第7話
文字数 1,587文字
町の北門から出ると、馬や荷馬車を通すために切り開かれた街道が前方へと続いている。ヴィルジラとは食料やアイテム、原材料などの流通も盛んなため道中ではたびたび行商の一団とすれ違う。
一見するとのどかな光景だが、両脇に広がる深い森には危険な動物や魔物が潜んでいて、油断していると大怪我では済まないことになる。
「まあでも昼間はたいしたことないけどね」
そう言う姉ちゃんにとっては夜の魔物も別にたいしたことはないらしいが、初の実戦である俺とちひろはいつ飛び出てくるかわからない相手に気を張り過ぎて、体のあちこちの筋が痛くなってきていた。
しばらく歩いているとまた行商の一行が前からやってきて、護衛の兵が声をかけてきた。
「おはようございます、マクロイド副隊長。ヴィルジラですか?」
「ああ、おはよう。この前見つかった魔窟の調査でね。先発隊だよ」
「それはご苦労様です。今回の洞窟はわりと浅いんじゃないかって噂でしたよ」
「そっかー浅いのかー。調査隊としては楽でいいけど、資源量はあんまり期待できそうにないね」
それに魔石のほうも期待できそうにない。ちょっとがっかりだ。
「ああそれと、この先十五分くらい歩いた所で左手に魔物の気配がありました。おそらくゴブリン程度のものだとは思いますが、気を付けてください。一応その手前に積荷のトマトを一つ、目印のために潰して置いておきました」
護衛の兵はそう言うとローマイヤに向かって歩いていった。こちらも礼を言って分かれる。
そのまま街道に沿って歩いていくと、先ほどの兵が言っていたトマトが、道の左端で潰れていた。そこで副隊長は隊を停止させる。
静かに様子を窺っていると鳥の鳴き声に混ざって、微かに動物の呼吸のような音が聞こえる。
「どうやらいるようだな。左に五匹か六匹ってとこだ」
副隊長が敵の値踏みをした後、兵に指示を出す。
「オリガとトルドンは遊撃隊の二人と一緒に南から森に侵入しろ。エヴィッチとナタリアはうちの新入り三人を連れて北側から侵入。他は街道に出てきた魔物を殲滅。以上だ。始めろ!」
「二人とも行くよ」
オリガさんに促され、俺とちひろはトルドンさんと共に森に入っていく。
「さらに二チームに分れよう」
トルドンさんが提案する。
「そうね。男性同士、女性同士でいいかな?」
オリガさんの返答にトルドンさんは頷くと俺に付いてくるよう合図をした。
「いいかい。今、ゴブリンたちは警戒して固まっているが、こちらが動きを見せるとやつらは単純に付いてくるんだ。オリガたちが西側へ移動したらゴブリンがそちらに付いて行くから、君はそれを背後から急襲するんだ」
「わかりました」
「他のゴブリンどもは僕が警戒しておくから、君は目の前のターゲットに集中して倒せばいい」
「はい」
北側のほうからゴブリンの叫び声が聞こえる。あちらではすでに一匹倒したようだ。
こちらも女性チームが動き出した。それと共に別の気配も動き始める。おそらくゴブリンだろう。少し間をおいてから、俺はトルドンさんと一緒にそれを追いかける。
動きが止まったのに合わせてこちらも動きを止める。慎重に様子を窺うと、木々の隙間にゴブリンの背中が見える。人間よりも小さな体だけど手だけが不自然に長い。指先に鋭い爪があるが武器や道具の類いは持っていないようだ。
トルドンさんは俺に無言で指示を出す。俺は音が出ないように深呼吸を一つして体の力を抜く。そしてゆっくりとゴブリンに近づき剣を振り下ろそうとした瞬間、ゴブリンに気付かれた。まずい!
そのまま振り下ろした剣をゴブリンは思わず手で受け止めてようとしてしまい、切られた腕が宙を舞う。
くそ、もう一回と思いながら振り返り剣を構えた時にドスッと鈍い音がした。
一見するとのどかな光景だが、両脇に広がる深い森には危険な動物や魔物が潜んでいて、油断していると大怪我では済まないことになる。
「まあでも昼間はたいしたことないけどね」
そう言う姉ちゃんにとっては夜の魔物も別にたいしたことはないらしいが、初の実戦である俺とちひろはいつ飛び出てくるかわからない相手に気を張り過ぎて、体のあちこちの筋が痛くなってきていた。
しばらく歩いているとまた行商の一行が前からやってきて、護衛の兵が声をかけてきた。
「おはようございます、マクロイド副隊長。ヴィルジラですか?」
「ああ、おはよう。この前見つかった魔窟の調査でね。先発隊だよ」
「それはご苦労様です。今回の洞窟はわりと浅いんじゃないかって噂でしたよ」
「そっかー浅いのかー。調査隊としては楽でいいけど、資源量はあんまり期待できそうにないね」
それに魔石のほうも期待できそうにない。ちょっとがっかりだ。
「ああそれと、この先十五分くらい歩いた所で左手に魔物の気配がありました。おそらくゴブリン程度のものだとは思いますが、気を付けてください。一応その手前に積荷のトマトを一つ、目印のために潰して置いておきました」
護衛の兵はそう言うとローマイヤに向かって歩いていった。こちらも礼を言って分かれる。
そのまま街道に沿って歩いていくと、先ほどの兵が言っていたトマトが、道の左端で潰れていた。そこで副隊長は隊を停止させる。
静かに様子を窺っていると鳥の鳴き声に混ざって、微かに動物の呼吸のような音が聞こえる。
「どうやらいるようだな。左に五匹か六匹ってとこだ」
副隊長が敵の値踏みをした後、兵に指示を出す。
「オリガとトルドンは遊撃隊の二人と一緒に南から森に侵入しろ。エヴィッチとナタリアはうちの新入り三人を連れて北側から侵入。他は街道に出てきた魔物を殲滅。以上だ。始めろ!」
「二人とも行くよ」
オリガさんに促され、俺とちひろはトルドンさんと共に森に入っていく。
「さらに二チームに分れよう」
トルドンさんが提案する。
「そうね。男性同士、女性同士でいいかな?」
オリガさんの返答にトルドンさんは頷くと俺に付いてくるよう合図をした。
「いいかい。今、ゴブリンたちは警戒して固まっているが、こちらが動きを見せるとやつらは単純に付いてくるんだ。オリガたちが西側へ移動したらゴブリンがそちらに付いて行くから、君はそれを背後から急襲するんだ」
「わかりました」
「他のゴブリンどもは僕が警戒しておくから、君は目の前のターゲットに集中して倒せばいい」
「はい」
北側のほうからゴブリンの叫び声が聞こえる。あちらではすでに一匹倒したようだ。
こちらも女性チームが動き出した。それと共に別の気配も動き始める。おそらくゴブリンだろう。少し間をおいてから、俺はトルドンさんと一緒にそれを追いかける。
動きが止まったのに合わせてこちらも動きを止める。慎重に様子を窺うと、木々の隙間にゴブリンの背中が見える。人間よりも小さな体だけど手だけが不自然に長い。指先に鋭い爪があるが武器や道具の類いは持っていないようだ。
トルドンさんは俺に無言で指示を出す。俺は音が出ないように深呼吸を一つして体の力を抜く。そしてゆっくりとゴブリンに近づき剣を振り下ろそうとした瞬間、ゴブリンに気付かれた。まずい!
そのまま振り下ろした剣をゴブリンは思わず手で受け止めてようとしてしまい、切られた腕が宙を舞う。
くそ、もう一回と思いながら振り返り剣を構えた時にドスッと鈍い音がした。