第46話 「竹蔵 対 梶ノ葉」
文字数 2,623文字
ガキィン! ガキィン! ガキィィン!! 八百八狸 軍の幹部で竹伐 り兄弟の竹蔵 と、千尾狐 軍幹部の梶ノ葉 が、幾度 も激しくぶつかり合っている。
「ハァハァ・・・」
「ハァハァ・・・」
激しい攻防を繰り広げた両者が、肩で息をしている。
「どうしたぁ? へろへろじゃねぇか」
梶ノ葉が舌をだらりと出して、ニヤリと笑う。
「へっ。どの口が言ってんだよ。お前こそ、今にも倒れそうだぜ?」
竹蔵も舌をだらりと出して笑う。
「・・・一つ聞いてもいいか? 何で今更、俺達を嗾 けてきやがったんだ?」
竹蔵が尋 ねる。すると梶ノ葉がニヤリと笑う。
「俺達はお前らと違い、人間共と馴 れ合って来なかった。そんなお前らを見て反吐 が出る程だった。・・・だが、俺達も人間共と手を組む事にしたんだ。奴等 は貧弱だが、武力は役に立つからな」
梶ノ葉が、竹蔵の周囲を歩きながら淡々と話し出す。竹蔵は、梶ノ葉から目を離さずに睨 み続けている。
「・・・それで力を付けたから、俺達を潰そうって腹か」
「いやぁ、お前らは始まりに過ぎねぇ! 俺達千尾狐は人間共の武力を利用し、いずれこの世を支配するのさ! ギャハハ!」
梶ノ葉がゲラゲラと笑う。
「・・・へっ。昨日今日人間と連んだだけで、もう天下だ? わはは! ・・・笑わせんな! てめぇら所詮 、井の中の蛙 だよ! そう簡単に天下獲れりゃあこの世はとっくに、狸囃子 で溢 れてらぁ!」
竹蔵が唾を飛ばす。梶ノ葉が顔を真っ赤にする。
「何だとぉ? 貧乏狸が調子に乗るなよぉ!」
ヒュッ! ガキィィィン!! 梶ノ葉の手甲 を付けた拳と、竹蔵の刀が再びぶつかり合う。
「さっさとてめぇを倒して、貧乏狸共を皆殺しにしてやるぜ! ギャハハ!」
「・・・へへ。貧乏狸ナメんなよ」
一方、八百八狸軍の本陣にて、白目を剥いてのびている数人の千尾狐達の中央に、八百八狸軍の総大将を務める太一郎が、相変わらず穏やかな顔で佇んでいる。
「ほっほっほ。いかんな。歳を取り過ぎたわい」
杖をついてゆっくりと戻って来る太一郎に、先ほどの俊敏さは一切感じられず、どこから見てもただの老狸である。
「・・・た、太一郎・・・様・・・?」
一部始終を見ていたポン太とブンブクが、目をまん丸にし、ポカンと口を開けて唖然 としている。
「どうした? そんなに口を開けて」
太一郎が穏やかな笑顔でニコリと笑う。
「・・・い、いや。・・・太一郎様がこんなに強かったなんて、知らなかったから・・・」
「ほっほっほ。そうか。お前が生まれた頃には、わしは戦線に立っておらんかったからな」
太一郎は、笑いながら椅子に腰を掛ける。
「ただの参謀 じじいでは、総大将の代理など務まらんよ」
太一郎が自分の髭 を触る。ポン太とブンブクは、キラキラとした目で太一郎を見つめる。
「こ、こいつ強ぇぞ!!」
戦場の中、八百八狸達が刀を構えながらも、ずるずると後退りしていく。その視線の先にいるのは、千尾狐軍幹部の八尾 である。見上げるほどの巨漢 で、屈強 な体躯 、そして何より目を引くのが、その巨体を上回る大きさの尻尾である。
「・・・何なんだあの尻尾? デカ過ぎる」
狸達が息を飲む。
「・・・」
一方の八尾は、周囲を囲まれているにも関わらず、狸達を睨むでもなく、中空を見つめ上の空である。
「みんな怯むな!竹次 さんの仇 ぃ!!」
狸達が声を上げ、一斉に突撃する。刹那 、狸達が目を見開く。
ガキン! ガキン! ガキィィン!! 目にも止まらぬ速さで、力強くぶつかり合う竹蔵と梶ノ葉。
「ギャハハ! しぶとい野郎だぜ!」
梶ノ葉が拳を連打する。
「へへ、そっくりそのまま返すぜ木偶 の棒 !」
竹蔵も二対 の刀を振り回す。
「おらぁぁぁ!!」
ガギィィン!!! 両者の強烈な一撃が激突し、両者が吹き飛ぶ。
「・・・くそ!」
竹蔵がよろけながらも立ち上がり、梶ノ葉の方を睨む。
「竹蔵さん!」
すると、一人の狸が竹蔵の元へ駆けて来る。
「離れてろ! まだ終わっちゃいねぇ」
「竹次さんがやられちまったんだよ!」
狸が涙目になっている。竹蔵が目を見開く。
「・・・何!? 誰にやられた!?」
「竹次さんやあんたよりもデカい奴だ!」
「そうかぁ。八尾にやられちまったか」
振り向くと梶ノ葉がニヤニヤと笑っている。
「・・・あのでかぶつか。新入りだよな。見ねぇ顔だ」
竹蔵が梶ノ葉を睨む。
「あぁ。そりゃあ竹次の野郎は気の毒だったな」
「・・・どうゆう意味だ?」
竹蔵が眉を顰 める。梶ノ葉がニヤリと笑う。
「・・・それで、竹次は無事なのか?」
竹蔵が梶ノ葉を睨んだまま狸に尋ねる。
「あ、あぁ! 今手当てしてるところだ!」
「そうか。・・・ちょっと待ってろ。こいつ倒して、すぐ行くからよ」
竹蔵が二対の刀を構える。狸は頷 き、その場を離れる。
「ギャハハ! おいおい、誰を倒すって?」
「おめぇだよ!」
シュッ! 竹蔵が梶ノ葉との距離を一気に縮 める。そして両の刀を振り上げる。
「“竹馬 ”ぁ!!」
ズバァァァ!!! 刀を振り下ろし、二対の斬撃が地を抉 りながら梶ノ葉に向かう。
「 “狐空甲拳 ”!!」
梶ノ葉が素早く両の拳を振るい、斬撃を相殺 する。
「“竹馬群生 ”!!」
すると竹蔵が、連続で何度も刀を振り下ろし、幾つもの斬撃が飛ぶ。
「おらぁぁ!!」
梶ノ葉も拳を連打し、斬撃を捌いていく。刹那、梶ノ葉の傍 で竹蔵が刀を振り上げている。梶ノ葉が目を見開く。
「“竹馬 ”!」
ガギィィン!! 近距離で放たれた斬撃に、梶ノ葉はすかさず腕で防御するが、後方へ吹き飛ぶ。
「ハァハァ・・・くそ!」
梶ノ葉はすぐに立ち上がるが、目の前に竹蔵の姿は無い。気配を感じ上を見ると、竹蔵が両の刀を逆手 に持ち、刃を下に向けて落下して来る。
「“竹串 ”ぃ!!」
ガンッ!!! 竹蔵が梶ノ葉に刃を突き立てる。しかし梶ノ葉も両拳で切 っ先 を迎え撃つ。
「おらぁぁぁ!!!」
「うおぉぉぉ!!!」
両者激しく押し合うが、梶ノ葉の手甲の方にひびが入る。
「何ぃ!?」
バキィィン!! そして梶ノ葉の手甲が砕け散る。驚きながらも竹蔵の方を見上げると、竹蔵は空中で既に両の刀を振りかぶっている。
「・・・ギャハハ! やってみろぉ! お前に俺は倒せねぇ!」
梶ノ葉も裸になった拳を振る。
「“竹狩 ”ぃ!!」
ズバァァァ!!! 着地した竹蔵の後ろで、斬られた梶ノ葉が血を吹いてバタリと倒れる。
完
「ハァハァ・・・」
「ハァハァ・・・」
激しい攻防を繰り広げた両者が、肩で息をしている。
「どうしたぁ? へろへろじゃねぇか」
梶ノ葉が舌をだらりと出して、ニヤリと笑う。
「へっ。どの口が言ってんだよ。お前こそ、今にも倒れそうだぜ?」
竹蔵も舌をだらりと出して笑う。
「・・・一つ聞いてもいいか? 何で今更、俺達を
竹蔵が
「俺達はお前らと違い、人間共と
梶ノ葉が、竹蔵の周囲を歩きながら淡々と話し出す。竹蔵は、梶ノ葉から目を離さずに
「・・・それで力を付けたから、俺達を潰そうって腹か」
「いやぁ、お前らは始まりに過ぎねぇ! 俺達千尾狐は人間共の武力を利用し、いずれこの世を支配するのさ! ギャハハ!」
梶ノ葉がゲラゲラと笑う。
「・・・へっ。昨日今日人間と連んだだけで、もう天下だ? わはは! ・・・笑わせんな! てめぇら
竹蔵が唾を飛ばす。梶ノ葉が顔を真っ赤にする。
「何だとぉ? 貧乏狸が調子に乗るなよぉ!」
ヒュッ! ガキィィィン!! 梶ノ葉の
「さっさとてめぇを倒して、貧乏狸共を皆殺しにしてやるぜ! ギャハハ!」
「・・・へへ。貧乏狸ナメんなよ」
一方、八百八狸軍の本陣にて、白目を剥いてのびている数人の千尾狐達の中央に、八百八狸軍の総大将を務める太一郎が、相変わらず穏やかな顔で佇んでいる。
「ほっほっほ。いかんな。歳を取り過ぎたわい」
杖をついてゆっくりと戻って来る太一郎に、先ほどの俊敏さは一切感じられず、どこから見てもただの老狸である。
「・・・た、太一郎・・・様・・・?」
一部始終を見ていたポン太とブンブクが、目をまん丸にし、ポカンと口を開けて
「どうした? そんなに口を開けて」
太一郎が穏やかな笑顔でニコリと笑う。
「・・・い、いや。・・・太一郎様がこんなに強かったなんて、知らなかったから・・・」
「ほっほっほ。そうか。お前が生まれた頃には、わしは戦線に立っておらんかったからな」
太一郎は、笑いながら椅子に腰を掛ける。
「ただの
太一郎が自分の
「こ、こいつ強ぇぞ!!」
戦場の中、八百八狸達が刀を構えながらも、ずるずると後退りしていく。その視線の先にいるのは、千尾狐軍幹部の
「・・・何なんだあの尻尾? デカ過ぎる」
狸達が息を飲む。
「・・・」
一方の八尾は、周囲を囲まれているにも関わらず、狸達を睨むでもなく、中空を見つめ上の空である。
「みんな怯むな!
狸達が声を上げ、一斉に突撃する。
ガキン! ガキン! ガキィィン!! 目にも止まらぬ速さで、力強くぶつかり合う竹蔵と梶ノ葉。
「ギャハハ! しぶとい野郎だぜ!」
梶ノ葉が拳を連打する。
「へへ、そっくりそのまま返すぜ
竹蔵も
「おらぁぁぁ!!」
ガギィィン!!! 両者の強烈な一撃が激突し、両者が吹き飛ぶ。
「・・・くそ!」
竹蔵がよろけながらも立ち上がり、梶ノ葉の方を睨む。
「竹蔵さん!」
すると、一人の狸が竹蔵の元へ駆けて来る。
「離れてろ! まだ終わっちゃいねぇ」
「竹次さんがやられちまったんだよ!」
狸が涙目になっている。竹蔵が目を見開く。
「・・・何!? 誰にやられた!?」
「竹次さんやあんたよりもデカい奴だ!」
「そうかぁ。八尾にやられちまったか」
振り向くと梶ノ葉がニヤニヤと笑っている。
「・・・あのでかぶつか。新入りだよな。見ねぇ顔だ」
竹蔵が梶ノ葉を睨む。
「あぁ。そりゃあ竹次の野郎は気の毒だったな」
「・・・どうゆう意味だ?」
竹蔵が眉を
「・・・それで、竹次は無事なのか?」
竹蔵が梶ノ葉を睨んだまま狸に尋ねる。
「あ、あぁ! 今手当てしてるところだ!」
「そうか。・・・ちょっと待ってろ。こいつ倒して、すぐ行くからよ」
竹蔵が二対の刀を構える。狸は
「ギャハハ! おいおい、誰を倒すって?」
「おめぇだよ!」
シュッ! 竹蔵が梶ノ葉との距離を一気に
「“
ズバァァァ!!! 刀を振り下ろし、二対の斬撃が地を
「 “
梶ノ葉が素早く両の拳を振るい、斬撃を
「“
すると竹蔵が、連続で何度も刀を振り下ろし、幾つもの斬撃が飛ぶ。
「おらぁぁ!!」
梶ノ葉も拳を連打し、斬撃を捌いていく。刹那、梶ノ葉の
「“
ガギィィン!! 近距離で放たれた斬撃に、梶ノ葉はすかさず腕で防御するが、後方へ吹き飛ぶ。
「ハァハァ・・・くそ!」
梶ノ葉はすぐに立ち上がるが、目の前に竹蔵の姿は無い。気配を感じ上を見ると、竹蔵が両の刀を
「“
ガンッ!!! 竹蔵が梶ノ葉に刃を突き立てる。しかし梶ノ葉も両拳で
「おらぁぁぁ!!!」
「うおぉぉぉ!!!」
両者激しく押し合うが、梶ノ葉の手甲の方にひびが入る。
「何ぃ!?」
バキィィン!! そして梶ノ葉の手甲が砕け散る。驚きながらも竹蔵の方を見上げると、竹蔵は空中で既に両の刀を振りかぶっている。
「・・・ギャハハ! やってみろぉ! お前に俺は倒せねぇ!」
梶ノ葉も裸になった拳を振る。
「“
ズバァァァ!!! 着地した竹蔵の後ろで、斬られた梶ノ葉が血を吹いてバタリと倒れる。
完