少女は生きる術を渇望した。

文字数 955文字

 やせ細った幼子が居た。季節は冬だったが、その幼子の着る服は薄く、暖房の無い部屋に放置されていた。幼子は、寒さに麻痺してしまったのか震えることはなく、ただ無言で時を過ごした。

 幼子が一人ではなくなった時、漸く暖房の類はつけられた。しかし、一番暖かな場所に幼子が座ることは許されず、床の上に直に座って緩やかに暖かくなる空気を味わった。

 栄養をまともに与えられぬ幼子は、何時しか体を病み始めた。寒く乾燥した部屋で風邪をひき、その病は放置された。それどころか、咳が五月蠅いと罵倒され、居間から遠い風呂場に閉じ込められた。

 夏場でも涼しいその場所は、幼子の体力を奪っていった。幼子は、それでも声をあげず、ただ背中を丸めて咳き込み続けた。幼子は、小さな体で考えた。なるべく静かにする方法を。考えに考えた幼子は、小さな冷えた手で口を覆った。幼子は、口を覆ったまま咳を続け、何時しかその手は鮮血に染まった。

 それでも、幼子に救いの手は差し伸べられず、粗相をする度に罵倒され続けた。次第に幼子からは感情が失われ、命の灯火さえ失われそうになる。

 ある酷く暑い日のこと、幼子は閉め切られた部屋の中に居た。その部屋に飲み物は一切保管されておらず、幼子は暑さに耐えながら汗を流し続けた。幼子から汗が流れなくなった頃、漸く気温は下がり始めた。しかし、幼子の瞳孔は既に散大し始め、このままでいれば待つのは死だった。そんな死にかけの幼子の前に、目を光らせた謎の生物が舞い降りる。

「冷たい飲み物、欲しくはないか?」
 幼子は頷き、謎の生物を見た。

「ならば、契約せよ。さすれば、食うも飲むも困らぬ場所が与えられる」
 幼子は、契約の意味も分からぬままに頷いた。すると、幼子の体は光に包まれ、その頭部からは白い猫耳が飛び出した。その後、幼子は謎の生物の力によって転移し、空調設備の整った部屋で命を繋いだ。

 真っ当な栄養を与えられた幼子は、それまでの分を取り戻すかの様に飲み、食べた。そうして、幼子は感情を失ったままに栄養と知識を蓄え、知識を盾に無感情を誤魔化しながら生き続けた。

 その知識は、金を得るには持ってこいだった。また、細いままの指は器用で、これも金儲けに一役かった。しかし、幾ら年を経て人と関わり続けても、その顔に表情が戻ることは無かった。
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登場人物紹介

櫻庭 朔羅
  装備「黒猫の毛衣」
  能力「でぃめんしょんねこまち」
  料理が旨い
 胸元つるんぺたん

 雪村 雪奈
  装備「ユキヒョウの毛衣」
  能力「いんふぃにてぃしっぽもふもふ」
  大食らい
 胸元たゆんたゆん

唐須磨 華瑠邏
  装備「カラカルの毛衣」
  能力「えぶりほえあおみみつんつん」
  栄養源はお菓子とカップめん
 ぽっちゃりめの低身長

狩野 涼
  装備「スナドリネコの毛衣」
  能力「それはひみつです」

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