肉球によるサイレント機能と長い尻尾
文字数 1,114文字
「こちら、尻尾ハムハムキャット。潜入に成功しました」
静かな夜、ユキヒョウの毛衣 を纏った者が小さな声で伝えた。その体躯は細くしなやかで、長い尻尾をゆっくりと揺らしている。
尻尾ハムハムキャットは、冷え切った暗い家の中を音もなく歩いた。モフモフした脚は足音を肉球で吸収し、床の軋みさえも響かせない。
「こちら、尻尾ハムハムキャット。保護対象を発見しました」
人間の目には確認出来ぬ暗闇の中、尻尾ハムハムキャットは動きもしない幼児を見つけた。しかし、幼児に近付くことはせず、白い耳を様々な方向に動かしている。
「周囲に気配なし。今から帰還します」
その瞬間、毛衣の尻尾が伸び、倒れている幼児を包み込んだ。白い尻尾は、物理法則を無視し、幼児の鼻以外をモフッと覆った。
その後、尻尾ハムハムキャットは音もなく家を出、軽い身のこなしで夜の住宅街を駆けた。
「尻尾ハムハムキャット、帰還しました!」
灯りに照らされたユキヒョウの毛衣はキラキラと輝き、幼児を包み込んでいる尻尾は歪な形のまま地面に付いた。
「お疲れ様」
報告を受けた者は簡易ベッドを尻尾の塊近くまで転がしていく。簡易ベッドには体を固定するベルトがあり、尻尾から解放された幼児はベルトでベッドに固定された。
「この子は、暫く眠っていて貰う」
発言者は、簡易ベッドを転がし、別の部屋まで運んだ。そして、その部屋に鍵を掛けると、尻尾ハムハムキャットに向き直る。
この時、毛衣の尻尾はユキヒョウらしい細長いものに戻っていた。
「ご飯にする? 毛繕いする?」
「ご飯。さくらご飯にバターで焼いたサーモン。ふかふか卵焼きに若芽たっぷりの味噌汁」
尻尾ハムハムキャットは、舌なめずりをしてみせた。それに対して聞き手は頷き、桃色のエプロンを装着する。
「ご飯とお味噌汁は常備してあるから、サーモンと卵焼き……まあ、十分あれば用意出来る」
それを聞いた者は頬を紅潮させ、エプロンをした者に抱きついた。
「その間に毛衣の手入れをしておくこと。あと、うがい手洗いも」
エプロン姿の者は、尻尾ハムハムキャットからするりと体を抜き調理場へ向かった。一方、尻尾ハムハムキャットは毛衣を脱ぎ、ブラシで手入れする。
手入れの済んだ毛衣はランドセルの形に似た鞄に仕舞われ、その鞄は蓋を閉じると何処かに消えた。毛衣を脱いだ者は洗面所へ向かい、言い付け通りにうがい手洗いを済ませる。
調理場からは、バターの匂いが漂い、それへ導かれる様に空腹の者は廊下を進んだ。調理場では、サーモンや卵が美味しく焼かれ、さくらご飯や味噌汁は既に配膳が済んでいた。
この為、そのメニューを注文した者は飛び跳ねる様に着席し、味噌汁を幸せそうに飲み始める。
静かな夜、ユキヒョウの
尻尾ハムハムキャットは、冷え切った暗い家の中を音もなく歩いた。モフモフした脚は足音を肉球で吸収し、床の軋みさえも響かせない。
「こちら、尻尾ハムハムキャット。保護対象を発見しました」
人間の目には確認出来ぬ暗闇の中、尻尾ハムハムキャットは動きもしない幼児を見つけた。しかし、幼児に近付くことはせず、白い耳を様々な方向に動かしている。
「周囲に気配なし。今から帰還します」
その瞬間、毛衣の尻尾が伸び、倒れている幼児を包み込んだ。白い尻尾は、物理法則を無視し、幼児の鼻以外をモフッと覆った。
その後、尻尾ハムハムキャットは音もなく家を出、軽い身のこなしで夜の住宅街を駆けた。
「尻尾ハムハムキャット、帰還しました!」
灯りに照らされたユキヒョウの毛衣はキラキラと輝き、幼児を包み込んでいる尻尾は歪な形のまま地面に付いた。
「お疲れ様」
報告を受けた者は簡易ベッドを尻尾の塊近くまで転がしていく。簡易ベッドには体を固定するベルトがあり、尻尾から解放された幼児はベルトでベッドに固定された。
「この子は、暫く眠っていて貰う」
発言者は、簡易ベッドを転がし、別の部屋まで運んだ。そして、その部屋に鍵を掛けると、尻尾ハムハムキャットに向き直る。
この時、毛衣の尻尾はユキヒョウらしい細長いものに戻っていた。
「ご飯にする? 毛繕いする?」
「ご飯。さくらご飯にバターで焼いたサーモン。ふかふか卵焼きに若芽たっぷりの味噌汁」
尻尾ハムハムキャットは、舌なめずりをしてみせた。それに対して聞き手は頷き、桃色のエプロンを装着する。
「ご飯とお味噌汁は常備してあるから、サーモンと卵焼き……まあ、十分あれば用意出来る」
それを聞いた者は頬を紅潮させ、エプロンをした者に抱きついた。
「その間に毛衣の手入れをしておくこと。あと、うがい手洗いも」
エプロン姿の者は、尻尾ハムハムキャットからするりと体を抜き調理場へ向かった。一方、尻尾ハムハムキャットは毛衣を脱ぎ、ブラシで手入れする。
手入れの済んだ毛衣はランドセルの形に似た鞄に仕舞われ、その鞄は蓋を閉じると何処かに消えた。毛衣を脱いだ者は洗面所へ向かい、言い付け通りにうがい手洗いを済ませる。
調理場からは、バターの匂いが漂い、それへ導かれる様に空腹の者は廊下を進んだ。調理場では、サーモンや卵が美味しく焼かれ、さくらご飯や味噌汁は既に配膳が済んでいた。
この為、そのメニューを注文した者は飛び跳ねる様に着席し、味噌汁を幸せそうに飲み始める。