第31話 ステキなバーで「あちらのお客様からです」

文字数 1,962文字

 よく、昔のドラマだと、バーで女性がひとりでいると、バーテンさんがカクテルを差し出して。
「あちらのお客様からです」って。
少し離れた場所のイケメンが、手を振ってる、みたいな。
 今日は、そんなお話。
(そんなわけないけど・・・)

 夜景を見に行きまして。
ビクトリアピークからの眺めた夜景が、いわゆる100万ドルの夜景、名物。
で、行きはピークトラムっていう、ひたすら山登りする電車みたいのに乗って。
ピークには、ショッピングモールとレストランがある。マダム・タッソー、蝋人形館もある。
蝋人形って確かにすごいけど、なんでこんなとこにあるんだろ。
お店で、友達に頼まれてたブルース・リーデザインのヌンチャクをお土産に買い、お店のお兄さんにやり方を教わる。あまりの出来なさに、気の毒になり、いや、うん、もう、わかったから、サンキュー、と店を出て。
そりゃ、ブルース・リーとかジャッキーがやれるからって言っても、皆できるわけじゃないよね。
ヌンチャクって、思ったより難しい武器。練習するしかない。
こんなんより、ただの棒っきれとかの方が何倍も使い勝手いいんじゃないかなあ。

夜景を眺めて・・・これがねー、結局、夜景ってほら、ビル、会社の照明多いからさ。
やっぱり、日曜はなんか若干薄暗いつうか。時間的にも遅かったし。
帰っかー。バー予約してるし、と、友人と2人、外でハーゲンダッツのアイス食べてたら、いきなり弾丸のような大雨!!
トラムまで行けない!
もうタクシー乗っちゃおう!と思ったのがまずかった。
ビクトリアピークって、つまり山だから。
日光のいろは坂並みに、下り坂ぐるぐるぐるぐる・・・き、きもちわり・・・。
しかも、車の芳香剤が超独特。
イランイランていう花の香りらしい。
大好きな方もいる香りだけど、今は、つ、辛い。
・・・マジでいらんいらん。
とにかく平地に到着し、フラフラしながら、ずぶ濡れでホテルのステキなバーへ。
「ナニ?車に酔った??」
とバーテンが、おなじみ車酔いに効くという百合油を取り出し、こめかみやら、鼻の下に塗れ、と。
2人して、すっごい湿布くさい。
しばらく青い顔のまま、サッパリしたものばかり注文してるうち、なんとか持ち直し空腹に気づく。
「なんか食べたいんだけど、この、チーズとかじゃなくて・・・」
「何食べたいんだ?」
「・・・んー、ラーメン・・・?」
「あー、いーね!塩ラーメン!」
「わかる、塩!」
「あの、あるわけ無いから。ここ、バーだから」
しかし、ここは香港。朝6:00から深夜2:00やら朝4:00までやってる食堂もある街。
「帰り、あの店で焼きそば食ってけ」
「あっちの火鍋屋、2:00までやってる」
スタッフ、さすが食う情報良くお持ち。
皆、食いしん坊。
「2時に火鍋かー」
「火鍋、丸いからカロリーゼロ!」
アハハ、なんて笑ってたら、バーテンさんがニコニコして走ってやってきた。
「お前ら、あちらのお客様からだ!」
えぇっ?!やだ!イケメンから、マルガリータとか・・・!?(ピザではなく。カクテルの)。
なんて、ちょっとトキメいたら、ずいっとビニール袋。
へ????
よく見てみると、、、弁当??
「腹減ってんだろ!食え!」
おじさんが、手を上げて、じゃあな!みたいな感じで帰って行く。
サモハン大大哥(大きい兄ちゃん)似の、優しい方!!
「えっ?!え?!な、なんかよくわかんないけど、ありがとうございますー!」
ごはんと、鶏肉と野菜ちょっと入った弁当。
鏞記(ヨンキー)のテイクアウトだから、ガチョウだ。ローストグース!」
「え?!鏞記?!良かったなあ」
良かったなあ、良かったなあとバーテンさんに口々に言われ。
鏞記は、ローストが有名なお店。老舗で大人気。
うますぎて、観光客が帰り際に買って飛行機に乗るもんだから、空飛ぶ(フラインググース)なんても言われてるんですね。
観光客も、地元の人も大好きで、持ち帰りの弁当もいつも並んでる。
もはやカクテルそっちのけで弁当。
「すっごいうまー・・・。まさかバーで鏞記の弁当食えると思わなかった」
「ガチョウ初めて。あの鳥、こんなおいしいの?」
甘辛いタレに、ジューシーなガチョウ。
ウナギに匹敵する旨さ!!
「しかし、なかなかイケメンから、カクテルって奢られないもんだね。ドラマとはだいぶ違うや」
「いいじゃん!弁当貰ったし!」
私らも、もし、地元で香港人が腹減らしてるの見かけたら、なんか奢ってやらなきゃと思った夜。

 日本で郷土料理みたいの食べたい、何がある?と、スタッフさんとまた食べる話。
割に香港人て、日本に何回も行った事ある人が多くて、東京や大阪みたいな大都市はもう行ったから、ローカルな観光地に行きたいらしい。
「信州とか会津の蕎麦とか?香川のうどんとか?山梨のほうとうとか?」
「ひっつみとか?五平餅とか?」
なんだそれ!うまそう、と興味津々。
食べるの好きな人には、全く、ピッタリの街なのです。

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