1 水無月 零

文字数 439文字

ビルの窓から見える

忙しなく働くスーツ姿の男女

自分とは無縁な世界



とはいえ

彼らも私も

生きる為に

何かを犠牲にして

働いてる事は共通している



本当に書きたいものは一銭にもならず

不本意な大衆向けの物語に

甘ったれた結末

理想と現実の違い



職業病ともいえる近眼に猫背

ストレス回避からの極度なニコチン摂取

カフェインの影響がもたらす不規則な睡眠時間



夢を得た代償はかなり大きい



かといって

他に情熱を注ぎたいものも無い

それどころか

叶ってしまった夢の先は

どこか空虚で

生きる実感が湧いてこない



バックミラーに映る

自分の

青白く神経質な顔つきと

華奢な体を見てると

尚更

気力が失せる



ただでさえ

色眼鏡の奥で威圧的に輝く

三白眼が

亡霊が訴えてるようで

薄気味悪いというのに



私の同級生達は皆

子供を育て始める頃で

充実してるというのに



「……いや、やめよう。オレの悪い癖だ、また、いつものように旅先で刺激を受ければ、気分もリフレッシュするはず」




私は一人短い笑いをもらした

カーラジオからは

絶妙なタイミングで

三流MCの下らない冗談が流れていた 
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