、白衣を着た者は早々に席をたち、冷凍庫から濃い緑茶を取り出して調理場を去った。

 残された者達は談笑しながらケーキやシュークリームを食べていたが、その和やかな空気を壊す生物が出現した。

「出動の時間だ」
 謎の生物は、そう言うなりユキに毛衣入りの鞄を差し出した。ユキが差し出された鞄に触れると同時に、毛衣はユキの体に装備され、それを見計らったかの様に謎の生物が光り始めた。

 謎の生物の光はユキとリョウ体を包み込み、その光が消えた時には姿も消していた。調理場に一人残されたサクは溜め息を吐き、机上の食べ物をぼんやりと眺めた。

 ユキとリョウは、謎の生物と共に転移していた。彼女達は暗い海岸に立ち、荒れ狂う海を眺めていた。その瞳は僅かな光を反射して光り、海で暴れている大蛸の姿を捕らえている。

 リョウは、海に飛び込むと大蛸の元へ向かい、蛸の足に絡みつかれながらも仕事をこなした。ユキと言えば、砂浜から尻尾を伸ばしてリョウをサポートし、リョウが光る石を取った瞬間、仲間を海岸へと引き寄せた。

 すべきことを終えた二人は調理場へ戻され、そこで汚れた毛衣を脱いで手入れを始めた。彼女達は、それを終えた後で浴場へ向かい、サクもユキに誘われて一緒に体を洗った。

 人気の無くなった調理場には、灰色の猫耳をした少女が現れた。少女は、テーブルのシュークリームを掴んでは口に運び、あっという間に完食してしまう。少女は、食べ残されたケーキを掴んでは数口で平らげ、フィルムに付いたクリームも丁寧に舐めた。少女は、空き容器をパズルよろしく重ねては嵩を減らし、隙間にフィルムを詰めては更なるケーキを口に運んだ。

 少女は、残っていたケーキの全てを食べ終えると容器の塊をゴミ箱に捨てた。彼女は、暫く首を傾げて考えた後でスプーンを用意し、果物のたっぷり使われたアラモードを食べ始める。プリンは、その他にも様々な種類が残されており、少女は嵩のあるものから順に食べた。そして、食べ終えては空の容器に空の容器を重ねて行き、薄い蓋は器用に隙間を埋めていた。

 少女は、プリン容器の塊もゴミ箱に捨て、スプーンを洗うと足早に調理場を立ち去った。この時、テーブルの上にはもちもちした和菓子ばかりが残っており、何故か落雁までも残されている。

 少女が去ってから暫くして、カルラが警戒しながら調理場に現れた。彼女は、みたらし団子や磯部餅をパッケージ毎抱え、足早に調理場から立ち去った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

櫻庭 朔羅
  装備「黒猫の毛衣」
  能力「でぃめんしょんねこまち」
  料理が旨い
 胸元つるんぺたん

 雪村 雪奈
  装備「ユキヒョウの毛衣」
  能力「いんふぃにてぃしっぽもふもふ」
  大食らい
 胸元たゆんたゆん

唐須磨 華瑠邏
  装備「カラカルの毛衣」
  能力「えぶりほえあおみみつんつん」
  栄養源はお菓子とカップめん
 ぽっちゃりめの低身長

狩野 涼
  装備「スナドリネコの毛衣」
  能力「それはひみつです」

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み