カリカリ飯とトキソ・改
文字数 1,549文字
翌朝、調理場はにぎやかだった。ガラス容器にはシリアルが盛られ、それは少女らの手によって白い液体に浸される。
少女らは、スプーンでシリアルを掬っては口に運び、サクは作りたてのスクランブルエッグを皿に乗せた。すると、シリアルを掬っていたスプーンは柔らかなスクランブルエッグに沈み、冷めない内に白い陶器の底が露わになる。
サクは、サラダに茹であがったウィンナーを乗せ、それも直ぐにテーブルに置いた。ウィンナーは、器用に葉野菜に包まれながら少女らの胃に収まり、細々としたコーンや豆はスプーンで掬われながら食される。
食事を終えた少女らは、調理場を出、入れ替わりに入ってきた少女に席を譲る。何度かの入れ替わりがあった後で調理場は静かになり、サクは積み重ねられた食器を洗い始めた。
少女らが使った食器を洗い終えた後、サクは着席して食事を始めた。彼女の朝食は洗い物を済ませてから作られており、どれもこれも温かだった。
炊きたての白米は艶やかで、温めなおされた味噌汁は具が柔らかだった。きちんと巻かれた玉子焼きにはウィンナーが混ぜ込まれ、野菜炒めにもウィンナーが使われている。
サクは、順番に料理へ箸をつけ、良く咀嚼してから飲み込んでいた。温かな料理を食べるサクの表情は穏やかで、箸の使い方は上品だった。
食後、サクは緑茶を淹れると一口飲み、そのタイミングでユキが調理場に現れる。
「おはよ、サクちゃん」
「お早う、ユキちゃん」
挨拶を終えたユキは、冷蔵庫から牛乳パックを取り出した。それから、丼にグラノーラをたっぷり入れ、そこに牛乳を注いだ。
ユキは、グラノーラが柔らかくなる前に完食し、丼に残った牛乳を飲み干した。そうしてから、コンロにかけられたままの鍋を覗きこみ、そこに入ったままの茹で玉子を取り出した。
ユキは、茹で玉子の殻を剥くとそのままかじりつき、殻を丼に捨てては新しい茹で玉子を取りにいった。サクと言えばその様子を無言で眺めており、時折緑茶を飲んでは暖かな息を吐いた。
ユキは、満足したところで丼に溜まった殻をゴミ箱に捨て、素早く丼を洗って背伸びをした。サクも、使った食器を綺麗に洗い、二人は共に調理場を後にする。
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温度が管理された個室の中、幼児が簡易ベッドに固定されていた。仰臥姿勢を取らされている幼児の瞼は閉じられており、僅かに上下する胸から生きていることが分かる。
幼児の横には、顔をマスクで覆った者が立っていた。その者の髪は丁寧にキャップに仕舞い込まれ、両手には薄手のグローブがはめられている。
また、体は薄緑色のガウンに包まれ、肌の露出は目元や首回りに限られている。幼児の横には、銀色をした台も在り、その上には様々な器具が乗せられていた。
ガウンを着た者は、グローブ越しに器具を手に取った。そして、その器具を幼児の体に刺し、細胞や血液、サンプルと言うサンプルを採取していく。
採取されたサンプルは、温度管理が可能な容器に保管された。この時、幼児の体のあちこちから出血していたが、術者がそれを止めようとはしなかった。
術者は、幼児に横臥姿勢を取らせ、首の後ろを切開した。切開部には、大きめのカプセルが埋め込まれ、それは皮膚を引っ張りながら押さえ込まれた。
術者は、幼児の首の後ろを摘まんだまま目を瞑り、独特の音を喉から発した。すると、切開した箇所はみるみる塞がり、その前に出血していた箇所も治っていた。
術者は新たなグローブを填め、保管容器を手に取った。それから、目覚めぬままの幼児に向かって言う。
「生きたいなら、トキソ・改に従え」
術者は、部屋のドアの前でマスクとキャップを外し、蓋付きのダストボックスに入れた。そうしてから術者はドアを開け、幼児に背を向けて部屋を去った。
少女らは、スプーンでシリアルを掬っては口に運び、サクは作りたてのスクランブルエッグを皿に乗せた。すると、シリアルを掬っていたスプーンは柔らかなスクランブルエッグに沈み、冷めない内に白い陶器の底が露わになる。
サクは、サラダに茹であがったウィンナーを乗せ、それも直ぐにテーブルに置いた。ウィンナーは、器用に葉野菜に包まれながら少女らの胃に収まり、細々としたコーンや豆はスプーンで掬われながら食される。
食事を終えた少女らは、調理場を出、入れ替わりに入ってきた少女に席を譲る。何度かの入れ替わりがあった後で調理場は静かになり、サクは積み重ねられた食器を洗い始めた。
少女らが使った食器を洗い終えた後、サクは着席して食事を始めた。彼女の朝食は洗い物を済ませてから作られており、どれもこれも温かだった。
炊きたての白米は艶やかで、温めなおされた味噌汁は具が柔らかだった。きちんと巻かれた玉子焼きにはウィンナーが混ぜ込まれ、野菜炒めにもウィンナーが使われている。
サクは、順番に料理へ箸をつけ、良く咀嚼してから飲み込んでいた。温かな料理を食べるサクの表情は穏やかで、箸の使い方は上品だった。
食後、サクは緑茶を淹れると一口飲み、そのタイミングでユキが調理場に現れる。
「おはよ、サクちゃん」
「お早う、ユキちゃん」
挨拶を終えたユキは、冷蔵庫から牛乳パックを取り出した。それから、丼にグラノーラをたっぷり入れ、そこに牛乳を注いだ。
ユキは、グラノーラが柔らかくなる前に完食し、丼に残った牛乳を飲み干した。そうしてから、コンロにかけられたままの鍋を覗きこみ、そこに入ったままの茹で玉子を取り出した。
ユキは、茹で玉子の殻を剥くとそのままかじりつき、殻を丼に捨てては新しい茹で玉子を取りにいった。サクと言えばその様子を無言で眺めており、時折緑茶を飲んでは暖かな息を吐いた。
ユキは、満足したところで丼に溜まった殻をゴミ箱に捨て、素早く丼を洗って背伸びをした。サクも、使った食器を綺麗に洗い、二人は共に調理場を後にする。
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温度が管理された個室の中、幼児が簡易ベッドに固定されていた。仰臥姿勢を取らされている幼児の瞼は閉じられており、僅かに上下する胸から生きていることが分かる。
幼児の横には、顔をマスクで覆った者が立っていた。その者の髪は丁寧にキャップに仕舞い込まれ、両手には薄手のグローブがはめられている。
また、体は薄緑色のガウンに包まれ、肌の露出は目元や首回りに限られている。幼児の横には、銀色をした台も在り、その上には様々な器具が乗せられていた。
ガウンを着た者は、グローブ越しに器具を手に取った。そして、その器具を幼児の体に刺し、細胞や血液、サンプルと言うサンプルを採取していく。
採取されたサンプルは、温度管理が可能な容器に保管された。この時、幼児の体のあちこちから出血していたが、術者がそれを止めようとはしなかった。
術者は、幼児に横臥姿勢を取らせ、首の後ろを切開した。切開部には、大きめのカプセルが埋め込まれ、それは皮膚を引っ張りながら押さえ込まれた。
術者は、幼児の首の後ろを摘まんだまま目を瞑り、独特の音を喉から発した。すると、切開した箇所はみるみる塞がり、その前に出血していた箇所も治っていた。
術者は新たなグローブを填め、保管容器を手に取った。それから、目覚めぬままの幼児に向かって言う。
「生きたいなら、トキソ・改に従え」
術者は、部屋のドアの前でマスクとキャップを外し、蓋付きのダストボックスに入れた。そうしてから術者はドアを開け、幼児に背を向けて部屋を去った。