第5話
文字数 693文字
作品27 作品名
『顔』
俺には二つの顔がある。
普段は、腹の顔は誰にも見せない。
今日みたいに仕事で疲れた日に、家に帰り、服を脱ぎ、シャワーを浴び。一息ついた時に、もう一つの腹の顔が俺に語りかけてくる。
『あの傲慢な客は何様のつもりだ。ぶっ飛ばしてやる』
もう一つの腹の顔は、俺が言いたくても言えない事を本音で語ってくる。
だが、困ったことが一つある。
彼女と、これからベットインという時にも、もう一つの腹の顔は本音をぶちまける。
彼女は怒ったのか、怖がったのか帰ってしまうのだ。
だから、俺は未だに独り者だ。
決して、俺のもう一つの腹の顔を他人に見られてはいけない。
それなのに近頃は、やたらと、もう一つの腹の顔が俺に語りかけてくる。ところ構わず、他人が居ようと関係ない。
大事な決断を迫られた時に、もう一つの腹の顔は、俺に命令するようになってきた。
段々、俺は自分の存在が、消えていくように感じるのだ。
もう一つの顔こそが元々の俺なのではないかとさえ思う時がある。
「どうだね。被験者の様子は」
「はい。この被験者は自分の腹に、もう一つ別の顔があると思い込んでいるようです。最近は、その腹の顔の人格が元々の自分の人格を支配するようになってきたみたいです」
「なるほど。脳に埋め込んだ人工知能の副作用だね。しっかりデーターを採っておいてくれ」
「はい。それにしても、全国民の脳に人工知能を埋め込むようになってから、犯罪は減るし、国の生産力は上がるし、住みやすい世の中になりましたね」
(了)
619文字
※あらすじ
脳内チップを埋め込んだ人間達の副作用は『二つの顔を持つ人間』という精神疾患。
『顔』
俺には二つの顔がある。
普段は、腹の顔は誰にも見せない。
今日みたいに仕事で疲れた日に、家に帰り、服を脱ぎ、シャワーを浴び。一息ついた時に、もう一つの腹の顔が俺に語りかけてくる。
『あの傲慢な客は何様のつもりだ。ぶっ飛ばしてやる』
もう一つの腹の顔は、俺が言いたくても言えない事を本音で語ってくる。
だが、困ったことが一つある。
彼女と、これからベットインという時にも、もう一つの腹の顔は本音をぶちまける。
彼女は怒ったのか、怖がったのか帰ってしまうのだ。
だから、俺は未だに独り者だ。
決して、俺のもう一つの腹の顔を他人に見られてはいけない。
それなのに近頃は、やたらと、もう一つの腹の顔が俺に語りかけてくる。ところ構わず、他人が居ようと関係ない。
大事な決断を迫られた時に、もう一つの腹の顔は、俺に命令するようになってきた。
段々、俺は自分の存在が、消えていくように感じるのだ。
もう一つの顔こそが元々の俺なのではないかとさえ思う時がある。
「どうだね。被験者の様子は」
「はい。この被験者は自分の腹に、もう一つ別の顔があると思い込んでいるようです。最近は、その腹の顔の人格が元々の自分の人格を支配するようになってきたみたいです」
「なるほど。脳に埋め込んだ人工知能の副作用だね。しっかりデーターを採っておいてくれ」
「はい。それにしても、全国民の脳に人工知能を埋め込むようになってから、犯罪は減るし、国の生産力は上がるし、住みやすい世の中になりましたね」
(了)
619文字
※あらすじ
脳内チップを埋め込んだ人間達の副作用は『二つの顔を持つ人間』という精神疾患。