第36話 迷宮の魔物
文字数 2,097文字
シュワルツたちはユルゲンの追撃を躱して冥界の迷宮に入った。
暗い洞窟は天井が高く、上へ下へと道が伸びている、壁は肉壁を岩にしたようだ。
転がる琥珀石を集めて発光させて松明として進む。
行く当てがあるわけではなかった、出口として分かっているのは冥界神殿と天空の神殿だけだが行ったことなどあるはずはない。
とりあえずユルゲンのクルツ銃から逃れるために迷宮に入ったに過ぎない。
「さてさて、これからどうしましょうかねぇ」
「あんたが探している男はこの山のどこかに潜伏しているのだろう?」
「はい、皆さんのお仲間一人と行動を共にしているようです」
「その一人が魔王イーヴァン様なら冥界神殿近くに向かったはずだ」
「冥界とはいえ標高二千五百メートル付近にあるそうですねぇ」
「この迷宮を行けばたどり着けるものでしょうか?」
「道は分からないが、上へ登っていくしかないだろうな」
「外を登った方が早いけど、あの蟻と異世界人の魔法が怖いよ」
「魔法などではありませんよぉ、これは銃という武器です、知識があれば皆さんにも扱えます」
「そうなのか、異世界人だけが使える物だと思っていた」
「アラタさんのために持ってきたのですが、皆さんにも使っていただきたいと思います」
「いいのか?俺たちに渡してしまって」
「もう重くて限界です、いささか疲れました」
シュワルツは首を竦めて、両手をあげた。
「どこか広いところにでたら、皆さんで練習しましょう、ユルゲンさんも皆さんが撃ってきたらびっくりするでしょう」
「びっくりだけか?」
「時間稼ぎぐらいにはにはなりますかねぇ」
「そのアラタって奴がいればどうだ」
「天秤は我々に傾くでしょう」
「我々の利害の一致したところに希望はあるということだな」
「異世界に転移してまで私たちは一体何をしているのでしょうかねぇ」
「ああ、いかれてるぜ」
「どうにも私らしくありません」
埃と泥に塗れてしまった髪を、それでも櫛を入れて整えた。
迷宮の暗闇は枝分かれしているが、その直径が変わることはほとんどない。
何かに似ている、アラタは迷宮神殿が巨大なドラゴンの化石であった事実を知ってから気づいていた。
洞窟の成り立ちは人族や魔族の人工物、鍾乳洞などではない。
もっと小さな洞窟を見たことがある。
「マリッサ、ムトゥスを狙う魔獣がいるっていっていたよな」
「ええ、あの吸血蟻とは別の魔物で、もっと恐ろしいものだとイーヴァン様は言っていたわ」
「大口を持った巨大な魔物だったか、なぜムトゥスを狙うのかな」
「さあ、私にはさっぱり?」
マリッサはブレスガンのライトで迷宮の奥を照らして探る、枝分かれした先まで照らすことは出来ない、その先に大口を開けて魔物が待っているような錯覚に捕らわれそうになる。
「案外、魔物は俺たちの近くにいるかもしれないぞ」
「なっ、脅かさないでよ、アラタ!」
「脅しじゃない、この通路はそいつらの通り道じゃないのか」
「よくそんなこと思いつくわね、そう言われたらそうとしか思えなくなってくるわ」
パアアァァンッ ガガガガッ ギィアアアアッ
「!!」
迷宮の奥から発砲音が響いてくる、誰かが銃を撃っている。
「銃声だ!」
「あのユルゲンという奴かしら!」
「一人じゃない、同時に複数の発砲音がしたぞ」
「何と戦っているんだ?」
「どうするアラタ?」
「当然確かめるさ」
ブレスガンを散弾モードにして銃声の方向に向けて迷宮の肉壁を降りていく。
迷路を進んだ先でシュワルツたちは少し大きな広間にでた、神殿よりは小さな空間、神殿同様に中央に背骨が走り肋骨が空間を支えている。
「なんと明るい、昼間のようです」
「いったいこれはどうなっているんだ」
シュワルツたちが見上げた天井には直径一メートルにもなる赤い琥珀石が煌々と空間を照らしていた。
「あの白い梁はなんでしょうか?人工の物なのでしょうか、実に興味深い」
琥珀石が光を強めると同時に周囲の空気が渦を巻き始める、見た光景だ。
「何が始まったんだ」
「これはあの時の!?」
天井から真下に向けて渦が伸びる、渦の中央に赤い光が奔り地についた瞬間、光が激しい音と共に弾けた。
「うわっ」
チッチが尻餅をついた、光が弾けた後には再び暗闇が戻っていた。
「なんだったんだ」
「おい、なんかあるぞ」
渦の中央だった場所に何かが生まれていた。
それは赤い殻に包まれた卵だ。
「迷宮が産んだ!?生きているのですか、この山は!」
四人は慎重に卵に向かって広間を渡る、暗闇が戻ったそこは不気味に静まりかえる、先ほどまでの嵐が嘘のようだ。
近くまで来ると卵の中は透けて中で流動化した赤い琥珀が動いている。
「この世界は奇跡に満ちていますねぇ、興味深い」
シュワルツは目を見開き子供のように目を輝かせた。
ガチッガチッ ゴゴゴゴッ
地面の下から異音が聞こえる、岩を囓るような固い音、振動が四人の足底に伝わってくる。
「こんどはなんだ!?地震か」
「もう大概の事じゃ驚かんぞ」
振動は四人の足下まで近づくとその姿を地を割って表した。
暗い洞窟は天井が高く、上へ下へと道が伸びている、壁は肉壁を岩にしたようだ。
転がる琥珀石を集めて発光させて松明として進む。
行く当てがあるわけではなかった、出口として分かっているのは冥界神殿と天空の神殿だけだが行ったことなどあるはずはない。
とりあえずユルゲンのクルツ銃から逃れるために迷宮に入ったに過ぎない。
「さてさて、これからどうしましょうかねぇ」
「あんたが探している男はこの山のどこかに潜伏しているのだろう?」
「はい、皆さんのお仲間一人と行動を共にしているようです」
「その一人が魔王イーヴァン様なら冥界神殿近くに向かったはずだ」
「冥界とはいえ標高二千五百メートル付近にあるそうですねぇ」
「この迷宮を行けばたどり着けるものでしょうか?」
「道は分からないが、上へ登っていくしかないだろうな」
「外を登った方が早いけど、あの蟻と異世界人の魔法が怖いよ」
「魔法などではありませんよぉ、これは銃という武器です、知識があれば皆さんにも扱えます」
「そうなのか、異世界人だけが使える物だと思っていた」
「アラタさんのために持ってきたのですが、皆さんにも使っていただきたいと思います」
「いいのか?俺たちに渡してしまって」
「もう重くて限界です、いささか疲れました」
シュワルツは首を竦めて、両手をあげた。
「どこか広いところにでたら、皆さんで練習しましょう、ユルゲンさんも皆さんが撃ってきたらびっくりするでしょう」
「びっくりだけか?」
「時間稼ぎぐらいにはにはなりますかねぇ」
「そのアラタって奴がいればどうだ」
「天秤は我々に傾くでしょう」
「我々の利害の一致したところに希望はあるということだな」
「異世界に転移してまで私たちは一体何をしているのでしょうかねぇ」
「ああ、いかれてるぜ」
「どうにも私らしくありません」
埃と泥に塗れてしまった髪を、それでも櫛を入れて整えた。
迷宮の暗闇は枝分かれしているが、その直径が変わることはほとんどない。
何かに似ている、アラタは迷宮神殿が巨大なドラゴンの化石であった事実を知ってから気づいていた。
洞窟の成り立ちは人族や魔族の人工物、鍾乳洞などではない。
もっと小さな洞窟を見たことがある。
「マリッサ、ムトゥスを狙う魔獣がいるっていっていたよな」
「ええ、あの吸血蟻とは別の魔物で、もっと恐ろしいものだとイーヴァン様は言っていたわ」
「大口を持った巨大な魔物だったか、なぜムトゥスを狙うのかな」
「さあ、私にはさっぱり?」
マリッサはブレスガンのライトで迷宮の奥を照らして探る、枝分かれした先まで照らすことは出来ない、その先に大口を開けて魔物が待っているような錯覚に捕らわれそうになる。
「案外、魔物は俺たちの近くにいるかもしれないぞ」
「なっ、脅かさないでよ、アラタ!」
「脅しじゃない、この通路はそいつらの通り道じゃないのか」
「よくそんなこと思いつくわね、そう言われたらそうとしか思えなくなってくるわ」
パアアァァンッ ガガガガッ ギィアアアアッ
「!!」
迷宮の奥から発砲音が響いてくる、誰かが銃を撃っている。
「銃声だ!」
「あのユルゲンという奴かしら!」
「一人じゃない、同時に複数の発砲音がしたぞ」
「何と戦っているんだ?」
「どうするアラタ?」
「当然確かめるさ」
ブレスガンを散弾モードにして銃声の方向に向けて迷宮の肉壁を降りていく。
迷路を進んだ先でシュワルツたちは少し大きな広間にでた、神殿よりは小さな空間、神殿同様に中央に背骨が走り肋骨が空間を支えている。
「なんと明るい、昼間のようです」
「いったいこれはどうなっているんだ」
シュワルツたちが見上げた天井には直径一メートルにもなる赤い琥珀石が煌々と空間を照らしていた。
「あの白い梁はなんでしょうか?人工の物なのでしょうか、実に興味深い」
琥珀石が光を強めると同時に周囲の空気が渦を巻き始める、見た光景だ。
「何が始まったんだ」
「これはあの時の!?」
天井から真下に向けて渦が伸びる、渦の中央に赤い光が奔り地についた瞬間、光が激しい音と共に弾けた。
「うわっ」
チッチが尻餅をついた、光が弾けた後には再び暗闇が戻っていた。
「なんだったんだ」
「おい、なんかあるぞ」
渦の中央だった場所に何かが生まれていた。
それは赤い殻に包まれた卵だ。
「迷宮が産んだ!?生きているのですか、この山は!」
四人は慎重に卵に向かって広間を渡る、暗闇が戻ったそこは不気味に静まりかえる、先ほどまでの嵐が嘘のようだ。
近くまで来ると卵の中は透けて中で流動化した赤い琥珀が動いている。
「この世界は奇跡に満ちていますねぇ、興味深い」
シュワルツは目を見開き子供のように目を輝かせた。
ガチッガチッ ゴゴゴゴッ
地面の下から異音が聞こえる、岩を囓るような固い音、振動が四人の足底に伝わってくる。
「こんどはなんだ!?地震か」
「もう大概の事じゃ驚かんぞ」
振動は四人の足下まで近づくとその姿を地を割って表した。