第4話

文字数 749文字

 葵の話を聞きながら、相変わらずヘタクソな人間関係を築いていること呆れてしまう。もちろん、多少心配もしている。葵のクラスの幸田愛華がどんな人間であるかは、校舎を隔てたクラスにもその噂が届くほどで、高校に入学して間もないのに、いったいどれだけ難のある人間なのだと思ったことがある。自分は関わることがないだろうと思っていたし、葵もタイプが違うから、絶対関わらないだろうと思っていたのに、この有様だ。
 もっと、つるむやつが他にもいるだろうに。と思うけれど、似たり寄ったりなのかもしれない。葵は基本、人を頼らない。こうやって何があったかを話せているぐらいだから、何となくやっていけてはいるのだろう。
 葵は、本当に大事なことに限って口にしない。父親のことも母親のことも。だから、必要なときに、僕はいつも手を差し伸べることが出来ない。このメイクの意味だって、小学生の頃に葵の宝箱の中にある母親との交換日記を読まなければ、分からないままだった。 
 日曜日のこの時間も、こんな格好を求めるみっともない理由も、知っているのは葵だけなのだから、お相子だろうか。
 葵が幸田との関係について言い訳をしている様子にうんざりしながら、野次馬根性で花井の話を切り込む。花井とは中学から塾が同じで、花井の中学の同級生と僕が同じクラスになったこともあって、連絡を取り合う仲だった。どこが花井の琴線に触れたのかは分からないけれど、僕が葵の幼馴染だと知って、葵への思いを打ち明けて相談してきた時には、何かのドッキリなのではないかと疑って、少し険悪なやりとりをしてしまったこともある。今思い出してもちょっと笑える。
 葵は困惑しているようだったけれど、花井のあの頼もしい背中が、何かの盾になってくれればいいのに、なんて、酷いことを考えていた

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