第1話 第13章

文字数 504文字

 そんな二人の預かり知らぬところで、丹沢山系で身元不明の遺体が登山者により発見された。衣服も残留品もなく、また歯が全てなくなっていることから、神奈川県警は殺人事件と断定し捜査を開始した。

 この時期、日本各地で『ふじ真理教団』関係者と思われる遺体が多数上がっていることから、捜査本部がその線を辿ってみると見事に当たった。

「輪島さん、輪島さん! 大当たりです!」

 神奈川県警捜査一課の捜査員、輪島剛志が眠たそうな顔を上げた。

「おお、やっぱりそうか。で? ガイシャの身元割れたか?」
「ハイっ 鈴木仁、ニンベンに漢数字の二、38歳、ふじ真理教団東京支部の幹部です。死因は喉元を鋭利な刃物で一掻き、だそうです。」
「ふーん。いつ頃?」
「死後、三週間から四週間だそうです、あの事件の頃と一致しますよね」
「ああ、あん時の… じゃあ、ホシは教団関係者ってことだな」
「恐らく。今、鈴木の当日の行動記録を探してます」
「警視庁、か。素直に渡してくれるかね?」
「まあ、しつこく食い下がってみせますよ。それにしても輪島さん、よく教団の線に辿り着きましたねえ、流石です、尊敬しますっ」

 輪島は若い捜査官の肩をポンポンと叩き、便所へ行った。
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