第1話
文字数 3,862文字
そのとき僕は武蔵野郊外の路上で日課のコースをパトロールしていた。そのすぐ横を乱暴な運転のクルマが通過して行った。その風圧をもろに受けた僕は不覚にもビビってしまったのだった。
意図せず尻尾が天を向きながら一瞬固まっていたらしい。一歩間違えたらお陀仏だったと思いながら、改めてその暴走を目で追って消え行く姿を睨みつけていると、道路を挟んで反対側の歩道を歩く制服を着た少女二人組がおしゃべりいている姿に気づいた。あの色と柄はたしか雛城高校の生徒で、村山台駅へ向かって下校中なのだろう。
彼女たちは、しばらくそのまま道なりに歩いて行くと、道路沿いにある喫茶店に入っていった。
僕はゆっくりと油断なく後をついて行って、喫茶店の前てま立ち止まって、背なかをくーっとひと伸びしてから店内を見上げてみると、あの少女らはガラス越しのテープルに着いて外の方を向きながら、おしゃべりの続きを始めた。
目の前の四ツ辻をこのままを直進すると駅入り口。右手に曲がって少し歩いた右手に、噂の廃墟のビルディングがあるはずだ。