第3話 第15章

文字数 883文字

 神奈川県警の協力を得た輪島が城ヶ崎に到着したのは13時27分。マミから通報を受け、一時間半近く経ってしまった。

 島の駐車場には石川不動産名義の黒のメルセデスが駐車してあり、輪島は一秒でも早く石川夫人らを発見せねば大変なことが起こる、と確信し、急いで覆面パトカーを降り、島の周遊道路を駆け出した。
 県警の応援隊員らが輪島を追い、輪島は人気のない島を目を皿の様にして夫人の姿を追った。石川孝の怯えた様子、金沢マミの興奮した言動。間違いなく石川真琴の身の上に危機が迫っている。輪島の足は知らずに全速力となっていた。

 途中、釣竿を背中に女の子を抱えた若い親子連れとすれ違い、
「母親と娘、息子の親子連れを見ませんでしたか?」
 と問うと、
「ああ、この先の見晴らしのいい崖の所にいましたよ」
 と女性が言ったので、輪島は礼も言わずに
「おい、こっちだ!」
 と応援隊を催し駆け出した。

 数分後。
 呆けた様子で相模湾を眺めている母親を発見した。娘が、真琴がいない! しまった、一歩遅かったのか!
「石川、ミカさんですか?」
 輪島が息を切らせながら聞くと、コクリと頷いた。
「娘さんは? 真琴さんはどこです?」
 母親は呆けた顔で、首をふる。
「この下に、海に落ちたんですね?」
 ミカがカクカク首を振る。その首の喉仏のあたりに薄っすらと赤い筋が付いていた。
 県警の応援隊が崖下に降りて行こうとすると、
「でも… 男性に助けられて… もういませんよ。」

 輪島は凍りつく。
 やはり女は真琴を海に突き落とした。そして誰かが真琴を救いあげた?
「それは本当ですか? 誰が助けたんですか?」
 ミカは首を振りながら、
「知りません。でも服を脱いだ男の人が、海から真琴を、救い出して、それで女の人が、ここに来て、連れて行くから、って言って」
 脱衣した男? 女? どうやら母親は混乱しているようだ。話が意味不明である。やはり真琴は突き落とされそのまま…
「取り敢えず署まで来てください。おい、やはりこの辺を一斉捜査。船も出してもらえ」

 3時間後。三浦岬署で事情聴取していた輪島の元に、真琴が自宅に戻った、と連絡が入った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み