それでもきっと恋だった③

文字数 352文字

 此処まで歩いて来た私とあなたが出会ったのは全くの偶然だったのだろうか。必然と思えるほど、私は自惚れてはいなかった。だけど、あなたの話す言葉や声に私は少しずつ惹かれて行くことを自覚していた。あなたも私にそうであってほしいと思い始めて行った。けれど、私とあなたの時計は別々の時間を刻んでいるのだと思い知った。それは初めからのさだめだったのかもしれないし、もっと言えば気が付いていなかっただけなのかもしれない。お互いの時計を利用していただけだったのかもしれない。流れた時間が巻き戻らないように、得てしまった思い出が私から消えることはないだろうと思う。一年後、五年後、十年後になっても私はあなたを記憶している。記憶し続ける。自分の時計を見るたびごと、あなたを思い出す。遠い場所にいるあなたの中に私がいなくても。
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