第7話
文字数 4,403文字
ヨウコが中を覗くようなポーズをとろうとして、顔を出す寸前で止まった。突然部屋の中からピアノの奏でる音楽が聞こえてきた。その音色はほどよく反響していて耳に届いてきたた。ピアノも部屋の作りもけっこう良いもので作られているのが分かる。
魔笛の旋律が継続して奏でられる中、レイカはあまりの驚きに目を見開いて息を止めた。ヨウコは表情を変えずにじっとレイカの顔を見ながらしばらく様子を中を伺っている。
そして魔笛を歌う声は再びサビに至り、ファスセットがはじまった。
そこは幅10メートル奥行きはその倍の20メートル以上ありそうな、広い空間だった。全体的に白を基調とした空間で、安楽椅子に腰掛ける白髪白ひげを蓄えた老人が杖を持ち、入り口から覗くヨウコとレイカの方を見つめていて、その後ろにはピアノを引く少女とその伴奏に合わせて歌う少女がいる。他にも西洋風の立派な調度品が壁沿いに並べられていてどれも白で統一されていた。椅子に座る老人から少し離れた場所に、材質は分からないけど白色の立派なテーブルと椅子が据えおかれていた。そして部屋の奥には更に奥へ続く同じようなアーチ型の出入口が開いていた。
老人は黒い上下のスーツを着こなしたきちんとした身なりで、右手に白い杖を持っていた。ピアノを演奏する女性その横で魔笛を歌う女性二人も、それぞれ青と赤の上等なロングドレスを着ていて立派な身なりをしている。その顔をよく見ればヨウコとレイカと歳の変わらないうら若い人間に見える。
ちょうどその時、魔笛の演奏が終わった。そして赤と青のドレス姿の少女二人は静かに、老人の顔を伺うように見ている。
すると喉の奥から短い濁った唸り声を発して老人は大げさな拍手をした。
そう言いながら老人は足を組んで不敵に笑った。
するとそこに新たな一人の少女がメイド服の姿で、お茶を載せたトレイを手に持って奥の方から現れた。
そしてテーブルの横に着いた少女は一礼してから、載せていたティーカップをヨウコとレイカの前に一つづつ置くと、ポットに入れたお茶を注ぎはじめた。