第6話 第4章

文字数 1,305文字

「ちょっと甘く見ていたわ。まさか、あの女、本気で真琴を殺そうと思うとは…」
「それよりサクラ。マミがさっきからハエのようにうろついて邪魔なんだが」
「大丈夫。もうすぐガス欠になる筈。」
「ハハ、流石サクラ。そこまで手を回していたか」

「そんな事より。マミは輪島にちゃんと連絡するかしら」
「ああ。もし警察に通報しなかったら、俺たちがすればいい」
「そうね。それでいいと思う。それでね、真琴なんだけれど。保護した後、手筈通り薬で寝かせて三茶へ?」
「ああ。その方がいいと思う。あの子はとても賢い子だから、俺らの正体をすぐにわかってしまうだろう。それとも、お前はあの子と話したいのか?」
「……」
「俺は、話さない方がいいと思うぞ。今のあの子の状況だと、家出してもおかしくない心境の筈だ。下手したらお前から離れようとしなくなるぞ」
「……わかってる。」

「ほら。城ヶ島が見えてきた。サクラ、マインドコントロール! 切り替えろ」
「わかってる。大丈夫。」
「それでこそサクラだ。」
「じゃあ、手筈通りに? 私が狙撃で」
「ああ、俺が現場近くで突発事象への対応。」
「この季節、海は冷たいよ」
「平気さ。お台場で訓練したじゃないか」

「流石。お台場の訓練が効いたわね」
「っクション。ああ。全く役に立たなかったよ。あんな訓練しなきゃよかった、っクション」
「こっちも上手くいったわ。死ぬほど脅しておいたわ。それより、真琴は……」
「ああ、気を失っている。さ、早く着替えさせて」
「ええ。ああ、すっかり大きくなっちゃって……」

「ん? どうした?」
「やっぱり、あの女殺す。」
「おい! どうしたよ?」
「見て。この傷。背中にも、腕にも…」
「これは…… ひどいな… って、待て! こら、待ってってば!」
「離して! このままじゃ真琴がいつか!」
「見守ろう! 遠くから、近くから、これからも。ずっと!」
「…… 私がいれば… 一緒なら、こんな…」

「ああ。だけど、思い出せサクラ。俺たちはどれだけの犠牲の上で生きてきたかを! あの15歳の時、お前は何をした!」
「……15の時のアレ… 暑い夏… 合宿所のグランド…」
「ああ。渡されたアーミーナイフ一丁。青ざめる兄弟姉妹達、そして俺、お前。」
「隣にいたユリが襲ってきたの。だから咄嗟に首を切り裂いた…」
「一郎と五郎が組み合った。二郎が四郎を刺した後、俺に向かってきた。俺は咄嗟にかわし、四郎の頸にナイフを突き立てた…」
「まるで動けなかったカリンの首をモモが切り裂いた。カッとなった私はモモを後ろから刺し貫いた…」
「一郎を倒した五郎と睨み合いになった。五郎の目は涙で光っていた。俺は軽く頷いた。そして五郎の心臓にナイフを突き立てた…」
「一人残っていたウメがあの場から逃げようとした。私はそれを追って、後ろから首を切り払った…」

「そして。俺たち二人が残った。」
「ええ。そうね。」
「だから。俺たち二人はあいつらの分まで、ちゃんと生きなきゃいけない。」
「わかっている。そうね、だから私たちはこの子たちもちゃんと守っていかなくちゃいけない。」
「その通りだ。さ、俺がこの子を背負う。東京に、帰ろう。」
「お願いするわ。ああ、こんな大きくなって……」
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