第37話 ピンポン武勇伝

文字数 1,972文字

香港、高級ホテルの土曜日夜(サタデーナイト)のラウンジ。
大人がデートを楽しんでいる、、かと思いきや、外国人が日頃のストレスでおかしくなってる光景がよく見られます。

 アンタそれ一人で食うんか?とビビる3段のアフタヌーンティー セットを平らげ、紅茶1リットルくらい飲んでる日本人女子。私と友人。
そして、中国の田舎に出向、久々に香港まで出て来てはしゃぐ日本人男子。
「ビール冷たい!おつまみが湿気てない!パリパリしてる!ピーナッツに変な辛い粉かかってない!」
あんたどんだけ田舎に飛ばされてんだ。
「日本人?旅行?」
と、嬉しそうに声をかけられたわけです。
とにかく日本人見て人恋しいらしい。
中国の普通の女の子との出会いというのは思うほど少ないし。
だから割に、日本で言う夜の飲食店に働いてる中国人女子とそこそこの会社員とか支店長みたいな人が結婚したりする例も多いらしい。
せっかく休みの日に香港に出て来ても、普通の女の子、よくわかんない大陸の田舎に飛ばされてる日本人の男なんて相手してくんないしな。
「話聞いてくれたら、奢るよ!どう?シャンパンとか」
と、言われ。
「じゃあ。今食ってる同じのもう1個づつ」
「え?この山盛りの粉もんをまだ食うの?食えんの?」
「香港に来といて、どっかの国の炭酸の酒なんかで胃を膨らましてたまるかい」
引かれながらも、3段プレートを一人1セットづつ追加。
「次、せっかくだからお茶違うのにしろ」
とスタッフさんに言われて紅茶も追加。
「いやー、すごいっスね•••」
「私らここで2000キロカロリーくらい食べてるからね。紅茶なんか2リットルくらい飲んでる。•••スケベ心も消えるでしょ?」
と言うと、
「うん、めっちゃ萎えた」
との事。
私達はかなり食欲に振り切っているけど、香港に多くの女が来ている理由が、食い物、買い物、エステ、であるように。
香港に男が来ている理由の一つに風俗がある。
「ピンポン」というのがあって。
卓球ではなく。
繁華街のマンションの中にある風俗の事で。
ドアに写真とか値段のメモとか貼ってある。
ふんふん、○○出身、○○○香港ドルね。
ピンポーン。
ガチャ。
よし、入れ。
お邪魔しまーす。
というシステム。
出て来た女の子見て気に入らなければ、その場で断って次のドアをピンポンする実体験型マッチングシステム。
「行ったんか?」
なぜか女子に風俗の武勇伝を聴かせたがる殿方ってたまにいるんですよね。
アナタ、それ、セクハラよ?!
と思ったら。
「•••はい。いや、実は初めてで。日頃の運動不足が祟って、香港の人混みのなか歩くのだけでも疲れちゃってたんだけど。勇気を出してピンポンしたら、ロシア人だかそこらへんの女の子が出て来て。すんごいキレイな。年は21って書いてあったけど、いくら大人っぽく見えるとは言え、多分本当は32くらいなんだと思うけど」
アンタ、文句多いな。
「そしたら、バタンて、ドア、し、閉められまして•••」
「•••うわ、ダッサ」
ピンポンは、相手にも拒否権がある。
「何?!何が悪かったの?そりゃ俺イケメンとかじゃないけどさ、清潔感を心がけて、床屋にも行って、服もほら!ポロ!買ってきた!」
うん。なんつーのかなー、、、。
「服装もだけどやっぱTPOですよ。楽しく遊びに来たイェーイ!みたいな感じしないじゃん?」
「重いつうか、めんどくさいつうか、クスブリ感つうか、不運が移りそうつうか•••」
女の子は部屋に一人で居るんだからさ。あ、ヤベ、こいつ。って、危機意識働くよね。
「2年だけ行って来いって日本出されて、もう4年目。当時の上司は退職してもう居ない!俺はいつ日本に帰れるんですかね?!気晴らしに香港来たら、ここでも拒否られて•••」
おんおん泣き始める。
上司、お宅の部下だいぶ参ってますよ。
日本人てどこの国でも頑張ってて。
実は日本の方が特殊なんだけど、だから、文化、風習がだいぶ違う。そのギャップの中で働いて実績出さなきゃならないわけで。
「まあさあ、昨日、飲茶屋行く途中、地下鉄広げてるとこの現場見てたらさ。施工はやっぱ日本あの大手の建設屋さんでさ。朝礼のラジオ体操してんの、日本人だけだしさ」
あとの日本人以外の作業員は集まってすらいない。
「日本の会社員で海外組って、昔と違くて皆大変だよね」
「皆、苦労してる、、、!!」
とまた泣き出す。
スタッフが、お前泣くなよ、食えよ、とピーナッツとかよくわからない平べったいでっかいドンタコスみたいのを持って来てくれて。
「いつ帰んの?」
「明日の朝」
「そうなんだ。いいなあ。•••最後に教えて。日本に帰ったら、まず何食うの?」
「そうねぇ。寿司?」
「私、マックの月見バーガー。月見とグラコロは毎年食うって決めてるから」
「寿司!月見!いいなあ•••」
日本と香港の距離でも、こうなんだからもっと遠くで生活してる人は尚更ですよね。
皆、頑張ってますね。
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