第3話
文字数 1,467文字
作品25 作品名
『御見合い』
「あんたは、稼ぎも少ないくせに家事ぐらいは、まともにできないの」
「あっっ。あっ。ゴメン。ゴメンよ」
パタンッ!!
「はぁ~。またダメか」
「はい。お目覚めですか。どうでしたか。今回の御相手は相性が良いはずですが」
「はい。結婚して、一ヶ月は楽しかったのですが、段々とギクシャクしてきて、いつもの通りです」
私は、この結婚相談所の常連客だ。
この結婚相談所には独特の御見合いシステムがある。
カプセルの中で一晩寝ると、夢の世界で一年間分のリアルな結婚生活を仮想体験できるのだ。
このシステムで結ばれたカップルは、離婚率が低いという話だ。
「そうですか。それでは仮想結婚生活の検証とカウンセリングがありますので、あちらの部屋へどうぞ」
「はい」
また、いつもの事だ。
私は今までに何度も高い追加料金を支払って、特別トレーニングというプログラムを受けてきた。
『自分が変われば、相手も世界も変わる』がトレーニングの課題だ。
理屈では理解しても、実践する事が出来ない。やっぱり、私は結婚する事が出来ないのだろうか。
そうだ。焦らずに一旦、休憩だ。旅にでも出かけよう。
私は翌日、旅に出た。
現代の秘境の地への冒険旅行だ。
険しい山も谷も苦にならない。私は何かに突き動かされるように山奥へと進んだ。
昼過ぎに天候が急変した。雲行きが怪しい。今夜は山小屋で過ごすことにしよう。
誰も居ない山小屋で火をおこし、一息つくと私は、やっと本当の自分に戻った気がした。
ゴロゴロゴロッ。ザッー。
雷鳴と共に激しい雨が降り出した。
パタン。
山小屋のドアが開き、ずぶ濡れの女性が倒れ込んできた。
彼女のズボンは破れ、左脚に怪我をしている。
「大丈夫ですか」
「あぁぁ。痛い。崖から落ちてしまって」
「とにかく、怪我の手当てをしましょう。化膿したら大変だ」
私は彼女の傷の手当てを始めた。ここには簡単な消毒薬ぐらいしかない。彼女の傷は深いようだ。
なんとか手当てを終えた。彼女はベットで横になったが痛みで苦しそうだ。
「大変だ。一刻も早く病院で手当てしないと」
この山奥では通信の手段もきかない。苦痛に耐える彼女を私は一晩中、看病した。
私は一つの決心と共に賭けに出た。
翌朝、私は彼女を背負い、救急隊に連絡が出来る所まで下山する事にした。
下山して10分で、私の脚には力が入らなくなった。
ただでさえ、慣れない山道。病人を背負っての下山は無謀過ぎた。
しかし、自分の命に代えても、彼女だけは何とか助けようと私は心の奥底で誓った。
私は強い使命感に突き動かされていた。
私達二人が病院に搬送されたのは夕方だった。病院のベットに寝かされた私は深い眠りの中に落ちていった。
「はい。お目覚めですか」
「あれ、、、。これは、、、」
「まだ、意識が混乱していますか。お客様は当社自慢の最新システム『出逢いプロジェクト』を体験なさったんですよ」
「そうか」
私の意識は、現実に戻された。
そして、私の横には、夢の中の『出逢いプロジェクト』という仮想の世界で出逢った女性が寝ていた。
私は、今迄にない愛 おしい気持ちが、こみあげて来るのを感じていた。
お客が帰った後の結婚相談所で所員が所長に聞いた。
「あの二人、うまく、いきますかね」
「いくわよ。この最新システム『出会いプロジェクト』は成婚率100%なの。ただし、今のところは離婚率も100%だけどね」
(了)
1366文字
※あらすじ
今も昔も未来も、恋心を動かすのは、結局、フィーリング、タイミング、ハプニング。
『御見合い』
「あんたは、稼ぎも少ないくせに家事ぐらいは、まともにできないの」
「あっっ。あっ。ゴメン。ゴメンよ」
パタンッ!!
「はぁ~。またダメか」
「はい。お目覚めですか。どうでしたか。今回の御相手は相性が良いはずですが」
「はい。結婚して、一ヶ月は楽しかったのですが、段々とギクシャクしてきて、いつもの通りです」
私は、この結婚相談所の常連客だ。
この結婚相談所には独特の御見合いシステムがある。
カプセルの中で一晩寝ると、夢の世界で一年間分のリアルな結婚生活を仮想体験できるのだ。
このシステムで結ばれたカップルは、離婚率が低いという話だ。
「そうですか。それでは仮想結婚生活の検証とカウンセリングがありますので、あちらの部屋へどうぞ」
「はい」
また、いつもの事だ。
私は今までに何度も高い追加料金を支払って、特別トレーニングというプログラムを受けてきた。
『自分が変われば、相手も世界も変わる』がトレーニングの課題だ。
理屈では理解しても、実践する事が出来ない。やっぱり、私は結婚する事が出来ないのだろうか。
そうだ。焦らずに一旦、休憩だ。旅にでも出かけよう。
私は翌日、旅に出た。
現代の秘境の地への冒険旅行だ。
険しい山も谷も苦にならない。私は何かに突き動かされるように山奥へと進んだ。
昼過ぎに天候が急変した。雲行きが怪しい。今夜は山小屋で過ごすことにしよう。
誰も居ない山小屋で火をおこし、一息つくと私は、やっと本当の自分に戻った気がした。
ゴロゴロゴロッ。ザッー。
雷鳴と共に激しい雨が降り出した。
パタン。
山小屋のドアが開き、ずぶ濡れの女性が倒れ込んできた。
彼女のズボンは破れ、左脚に怪我をしている。
「大丈夫ですか」
「あぁぁ。痛い。崖から落ちてしまって」
「とにかく、怪我の手当てをしましょう。化膿したら大変だ」
私は彼女の傷の手当てを始めた。ここには簡単な消毒薬ぐらいしかない。彼女の傷は深いようだ。
なんとか手当てを終えた。彼女はベットで横になったが痛みで苦しそうだ。
「大変だ。一刻も早く病院で手当てしないと」
この山奥では通信の手段もきかない。苦痛に耐える彼女を私は一晩中、看病した。
私は一つの決心と共に賭けに出た。
翌朝、私は彼女を背負い、救急隊に連絡が出来る所まで下山する事にした。
下山して10分で、私の脚には力が入らなくなった。
ただでさえ、慣れない山道。病人を背負っての下山は無謀過ぎた。
しかし、自分の命に代えても、彼女だけは何とか助けようと私は心の奥底で誓った。
私は強い使命感に突き動かされていた。
私達二人が病院に搬送されたのは夕方だった。病院のベットに寝かされた私は深い眠りの中に落ちていった。
「はい。お目覚めですか」
「あれ、、、。これは、、、」
「まだ、意識が混乱していますか。お客様は当社自慢の最新システム『出逢いプロジェクト』を体験なさったんですよ」
「そうか」
私の意識は、現実に戻された。
そして、私の横には、夢の中の『出逢いプロジェクト』という仮想の世界で出逢った女性が寝ていた。
私は、今迄にない
お客が帰った後の結婚相談所で所員が所長に聞いた。
「あの二人、うまく、いきますかね」
「いくわよ。この最新システム『出会いプロジェクト』は成婚率100%なの。ただし、今のところは離婚率も100%だけどね」
(了)
1366文字
※あらすじ
今も昔も未来も、恋心を動かすのは、結局、フィーリング、タイミング、ハプニング。