第１２話　致死量・痩せるお茶

　日本人はあれこれと凝り性な食いしん坊であるが、中華圏の人は食べる事が生きる情熱。
生き物のほとんどは一日中食べる為に費やしている、そしてその食べ物を消化する為によく寝るらしい。中国人のことですね、と中国語と英語を教えてくれていた先生が大いにウケていた。
でもね、痩せてる人が多い。
普通、スレンダー、スリムなんて表現あるけれど、先生はいつも「アイムスキニー」と言って大笑いしていた。日本だと、ガリガリに痩せた人を骨皮筋右衛門なんて言いますね。あんな意味。スキニーって・・・アンタ、ジーンズか。
先生は、食べるの大好きだし、そもそも一日中お菓子を食べてる。日本に来てから日本のお菓子やお酒の美味しさにも目覚め、コンビニで新発売のお菓子やスイーツを食べるのが趣味、毎日高カロリーの甘いチューハイを飲んでいる。
なのに、何でそんなに痩せてるの。
まさかやっぱり、あの怪しい中国の痩せる薬だの痩せるお茶だの飲んでるの!?
昔は痩せる石鹸なんかあったけど、全く痩せなかった。
「いやいや、普通にお茶をよく飲むからですよ」と当然のように言う。
皆言うよね、それ。でも、日本人だってお茶飲むし。
と言うわけで、香港の女の子に、どんなお茶飲むのか聞いてみた。
そしたら、コンビニに売ってると。
へえ、そういう美容健康茶があるんだ。
どれどれ?と聞くと、私も友達もよく飲むのはこれとかこれかな。お茶はダイエットはもちろん、美容や健康にいいから私は一日に二本は飲むようにしてる。と教えてくれた。
私も友達と疾風のようにコンビニに行き、教えてもらったお茶を探した。
「梅子緑茶。ほうほう、梅ね!!梅エキス、確かに体に良さそう」
「じゃあ、私はこの緑茶・檸檬にすっかな。やっぱ酸っぱいのが、ダイエットにいいんじゃない??」
じゃ、一気に・・・ブホォォォォォッと二人で吹き出した。
甘ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!
「なんっ・・・何じゃこりゃ、かき氷シロップみたいな味がする・・・!!!」
「こっちは甘い洗剤よ!!!!」
香料も独特だけれど、緑茶なのに甘いだけでも違和感ハンパないのに、その甘さが異常。
体に良い成分であるお茶を上回る量の砂糖がだいぶ入ってんだろ、これ・・・・。
これを一日、二本?!三日で致死量じゃ・・・・。
調べたら、人工甘味料でもなく、本当に砂糖とか蜂蜜が甘味として入ってるらしい。
「これ、だいぶ、甘くない????」と香港娘に聞いても、「お茶は体にいいんだから、問題ないじゃない」と。お茶だからカロリーゼロ、みたいな主張で。アンタ、サンドの伊達ちゃんか・・・。
いやもうさ、これを毎日二本飲んで、朝からインスタントラーメンとか、菓子パンにマーガリンたっぷり挟んだやつとか、揚げたフレンチトーストとか食べてさ、喉が渇いたってタピオカドリンクだのマンゴージュースだのエバミルクと砂糖たっぷりのミルクティー飲みまくって、昼に飲茶行ってさ、スタバでフラペチーノ飲んでさ、夜にラーメン食べてさ、夜中にお汁粉食べて、何で痩せてるのよ。
私らね、香港二日目昼ですでに1.5キロ増えてんのよ。
彼ら、彼女らは、異常に、異常に代謝がいい。もうこれくらいしか思いつかない。