☆30☆ メンタルヘルス
文字数 1,720文字
メンタルヘルスの掲示板サイトで、ある人と出会った。綺麗 な京言葉を使う人で、ジンさんと言った。
掲示板サイトだが、管理は個人でやっていて管理人が掲示板にも顔を出す。
掲示板に書き込むと管理人が返信をしていた。やがて、常連が数人いる事に気がついた。
ユウさんは性別がよく分からない人だった。言葉遣いは丁寧で女性のように感じていた。
性別を聞く必要はないので、そんなものとしてやり取りを続けていた。
掲示板のサイトにはチャットもあった。そこでチャットもするようになった。
その日はユウさんと話していた。
ユウ『私、ウソをついていたんです』
私『何を?』
ユウ『実は私、男なんですよね』
私『え?』
唐突の告白に、他の人たちも驚きの反応を示していた。
ユウ『女性っぽく偽っていた部分もあるけど、女性と思われたらどんな風に扱われるのかに興味があって』
その言葉から、女性と思わせていたのは実験的なものなのだと思った。
他の常連さんが『でも、ユウくんはユウくんでしょ』と言う。
それを見ながら、私は違和感を持ってしまった。
ユウ『でも、他の人は怒ってしまって……悪かったなと』
私たちが最初にばらした相手ではないらしい。
怒った人たちの気持ちも分かる。ユウさんを女性だと思って、生理の話までしていたのだから。
私は生理の話をする事はなかったが、女性だと信じて話していた人たちから見れば、『男性』というのは許せないと思う。
その場は『ユウくんはユウくん』という話でしめられた。
私はこのモヤッとした気持ちを抱えたまま、でも女性と勝手に勘違いした方も悪いのではと思っていた。
ジンさんにユウさんは男性という話をすると、即座に怒りだした。
ジン『そら、あり得へん。わざと分かっとって、女性の話に加わるのはおかしい』
ジンさんの正義感が羨ましくなる。そして、勘違いした側が悪いのではと思ってしまった自分が恥ずかしい。
それからは、サイト内で『性別を偽る事禁止』という不思議なルールが出来た。
さらにそれからしばらくして、ジンさんが他人を攻撃するコメントをしているのを見かけた。
……変だな。と思いつつ、やり取りをしている相手のフユさんも厄介な相手だったので、苛立ったのかなと思ってしまった。
私はジンさんの真意を知りたくて、『どうしたんですか?』とメールを出した。
すると、驚きの返信が来た。
『そら、私ちゃう。誰かがうちに成りすましている』
ジンさんだと思ってしまった私は馬鹿だった。ジンさんも即座に掲示板を確認して、管理人にメールを送ったと書いてあった。
結局その件は、フユさんが自作自演でジンさんを悪者に仕上げるコメントをしていたという事が分かった。
以前からフユさんは癖のある人で、小さな注意は受けていた。
それが、ジンさんと小さなトラブルが起きて、『成りすまし』でジンさんの評判を下げようとしたらしい。
メンタルヘルスサイトなので、精神状態の不安定な人たちが集まる。この程度のトラブルはしょうがない事なのかもしれない。
しかし、驚いたのはこの後の管理人の対応だった。
フユさんに注意だけで終わらせた。フユさんはその後も掲示板を自由に使っていた。
悪質な荒らしとしてブロックという対応になると思っていた私は、管理人の甘さに呆 れた。
それ以降、私もジンさんも掲示板を使わなくなった。
そのサイトはしばらくして、閉鎖になった。
サイトが閉鎖しても、私とジンさんは時々メールでやり取りをしていた。
私が関東に引っ越した時、ジンさんに連絡を取ってみた。
しばらくメールをしていなかったので、届かない可能性もあると思ったが、返事が来た。
『うちもこっちに異動になって、東京におるんや。こっち来ているんやったら、食事でもおごるよ』
ジンさんは京都だったような気がしていたが、こちらに来ている事に驚いた。
『おごって欲しいけど、バタバタしているから落ち着いたら、また連絡する』
という返事を送ったが、それ以降はメールアドレスを替えてしまってジンさんのアドレスも消えてしまった。
長くメールのやり取りをしながら、一度も会わなかったジンさん。
一度ぐらい会いたかったなと思う。
掲示板サイトだが、管理は個人でやっていて管理人が掲示板にも顔を出す。
掲示板に書き込むと管理人が返信をしていた。やがて、常連が数人いる事に気がついた。
ユウさんは性別がよく分からない人だった。言葉遣いは丁寧で女性のように感じていた。
性別を聞く必要はないので、そんなものとしてやり取りを続けていた。
掲示板のサイトにはチャットもあった。そこでチャットもするようになった。
その日はユウさんと話していた。
ユウ『私、ウソをついていたんです』
私『何を?』
ユウ『実は私、男なんですよね』
私『え?』
唐突の告白に、他の人たちも驚きの反応を示していた。
ユウ『女性っぽく偽っていた部分もあるけど、女性と思われたらどんな風に扱われるのかに興味があって』
その言葉から、女性と思わせていたのは実験的なものなのだと思った。
他の常連さんが『でも、ユウくんはユウくんでしょ』と言う。
それを見ながら、私は違和感を持ってしまった。
ユウ『でも、他の人は怒ってしまって……悪かったなと』
私たちが最初にばらした相手ではないらしい。
怒った人たちの気持ちも分かる。ユウさんを女性だと思って、生理の話までしていたのだから。
私は生理の話をする事はなかったが、女性だと信じて話していた人たちから見れば、『男性』というのは許せないと思う。
その場は『ユウくんはユウくん』という話でしめられた。
私はこのモヤッとした気持ちを抱えたまま、でも女性と勝手に勘違いした方も悪いのではと思っていた。
ジンさんにユウさんは男性という話をすると、即座に怒りだした。
ジン『そら、あり得へん。わざと分かっとって、女性の話に加わるのはおかしい』
ジンさんの正義感が羨ましくなる。そして、勘違いした側が悪いのではと思ってしまった自分が恥ずかしい。
それからは、サイト内で『性別を偽る事禁止』という不思議なルールが出来た。
さらにそれからしばらくして、ジンさんが他人を攻撃するコメントをしているのを見かけた。
……変だな。と思いつつ、やり取りをしている相手のフユさんも厄介な相手だったので、苛立ったのかなと思ってしまった。
私はジンさんの真意を知りたくて、『どうしたんですか?』とメールを出した。
すると、驚きの返信が来た。
『そら、私ちゃう。誰かがうちに成りすましている』
ジンさんだと思ってしまった私は馬鹿だった。ジンさんも即座に掲示板を確認して、管理人にメールを送ったと書いてあった。
結局その件は、フユさんが自作自演でジンさんを悪者に仕上げるコメントをしていたという事が分かった。
以前からフユさんは癖のある人で、小さな注意は受けていた。
それが、ジンさんと小さなトラブルが起きて、『成りすまし』でジンさんの評判を下げようとしたらしい。
メンタルヘルスサイトなので、精神状態の不安定な人たちが集まる。この程度のトラブルはしょうがない事なのかもしれない。
しかし、驚いたのはこの後の管理人の対応だった。
フユさんに注意だけで終わらせた。フユさんはその後も掲示板を自由に使っていた。
悪質な荒らしとしてブロックという対応になると思っていた私は、管理人の甘さに
それ以降、私もジンさんも掲示板を使わなくなった。
そのサイトはしばらくして、閉鎖になった。
サイトが閉鎖しても、私とジンさんは時々メールでやり取りをしていた。
私が関東に引っ越した時、ジンさんに連絡を取ってみた。
しばらくメールをしていなかったので、届かない可能性もあると思ったが、返事が来た。
『うちもこっちに異動になって、東京におるんや。こっち来ているんやったら、食事でもおごるよ』
ジンさんは京都だったような気がしていたが、こちらに来ている事に驚いた。
『おごって欲しいけど、バタバタしているから落ち着いたら、また連絡する』
という返事を送ったが、それ以降はメールアドレスを替えてしまってジンさんのアドレスも消えてしまった。
長くメールのやり取りをしながら、一度も会わなかったジンさん。
一度ぐらい会いたかったなと思う。