第5話 『 クレヨン・シンドローム 』

文字数 1,182文字

「いやはや、まいったよ…」
「敵もサルもの、ひっかくもの。ってね…」

 悪戦苦闘と負傷者多数発生(幸い死者は無し)の末に、
 捕らえた犯人たちの。
 司法取引…という名の。
 拷問スレスレの尋問…(あくまで『合法の範囲内で!』だ…)
 に、立ち会って戻ってきた二人が口々にぼやいた。

「けっきょく何だったんだよ?」
「で、判ったのかよ、ブツの在り処(ありか)…?」
 比較的軽傷だったのをこれ幸いと、
 入院&検査は丁重にお断りして(大脱走して)
 先に勝手に帰署していた数名が、わらわらと集まってきた。
「これさ★」
 手にした報告画像盤を見せる。
「えぇ? コレ?!」
「ぅわ★ やられた~!」
 並んで映っているのは… 色鉛筆と、クレヨン?
 …地球本星の西方文化圏では、ごくごく一般的な。
 某有名メーカーの…
 小学生とか…向けの。
「急いで鑑定させたけど、缶はホンモノでさ。」
「メーカー担当者に確認させたら、発注数と、納品数に、わずかだが、差があって…」
「急いで本星のほうで、関係者の身柄拘束に回ってる」
「あ~…★★」

 麻薬密輸、の手法も。
 年年歳歳… 偽装が凝りに凝りまくって、きていて。
 特に、地球圏⇒リスタルラーナ文明圏への密輸量は。
『原始的で、野蛮で、危険なところが』スリリングで良いと、
『文明爛熟期』の倦怠感に病んだひとびとに、
 珍重されてしまって、いて…
 司法と治安の関係各所の努力にもかかわらず…
 膨大の一途を辿っていると、推測、されている…

「これの嫌なところは、いちおう『描ける』んだよな~ほら★」
 鑑識が、報告用に急いで撮ったものらしい画像のなかで。
 缶から出された12色のクレヨンのうちの1本が。
 すらすらと、一応、絵が描ける…
(でも、なんだかいまいち、出来が悪い感じはする…)
 のを、映し出している。

「…そーぃゃあいつ、『絵画留学生』に、偽装してたっけ…」
「んで、『商売見本』を、堂々と、持ち込んでくれてたわけだ…★」
 一同、うぎゃあ…! と、怒りに唸った。
「で、これをこう… 水彩画用のスポイトを偽装した注射器に…」
「ちなみに、こっちの油彩や水彩の絵の具も、ソレ系な…★★」
 再び一同から、ひとしきり唸り声があがる。
「こう入れて… 加温。はい溶けた…」
「まんま齧ってもいーらしいぜ… ほぼ死ぬけどw」
 うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!
 …と、また、大騒ぎな反応…

「…どーーーーーっして!
 そんなに死にたいんだ~ッ??
 美麗星人(リスタルラーノ)!?」
「知んねーよ。」
「飽きてんだろ。平和過ぎに」

 長い戦乱と統一への道のりを、過ぎてきたばかりの新興・地球系人たちはぼやく。

 ある、統一前の、一時期の…

 犯罪捜査の面々の、日常である。




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参照⇒リステラス星圏史略 古資料ファイル 7-6-0
『ブラインド・ポイント!』
https://puboo.jp/book/116540/read


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