第13話
文字数 1,809文字
「ちょっといいかな」
「ああ、入れよ」
かしこまった調子で言うロンに普段とは違う雰囲気を感じて部屋に通した。
「今日はあの、あり、ありがとう。ちゃんと言ってなかったなと思って」
ちひろはベッドに座ったままロンを見て少し微笑んだ。それを見て俺は、今日一日中沈んだ顔をしていたちひろが元気になれればと、ロンが来てくれたことに感謝した。
「あとそれと、お詫びって意味じゃないんだけど……」
ロン特有のたどたどしい言い方で、
「実は明日行く魔窟には魔石があるらしいって情報を教えに来たんだ」
魔石!?
「ま、魔石って…… 何でそんなことを……」
「実はあの三人の女の子の一人が、父親と魔窟の発見者の人が知り合いで、そんな話をしているのを聞いたんだって」
「それは確かなのか?」
「うん、その子もその発見者の人を知ってるみたいだったんだけど、すごい好奇心旺盛な人らしくて、洞窟の奥の方まで入っていったらしいんだよ。そこですごく高いところに見たことも無い光を放っている石があったんだって」
たしかに魔石は光を放ち、普通の宝石とは明らかに違うと本に書いてあったな。
「かなり高い所にあって魔物もうろうろしてたから、そこまで行くのは流石に断念したみたいだけど」
マジか。諦めかけてたから、これが本当なら相当うれしいぞ。
「この話はもちろんクラエスたちも知ってるし、他の人には誰も言っていないところを見ると、明日は絶対魔石を取りに行こうとすると思うんだよ」
そうか、あいつらも。あいつらなら調査の命令を無視して取りに行ってもおかしくないな。
「ロン、ありがとうな。ちひろもずっとヘコんでたから。それに魔石の話もありがたい」
ロンはあんまり出てると怪しまれるからと言って部屋に戻っていった。
そうか。魔石か。でも俺たちも調査はしないといけないしどうしようかな。
翌朝、姉ちゃんに魔石の話をしてみた。
「マクロイドさんには言っておいた方がいいかな?」
「……言わない方がいいかもね。隊全体で魔石探索ってなるとあんたが手に入れられる可能性は一気に減るわよ」
「多分クラエスたちも隊には言わないと思うんだよ。だから純粋にやつらとの競争になりそうだな」
第一兵団である以上、知ってしまえば報告せざるを得ないだろうということで、オリガさんにも何も伝えないことにした。
俺たちが仕度を整えロビーに行くとすでに第一兵団の面々が集まってざわついていた。
「おはよう、ちひろちゃん。水や食料も持った?」
「おはよう、オリガさん。大丈夫、ばっちりです」
「おはよう、クロード。これは君が持ってたほうがいいかな」
そう言ってオリガさんに報告用紙を渡された。
「そこに調査結果を書いていくんだよ。洞窟マップや資源の種類と量、魔物がいればそれについても」
「もしもどんどん進めるようなら進んで行ってもかまわないですか?」
「そこら辺のことは副隊長からの指示があると思うけど、多分遊撃隊はマリーにある程度任せるとは思うよ」
よし、どうやらそこそこの自由度はありそうだ。
五分ほど経って、管理人室から副隊長が現れた。
「みんな静かにしろ。これから我々は町の西門から出て魔窟の調査に向かう。当然だが、現時点ではどのような規模でどのような形をした洞窟なのかもわからない。一応、あらかじめ隊をいくつかの調査部隊に分けてはあるが、現地に到着してから再編することもある。その場合は速やかに再編し、自分の部隊を確認するように」
みんなに部隊編成が書かれた用紙が配られる。
「遊撃隊はマリーを部隊長にして三人での調査としてあるが、うちから一人か二人付けよか?」
「いや、このままでいいよ。そのほうが動きやすいから」
姉ちゃんが答えると副隊長は無言で了解した。
「では、これから第一兵団及び特別遊撃隊は先発隊として魔窟の調査へ向かう。道中にも魔物と遭遇する可能性があるので十分注意するように。それでは出発!」
俺たちは隊列を作って町を行進し、西門から出ていく。いつもたくさんの人が集まっている目抜き通りも、少数とは言え兵が行進する光景はやはり珍しいのだろう皆、動きを止めてこちらを見ている。
注目を浴びてその真ん中を歩くというのもなかなか悪くない。
さて、いよいよ魔窟だ。
「ああ、入れよ」
かしこまった調子で言うロンに普段とは違う雰囲気を感じて部屋に通した。
「今日はあの、あり、ありがとう。ちゃんと言ってなかったなと思って」
ちひろはベッドに座ったままロンを見て少し微笑んだ。それを見て俺は、今日一日中沈んだ顔をしていたちひろが元気になれればと、ロンが来てくれたことに感謝した。
「あとそれと、お詫びって意味じゃないんだけど……」
ロン特有のたどたどしい言い方で、
「実は明日行く魔窟には魔石があるらしいって情報を教えに来たんだ」
魔石!?
「ま、魔石って…… 何でそんなことを……」
「実はあの三人の女の子の一人が、父親と魔窟の発見者の人が知り合いで、そんな話をしているのを聞いたんだって」
「それは確かなのか?」
「うん、その子もその発見者の人を知ってるみたいだったんだけど、すごい好奇心旺盛な人らしくて、洞窟の奥の方まで入っていったらしいんだよ。そこですごく高いところに見たことも無い光を放っている石があったんだって」
たしかに魔石は光を放ち、普通の宝石とは明らかに違うと本に書いてあったな。
「かなり高い所にあって魔物もうろうろしてたから、そこまで行くのは流石に断念したみたいだけど」
マジか。諦めかけてたから、これが本当なら相当うれしいぞ。
「この話はもちろんクラエスたちも知ってるし、他の人には誰も言っていないところを見ると、明日は絶対魔石を取りに行こうとすると思うんだよ」
そうか、あいつらも。あいつらなら調査の命令を無視して取りに行ってもおかしくないな。
「ロン、ありがとうな。ちひろもずっとヘコんでたから。それに魔石の話もありがたい」
ロンはあんまり出てると怪しまれるからと言って部屋に戻っていった。
そうか。魔石か。でも俺たちも調査はしないといけないしどうしようかな。
翌朝、姉ちゃんに魔石の話をしてみた。
「マクロイドさんには言っておいた方がいいかな?」
「……言わない方がいいかもね。隊全体で魔石探索ってなるとあんたが手に入れられる可能性は一気に減るわよ」
「多分クラエスたちも隊には言わないと思うんだよ。だから純粋にやつらとの競争になりそうだな」
第一兵団である以上、知ってしまえば報告せざるを得ないだろうということで、オリガさんにも何も伝えないことにした。
俺たちが仕度を整えロビーに行くとすでに第一兵団の面々が集まってざわついていた。
「おはよう、ちひろちゃん。水や食料も持った?」
「おはよう、オリガさん。大丈夫、ばっちりです」
「おはよう、クロード。これは君が持ってたほうがいいかな」
そう言ってオリガさんに報告用紙を渡された。
「そこに調査結果を書いていくんだよ。洞窟マップや資源の種類と量、魔物がいればそれについても」
「もしもどんどん進めるようなら進んで行ってもかまわないですか?」
「そこら辺のことは副隊長からの指示があると思うけど、多分遊撃隊はマリーにある程度任せるとは思うよ」
よし、どうやらそこそこの自由度はありそうだ。
五分ほど経って、管理人室から副隊長が現れた。
「みんな静かにしろ。これから我々は町の西門から出て魔窟の調査に向かう。当然だが、現時点ではどのような規模でどのような形をした洞窟なのかもわからない。一応、あらかじめ隊をいくつかの調査部隊に分けてはあるが、現地に到着してから再編することもある。その場合は速やかに再編し、自分の部隊を確認するように」
みんなに部隊編成が書かれた用紙が配られる。
「遊撃隊はマリーを部隊長にして三人での調査としてあるが、うちから一人か二人付けよか?」
「いや、このままでいいよ。そのほうが動きやすいから」
姉ちゃんが答えると副隊長は無言で了解した。
「では、これから第一兵団及び特別遊撃隊は先発隊として魔窟の調査へ向かう。道中にも魔物と遭遇する可能性があるので十分注意するように。それでは出発!」
俺たちは隊列を作って町を行進し、西門から出ていく。いつもたくさんの人が集まっている目抜き通りも、少数とは言え兵が行進する光景はやはり珍しいのだろう皆、動きを止めてこちらを見ている。
注目を浴びてその真ん中を歩くというのもなかなか悪くない。
さて、いよいよ魔窟だ。