☆7☆ 遠距離1

文字数 960文字

 ビアンチャットで、気が合ったのが(ともえ)さんだった。寝る時間を削るくらい話し込んでしまった。

 会おうという話をしたのは私の方だった。ただ、私は関東で巴さんは四国、簡単に『会う』というわけにはいかない。
 話を振っても、いつも「いつかね」と流されていたし、私も別にそこまで本気ではなかった。

 それが会う段取りになったのは、巴さんが大阪で研修があると言うからだった。研修と言っても仕事ではなく、趣味のものだった。
 私は私で、趣味の講座に参加するために大阪行きを決めた。大阪で、会おうという話で終わると思っていた。

「じゃぁ。その後、うちに来る?」

「え?」
 驚いたのは私の方である。『家に来る?』という事は、大阪から足を延ばして四国に渡るという事だ。
 さすがにそこまでは考えていなかった。即座に交通費が頭に浮かぶ。

「研修にはバスで行くから、そこに乗ってきたらいいよ。いくらかかかるケド、電車やバスより安いはずだから」

 その言葉につられて、行く事に決めた。次はどのくらいの期間かと言う事を考えなくては行けない。

「何日くらい、お邪魔していいの?」
「三日でも一週間でも、好きにどうぞ」

 仕事もしていないので、一週間滞在に決めた。
 巴さんは一人暮らしで、おうちにいるのはワンコ1匹という情報はすでに得ていた。不安しかないが、冒険をする事にした。

 巴さんは年齢非公開だったが、「ノアちゃんが思うよりは年上だと思うよ」と念押しされた。
 私の中では四十代ぐらいという予想で、会ってみてもそんなものかなと思った。
 とにかく、親より年下で私より年上だと念押しされた。……幅が広くて分からない。

 会ったとたんに幻滅されるのは避けたかったので、念押しをしたのだろうが、私は相手の年齢はどうでも良かった。
 毛玉セーターでなければ、顔の造形などは二の次だと思う。


 巴さんに会った印象は、イメージしたものとさほど変わらなかった。服装も毛玉セーターではなく、小奇麗に整えられていた。
 巴さんのお友達にも会った。最初はお友達さんも含めて、お店に入ってお話しした。
 お友達さんはオシャレな人で、おそらく巴さんのコーディネートは彼女が決めたのだろうと思った。

 私の方はと言えば、「お(しゃべ)りが苦手」と先に言っておいた。
 チャットでは普通に話すが、現実の私は全く(しゃべ)れない私だ。
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