閉じた世界での祈り①

文字数 145文字

 時計の針が日付の変更を刻む頃、扉の開く音がした。なくしたなにかを見付けたような、そんな気持ちで私は恋人を迎える。私たちは、たったふたりで完結していた。世界など、どこにもなかった。離れていれば会いたいが募った。開け放した窓から確実に夏の気配を感じ、蝉の声を聞く。私たちは、そっと窓を閉めた。
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