第21話 虱目魚 しらみめざかな

文字数 1,662文字

 香港って犬よりも猫が多い。
住宅が手狭だし、犬は散歩も大変だし、やっぱり猫の方が生活に合ってるのかな。
街角スター猫もいて、新聞売ってるキオスクみたいなところの「クリーム兄貴」という名前の猫、有名でした。でっかくて、堂々しているのがアニキっぽかった。(アニキの奥さんはアネキと呼ばれています)
アニキ、もうサヨナラしちゃったんですけどね。CM出たり、だいぶ人気になってグッズとかカフェとかもあった。香港の人って、猫好きが多いんです。
店先に看板猫がいるお店も多くて、リアル招き猫ですね。

 上環は香港島にある下町の雰囲気がある地区で、骨董品屋さんがあったり、ハンコ屋さんがあったり、昔ながらな床屋さんがあったり、不動産屋さんがあったり、歩き回るのが楽しい。
友達とウロウロしていると、乾物屋さんもたくさんある事を発見。
ちょっと無茶だろ、と思うのですが、あの埃と排気ガスまみれの道路っぱたで、カゴに入れて何やかや干してるんですよねえ。椎茸とか魚の浮き袋とか、つまり商品なんですが。
そして、それ食っちゃってるし、猫・・・。
おおらかっていうか、誰も気にしない。
猫や、何食べてんの????と触りに行ったら、カゴの下の段ボールに「目魚」とマジックで書いてある。
・・・・メギョ、めざかな???
「コレなんですか・・・???」
不思議に思って、お店のじいちゃんに聞いたら、段ボールの切れっ端持ってきてくれて、さらさらっとマジックで何か書いてくれた。
どうやら正式名があるらしい。
「虱目魚」
・・・・・しらみめざかな。
「しらみ???って、あの頭とかにつくやつ??見たことはないけど・・・、ノミとかダニとか、ああいう系だよね。その、目の魚なの???」
「いやいやいや、なんか、余計、食べる気起きない名前だけど・・・」
もしかして、日本語名は違うのかなあ。
触ってみんしゃい、と言われて見せられたけど、干物になっちゃってるし、元々の原型が全くわからなもんなあ。
しかし、その後、フードコードで見つけた!
虱目魚の・・・・お粥!!!!
「とすると、結構メジャーなのかな」
「お粥になってるなら、丸ごとより食べやすいんじゃない?」
でも何せ名前がねえ・・・。しらみって。何でそんな名前つけたんだろ・・・。
出てきたのは、お粥に沈んだ、なんか厚みのある切り身。
・・・うーん、ニシンとかイワシみたいな小骨が多いというか・・・。
すっごいうまい!!!というほどでもないけど、まあ、白身魚だからそこそこなお味。
まあ、名前よりはかなり大丈夫な感じ???

調べたら、サバヒーという台湾で人気の魚らしい。
別名ミルクフィッシュ。うん、なら美味しそう。
養殖が盛んらしいです。
発音に合わせて当てた漢字で、台湾には博物館もあるらしい。
北海道のニシン御殿が観光地になっちゃってるあの感じ・・・????
「漢字の名前が今ひとつだよね。イメージって大事よねえ」
「お嬢サバとか、本当食いたくなるもんね」
そんな話をホテルのフロントのお姉さんにしたら、お土産に、この皮を使ったおつまみがあると教えられ。
大人気だよ!!!と言われて買ってみた。
イカとかホタテとかはあるけど、魚の皮のおつまみって珍しい。
サクサクして、うん、コレは好き嫌い別れる味かもなあ、と。
一応お土産にしました。

香港の銘菓に「老婆餅」という、冬瓜をあんこにして中に入れたパイ饅頭みたいなものがあるんですが。
老婆、とはお婆さんの事ではなく、奥さんの事らしく、『奥さんが作った美味しいお菓子』みたいなニュアンスです。
例えば、会社の女性先輩に「先輩!お土産だべ!」と手渡す時も・・・。
「あー、わかってるわかってる。アタシをお局って言いたいんでしょー??
「そんなっ、先輩っ。アタシ、先輩をBBAとか老婆って思ってませんからッッッ」
「私が老婆ならアンタもだからね。三つしか違わないんだから」
「わかってますよう」
なんて、ひとネタしないとどーも気まずい・・・。
「虱目魚片」《サバヒーチップス》も、ひとネタ考えながら手渡したいお土産ですね。
話題のセンスが問われる一品・・・。
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