第18話
文字数 1,833文字
「よし、もう少しだ」
「でもよークラエス、魔石取って戻ったとして隊になんて言おう」
「そんなのどうとでもなる。別に殺されるってわけでもないだろ」
「殺されはしないだろうけど、多分死ぬほど怒られるぜ」
「その前にどうせマリ姉とクロードにやられるよ」
「なんだとこのクソチビ」
と言ってクラエスがダルコに担がれたちひろに手を伸ばすと、ちひろがその手に噛みついた。
「痛ってええぇえ! なんだこのクソガキ!」
クラエスがちひろの腹を殴るとまたちひろはぐったりした。
「クラエス大丈夫か?」
「ああ、とにかく今は魔石だ」
クラエスたちが入っていった横穴から俺たちも奴らを追う。
「向こうもちひろを担ぎながらこの上り坂はキツいはずだ」
「そうね、途中でちーちゃん降ろしておいてくれないかなぁ」
横穴を抜けるとまた壁に沿ってなんとか人が通れるくらいの幅の道がある。俺はこれを見て背筋が凍った。
あいつらまさか……
いや、さすがにあいつらでもそこまで酷いことはしないだろうと、何も根拠の無い望みに今は縋るしかなかった。
「はぁ、はぁ、おい、クラエス、このチビ担ぐの、代わってくれよ」
「チッ、じゃあお前たいまつ持って先に行けよ」
「なんでそのチビを連れていくんだよ」
「こいつ人質にしてりゃあ、あいつらが俺たちに手が出せねえだろ。あいつら、特にマリーは絶対にやってやる」
「見て、あそこにたいまつが」
姉ちゃんが指差す斜め上方向には岩と土で出来た天然の橋のようなものがあり、そこをたいまつの灯りが奥へと移動するのが見えた。そしてその先にはあの時に見た魔石が変わらず光輝いている。
くそ、ちひろ、無事でいてくれ。俺はただひたすら祈り続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ、よし、これが魔石か」
「岩に張り付いてるぜ。取れるのか?」
「周りの岩を少しずつ崩していけば…… よし何とか取れそうな感じだぞ」
クラエスはナイフで岩を削っていく。
「ダルコ、お前はあいつらが来ないか見張ってろ」
前方のはるか先にクラエスたちが見えた。ここまでの疲れも忘れて一気に近づく。
「おい、クラエス! あいつらが来たぞ」
「慌てるな。もうちょっとだ。…… よし、取れたぞ」
「それで、どうすんだよ」
「くっそ! わかんねえ。どうすりゃ魔法を解放できるんだよ、これ」
「おい、もう来てるぞ!」
「とりあえず、お前はそのチビを抱えろ」
「よし、そこまでよ。ちーちゃんを解放しなさい」
「はぁ? お前状況わかってんのかよ。チビもこっちにいて魔石も俺たちが手に入れた。お前たちは負けたんだよ」
「でも、魔石の使い方はわからない。そうだろ?」
俺は鎌をかけてみた。いや、ほぼ間違いなくそれを知らないはずだ。
「お前は知ってるのかよ」
「これでも一応、魔法学者目指してるんでね」
「よし、じゃあそれを教えろ。そしたらチビを解放してやる」
「ちひろの解放が先だ」
「お前が条件出せる立場だと思ってんのかよ」
教えたところでこいつらがちひろを解放するとは思えない。今の俺たちにとってはこの情報が唯一の交渉材料だ。なんとかしないと。
「早く言えよ! おい、ダルコ」
ダルコは抱えたちひろの腕を捻りあげた。
「ああぁああぁぁ」
ちひろの顔が苦痛にゆがみ、苦悶の叫び声を上げる。
「クロード、言っちゃダメ! マリ姉! こいつらやっつけて!」
「うるせえ! このクソチビ! いい加減にしろよこいつ!」
クラエスは憤怒の激情に駆られ、ちひろを何度も殴り始めた。
「おい! 待てやめろ!」
俺が叫ぶとクラエスはするどい目をこちらに向けて
「お前がさっさとしゃべらねえからこうなるんだよ」
「わかった。言うからもうちひろに手を出すな」
「始めっから素直にそう言やいいんだよ。早く言え」
「目を瞑って左手で魔石を頭上に掲げて、右手でマイヤ教の紋を切れ。そうすると魔石は光を強くするから、その時にもう一度紋を切れば魔法が解放される」
「それだけか?」
「ああ、それだけだ。ただし、何が身に付くかはわからんからな」
俺がそう言うとクラエスは込み上げてくる気持ちを押さえられずに高笑いを始めた。
「さあ、ちーちゃんを返しなさい」
「バーカ、返すわけねえだろ。ここからがほんとのお楽しみなんだからよ」
やっぱりか……
「でもよークラエス、魔石取って戻ったとして隊になんて言おう」
「そんなのどうとでもなる。別に殺されるってわけでもないだろ」
「殺されはしないだろうけど、多分死ぬほど怒られるぜ」
「その前にどうせマリ姉とクロードにやられるよ」
「なんだとこのクソチビ」
と言ってクラエスがダルコに担がれたちひろに手を伸ばすと、ちひろがその手に噛みついた。
「痛ってええぇえ! なんだこのクソガキ!」
クラエスがちひろの腹を殴るとまたちひろはぐったりした。
「クラエス大丈夫か?」
「ああ、とにかく今は魔石だ」
クラエスたちが入っていった横穴から俺たちも奴らを追う。
「向こうもちひろを担ぎながらこの上り坂はキツいはずだ」
「そうね、途中でちーちゃん降ろしておいてくれないかなぁ」
横穴を抜けるとまた壁に沿ってなんとか人が通れるくらいの幅の道がある。俺はこれを見て背筋が凍った。
あいつらまさか……
いや、さすがにあいつらでもそこまで酷いことはしないだろうと、何も根拠の無い望みに今は縋るしかなかった。
「はぁ、はぁ、おい、クラエス、このチビ担ぐの、代わってくれよ」
「チッ、じゃあお前たいまつ持って先に行けよ」
「なんでそのチビを連れていくんだよ」
「こいつ人質にしてりゃあ、あいつらが俺たちに手が出せねえだろ。あいつら、特にマリーは絶対にやってやる」
「見て、あそこにたいまつが」
姉ちゃんが指差す斜め上方向には岩と土で出来た天然の橋のようなものがあり、そこをたいまつの灯りが奥へと移動するのが見えた。そしてその先にはあの時に見た魔石が変わらず光輝いている。
くそ、ちひろ、無事でいてくれ。俺はただひたすら祈り続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ、よし、これが魔石か」
「岩に張り付いてるぜ。取れるのか?」
「周りの岩を少しずつ崩していけば…… よし何とか取れそうな感じだぞ」
クラエスはナイフで岩を削っていく。
「ダルコ、お前はあいつらが来ないか見張ってろ」
前方のはるか先にクラエスたちが見えた。ここまでの疲れも忘れて一気に近づく。
「おい、クラエス! あいつらが来たぞ」
「慌てるな。もうちょっとだ。…… よし、取れたぞ」
「それで、どうすんだよ」
「くっそ! わかんねえ。どうすりゃ魔法を解放できるんだよ、これ」
「おい、もう来てるぞ!」
「とりあえず、お前はそのチビを抱えろ」
「よし、そこまでよ。ちーちゃんを解放しなさい」
「はぁ? お前状況わかってんのかよ。チビもこっちにいて魔石も俺たちが手に入れた。お前たちは負けたんだよ」
「でも、魔石の使い方はわからない。そうだろ?」
俺は鎌をかけてみた。いや、ほぼ間違いなくそれを知らないはずだ。
「お前は知ってるのかよ」
「これでも一応、魔法学者目指してるんでね」
「よし、じゃあそれを教えろ。そしたらチビを解放してやる」
「ちひろの解放が先だ」
「お前が条件出せる立場だと思ってんのかよ」
教えたところでこいつらがちひろを解放するとは思えない。今の俺たちにとってはこの情報が唯一の交渉材料だ。なんとかしないと。
「早く言えよ! おい、ダルコ」
ダルコは抱えたちひろの腕を捻りあげた。
「ああぁああぁぁ」
ちひろの顔が苦痛にゆがみ、苦悶の叫び声を上げる。
「クロード、言っちゃダメ! マリ姉! こいつらやっつけて!」
「うるせえ! このクソチビ! いい加減にしろよこいつ!」
クラエスは憤怒の激情に駆られ、ちひろを何度も殴り始めた。
「おい! 待てやめろ!」
俺が叫ぶとクラエスはするどい目をこちらに向けて
「お前がさっさとしゃべらねえからこうなるんだよ」
「わかった。言うからもうちひろに手を出すな」
「始めっから素直にそう言やいいんだよ。早く言え」
「目を瞑って左手で魔石を頭上に掲げて、右手でマイヤ教の紋を切れ。そうすると魔石は光を強くするから、その時にもう一度紋を切れば魔法が解放される」
「それだけか?」
「ああ、それだけだ。ただし、何が身に付くかはわからんからな」
俺がそう言うとクラエスは込み上げてくる気持ちを押さえられずに高笑いを始めた。
「さあ、ちーちゃんを返しなさい」
「バーカ、返すわけねえだろ。ここからがほんとのお楽しみなんだからよ」
やっぱりか……