第34話

文字数 1,084文字

いつも通りに部署の人間が業務をこなしている
キーボードをカタカタと叩く音や
仕事の話をしているようで、実は互いにマウントを取り合っているだけのくだらない会話

どうでもいいことを
ただの時間暮らしの
くだらない連中だと思っていた


奴らよりもっと無能だったのは俺だった。



これまでがんばってきたことが否定されたような

いや違う
俺が自分自身でぶち壊して、破壊したんだ。
単なる自爆か・・・・


ん・・・・?

いつからだ・・・?

こんなふうになったのは、いつから俺は出来ない奴になったんだ・・・。


何を間違った?
俺は何をしくじった?





抜けていく魂の紐を手繰り寄せるように
失った自分を異空間の中で柊は自分を探していた。



微動だにせず、そこにただ置き物のように自分の席に同じ姿勢で座り続けていた柊に
せわしく動く会社の人たちは、柊の事を気に留める事もなかった。



お昼休憩を知らせるメロディーが車内に流れ、人が建物の外に流れ出す。
陽の光は強さを増しデスクの上のパソコンのモニターに強く反射した光が目に飛び込んできて柊はハッとした。




いや、俺は悪くない。

俺の平穏な日常に、あいつが現れてから全てが狂わされているんだ。


俺がこれまで築き上げたものを、容易にぶち壊すあの女が薄ら笑う・・・。
俺の全てを奪うように現れた疫病神・・・

あの女・・・・

あの女さえいなければ・・・




抑えきれないほどの怒りが込み上げてきた。
静まった部署内に重く鈍いドンという音が響いた。
柊は、デスクを拳で叩いて大きなため息をつくと、パラパラと積み重なった書類が地面に落ちた。


あぁ、何もかもが面倒臭い・・・。


いつだってそうだ

いつだって・・・俺は認められない。
俺はハズレクジばかり引かされる。




頭をもたげ、落ちた書類に目をやると田中里奈という文字が見えた。


・・・あいつが作った資料が、向坂さんが置いていった。




椅子に座ったまま脱力して手を伸ばした柊は、面倒くさそうに散らばった書類を拾い始めた。


「ゴミにぶち込んでやりてぇな・・・。
読む価値もないものに対して時間を割くなんてタイパなんて皆無だ。無意味だ。」


「これについて・・・読め?」
せせら笑いながら集めた書類に視線を移した



大きな振り子の鉄球が弧を描き柊の身体にぶつかって椅子から落ちそうに体勢が崩れるのを必死に踏ん張って膝が震えるのを感じた。
力の抜けた右手が衝撃から掴めなくなった紙が手の隙間からハラハラと落ち葉が落ちるように舞っていた。



「・・・どういうことだ?」

何か・・・が理解はできなかった。

けれど、すごい事はわかった。

頭ではわからないけれど、指先まで痺れるように身体が何かを感じていた。



・・・・一体なんなんだ?!














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