第4話 チェリー・ベリーズ。

文字数 853文字


 ベリンダとエリザベスの双子はまとめて『ベリーズ』と呼ばれていました。
 このうえもなく仲良しの姉妹で、どこへ行くのも一緒です。
 それもそのはず二人はいつも一台の改造車椅子に一緒に乗っていたからです。
 おそろいの金髪に、おそろいの白い肌、おそろいの紅い唇。
 そっくりの笑顔が、そろってニコッと笑うときの愛らしさといったら!
『ベリーズ』には二人で三本の脚と二人で二本半の腕しかなくて。
 二人でひとつの、いくつかの内臓を共有していて。
 どこへ行くにも繋がった松葉のように連れだって動くしかないということなど。
 その二人の天真爛漫な笑顔のかわいらしさの前には、
 どうでもいいことでした。
「おはよう、チェリー・ベリーズ!」
 どこへ行っても、みんながそう挨拶しました。
「おはよう、皆さん。今日は新ネタを披露してもいい?」
「もちろん、もちろん!」
 みんな、ベリーズのお茶目な即興演技が大好きです。
 やおらエリザベスが一本半の腕を使って大きなコートをかぶりました。
 頭まで、すっぽり。
 ベリンダが笑いながらこう言いました。
「二人羽織~wwwww」
 ベリンダがいまいち視力の低い両眼であっちだこっちだと指示を出し、
 エリザベスが(顔はコートに潜ったままで)一本半の腕を使って、
 お題目通りのこっちかそっちか?と、おどけた動きで笑いを誘います。

 短い一幕が終わってから、てへぺろ☆彡
 と笑いながら、これはもともとは、かつて地球にあったという、
 エドという国の伝統のお笑い芸だったんですって!
 …と、種明かしをしました。

 二人とみんなの乗りくんだ船は、長い長い旅の途上にあります。

 やがて。

 目的の居住可能惑星に辿りつき、しかし船が老朽化に敗けて、
 墜落、同然の、不時着を、迫られた時に…

『ベリーズ』の勇敢な脳と素早い行動力が。

 多くの人の命を救ったのだ…

 と、いうことは。

 あいにく、その惑星の往時の生き残りの民たちの間には。
 河の女神と
 海の女神。
 という名前の。
 おぼろげな神話伝承、という形でしか、残らなかったのでした。




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