それでもきっと恋だった➁
文字数 362文字
さよならを言う隙間もなかった。気が付くと、本当にいつの間にか音もなくあなたはいなくなっていた。まるで季節が移り、役目を終えた葉が枝から落ちるように、或いは風に乗って旅立つようにして、あなたは私の前からいなくなっていた。それを寂しいと思うよりも強く、私はあなたが元気であってほしいと願った。あなたの口から出る言葉は、まるで何もかもに少し嘘が混じっているように感じていたから。それは私が相手だからというよりも、世界中の誰に対しても、もっと言えば自分自身に対してですら、そうしているように思えた。私の考えすぎであれば良いと思うと同時、脳裏に蘇るあなたの声がそれを否定しているように感じた。季節はあなたと出会った夏を終え、秋を越え、冬を迎えた。移ろう時間の中に私はあなたの存在を見出す。同じ空の下で、元気でいてくれるようにと願う。