第1話 第8章

文字数 891文字

「これじゃ、まるで戦争じゃないか…」
「本栖湖の生活所に立て篭もり、か…」
「そこで独立宣言、即座にソ連と友好条約締結って…」
「同時に、日本各地で無差別テロ…」
「こんな非現実的なこと、絶対に不可能だ!」
「いや、教祖様のご指示だぞ、不可能なんてあり得ない!」
「全日本人を、いや自由主義社会を全て敵に回すんだぞ」
「そんなことは構わない。ソ連、東欧、中国が続いてくれるよ」

 一週間後。反対派の幹部が降格、左遷される。猛反対するものには監視が付き、警察に情報を流そうとしたある大幹部が即座に滅殺された。
 反対派の多くは影を潜めたが、表向きは賛成だが内心は反対する者が数人、政府への情報提供を行うようになるー

 政府は集められたそれらの情報に愕然とする。
 総理周辺及び警察大幹部による秘密裡の会議が立ち上がり、更なる詳しい情報の収集に尽力し始めた。
 やがて恐るべき教団の計画が浮上し、会議に防衛庁長官も加えられた。

 会議は徹底的に情報管制が敷かれ、マスコミに上がることは全くなかった。公安警察を中心に全国の教団員の割り出しが為されると同時に、陸上自衛隊の演習が急遽御殿場演習場で企画された。
 警察庁はアメリカC I Aに協力を仰ぎ、教団とソ連の連絡系統の破壊を依頼した。
 こうした政府の動きは教団には全く伝わらず、未だ教団内では反対派の燻出しに翻弄されていた。

 そして、7月の半ば、
「教祖から指示だ。来月の8日に、決行だ!」
 教団本部は静まり返った。
「なんでも8が四つ並ぶ、革命に相応しい日だとのことだ」
 1988年8月8日。運命の日はこうして決められた。

 この情報は即座に政府に届いた。
「実際、何をやらかすんだ、アイツらは?」
「それが、そこまでの情報は入ってこないのです」
「どういうことだ?」
「何処で何をするかは各大幹部次第だそうで、我々の犬(スパイ)は知りようがないそうです」
「おい、電電公社… N T Tの担当者を呼び出せ。奴らの通話記録を提出させるんだ」
「それと盗聴できないか聞いてもらおう」
「時間がないんだ! 早くしろっ」
 政府の焦りも虚しく、教団の作戦内容は殆ど知ることが出来なかった…
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